回復力が低いからと追放された回復術師、規格外の回復能力を持っていた。

名無し

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第二十二話 本当にサプライズだ

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 マリベルとレビテが【狼の魂】パーティーの入団テストに合格したのもあって、自己紹介が宿舎内で始まった。

「よろしくお願いしますわ、ベホム、ジェシカ、ロラン」

「よろしくです、ベホムさん、ジェシカさん、ロランさん」

「お、おう。よろしく頼むぜ、マリベル、レビテ。あ、ちょっといいか?」

「「はい……?」」

「ピッケルの取り合いをやるのもいいが、こっちの宿舎でやるのは遠慮してくれよ?」

「うむ、よろしくだ。ベホムの言う通り、私たちの宿舎では遠慮してくれ。目に毒なのでな」

「よろしくですぜ……って、ジェシカさんがそれ言いやがりますかね⁉」

「……」

 こんな感じで終始和やかに自己紹介も終わり、早速正式契約を結ぶべく、みんなで冒険者ギルドへと向かうことに。

「「「「「――ザワッ……」」」」」

 すると、何やら様子がおかしい。やたらと僕たちのほうに視線が集まってくるというか。

 僕たち、またなんかやっちゃったかな? 戦々恐々としながら様子を窺うと、どうにもそうじゃないらしい。

 なんと、元所属の【超越者たち】パーティーの悪評が流れていたのだ。とんでもない無知だとか、そこから追放されたピッケルは正しかったとか。よくわからないけど、なんでこんなことに……?

「ピッケル、よくわからねえが、よかったな」

「あ、は、はい」

 リーダーのベホムが僕の肩を叩いた。もしかしたら彼が僕について良い噂を流してくれたっていう可能性もあるね。

「でもよ、連中の無知さのおかげでピッケルが俺たちのパーティーに加わってくれたんだから、むしろ感謝しないとな。がははっ!」

「「「「確かに……」」」」

 ベホムの皮肉が効いた言葉に、ジェシカ、ロラン、マリベル、レビテの四人が同意している。僕は正直ちょっと複雑なところもあったけど悪い気はしなかった。

「「「「「マリベル、レビテ、おめでとう!」」」」」

「ふふっ、皆様、感謝いたしますわ。わたくしの晴れ舞台ですわよ」

「皆さん、本当にありがとうございます。念願の冒険者になれて、とても感慨深いです……」

 特にレビテは感激したみたいで涙ぐんでいた。もし幽霊の状態だったらこのまま成仏しててもおかしくない。

「あの、【狼の魂】パーティーの方々、少々お時間をいただけますでしょうか?」

 マリベル、レビテとともに、正式に契約が済むと、受付嬢から話があると告げられた。一体なんだろう?

「「「「「えぇぇっ……⁉」」」」」

 その内容というのが、僕を含めて誰もが驚愕するものだった。

 この国の王様はダンジョンに興味があり、エドガータワーで戦う有力パーティーの様子も天覧しているわけなんだけど、そこに数あるパーティーの中から僕たち【狼の魂】パーティーが選出されたというものだった。

 僕らは呆然とお互いの顔を見比べるしかなかった。すべてのパーティーの中で、多忙な王様から天覧されるのは一組か二組のみって言われてるのに、こんなことありえるのかって。

【超越者たち】は、現在すべてのパーティーの中で唯一9階まで到達しているから選ばれるのはわかるとして、僕ら【狼の魂】パーティーは、ベホムによれば7階まで攻略したことがあるとはいえ、それはかなり前の話だそうだから。

 8階まで攻略しているパーティーは3組もあるっていうのに。

 これは、裏で何か取引があったと疑われてもしょうがないといえるだろう。

「あ……もしかして君が取り計らってくれたのかな?」

 僕はハッとなってマリベルを見る。彼女は公爵令嬢だからその可能性はあると思ったんだ。

「わ、わたくしは何もしてませんわよ⁉ 大体、ピッケル様を独り占めしたいのですし、迂闊に言い触らしませんわ! それに、ウルスリは古豪のパーティーなのだから王室から招待状が届いてもおかしくありませんことよ」

「でも、古豪とはいえ、俺らはとっくに隆盛を過ぎたパーティーだと思われてたのになあ」

 ベホムが顎に手を置いて訝しむ。

「――ピッケル、久しぶりだな」

「はっ……」

 この声……もしやと思ってその方向を見やると、猫耳がついた白いローブに身を纏った少女がいた。

「か……帰ってきてらしたのですね!」

「ああ、結構前にな」

「ええ? なんで報告してくれなかったんですか?」

「お前を驚かせてやろうと思ったのだ。色々と話は聞いた。【超越者たち】パーティーに追放されたそうだが、わしの教えを守った結果、説明が足りなかったのもあるんだろう。わしのせいで、苦労をかけたな……」

「ちょっと待ってくださいまし。黙って聞いていれば、あなたは一体何者ですの⁉ 知り合いなんでしょうけれど、いきなり現れたかと思えば、ピッケル様をお前呼びだなんて失礼ですわよ!」

 マリベルが怒声を上げながら詰め寄ったので、僕は慌ててその間に割り込んだ。

「マリベル、違うんだ。彼女は僕の師匠だから……」

「ピッケル様の師匠でしたの⁉ そ、それでも、ピッケル様のような神がかった人をお前だなんて……」

「いや、師匠は聖女として、王室に多大な貢献をしてきた人なんだ」

「……せ、聖女ですって⁉」

 聖女という位は、回復術師の中でなれる人は極わずかで王族と変わらぬ身分を持つ。むしろ、その中でも上位のほうかもしれない。なんせ、聖女は国に一人しかいない存在だからね。

「聖女ということは……あ、あなたはあのミシェル・アリスティア様なのですか⁉ し、失礼いたしましたわ!」

 マリベルを筆頭に、ベホムたちが青い顔でひざまずく。

「よいよい。わしはそういうのはどうでもよいと思うタイプだからな」

「だからこそ、フラフラと旅ばっかりなんですよね、師匠?」

「うっ……と、とにかく、だ。王様が天覧されるのだから、この機会にピッケルの力を今こそ見せつけるときだ」

「あ……も、もしかして師匠が僕たちのことを王室に紹介してくれたんですか……?」

「そうだ。ここまで甚大な苦労をしてきた分、大いにはばたくが良い!」

「はい、師匠!」

 すると、ベホムたちからだけじゃなくて周囲からも拍手が。それに乗って色んな声も聞こえてくる。

「お、おい、今の話、聞いたか……⁉」

「聞いた聞いた。回復術師のピッケルって、聖女の弟子だってよ……」

「すげー!」

「そりゃ、王様も贔屓したくなるわな……」

「じゃあ、やっぱり【超越者たち】のほうが無能で、むしろやつらがピッケルに寄生してたのか」

「……」

 意図せずこうなったけど、まあいいや。
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