4 / 91
第4回 曇り時々雨
しおりを挟む味方にスレイヤーが一人でもいるならともかく、一般人が三人だけじゃ厳しいってことで、俺たちはそのあともパーティーメンバーを募ることに。
「はい、そこっ!」
「……自分、ですか……?」
「そうだよ! あんたは見た目が強そうだから!」
女子高生の黒坂優菜が次に選んだのは、体重100キロは優に超えてそうな恰幅のいい男で、顔も眉毛が薄くて強面だった。
そういや、なんか見たことがある人だと思ったら、近所をよく通るトラックの運ちゃんで、このコンビニでも何度か見かけたことがあった。
「自分、別に強くもないし役に立てそうにもないですけど……大丈夫ですか? こう見えて大人しいほうなんで……」
「いいからいいからっ! その強面ならモンスターも恐れるかもしれねーし!」
「は、はあ……」
「よし、決まりっ!」
こうして、トラックの運ちゃん――山室克明――をほぼ強制的に仲間に加えた俺たちは、まだ心許ないってことであと一人だけ指名することに。
「――そこの爺さんっ!」
最後に黒坂が指名したのは、傘を手にした白髪交じりのおじさんだった。そういや、今日は昼から夕方にかけて曇り時々雨の予報だったから持ってきてたんだろうな。結局降らなかったが。
「は、はあぁっ……!? なんでわしが選ばれるのだっ!?」
「だって、あんたの持ってるその傘が武器になりそうだし、元気そうな爺さんだと思って。それだけさっ!」
「まったく。こんな傘で戦えるもんか。こういうときこそ若いモンを選べばいいだけだろうにっ……! というか、わしのことを爺さん呼ばわりしとるがこう見えてもまだ60だぞ!?」
「んなこと言って、あんた自分のことわしなんて言ってるし年寄りの自覚はあんだろ!」
「そ、そんなの、昔から使っとるだけだ、まったくもう、最近の若いモンは……!」
「さっきから若いモンは若いモンはって、やっぱり自覚あんじゃねーか」
「ぐ、ぐぬう……口が減らんな。最近の若いモンは……」
爺さんは顔をしかめつつもこっちに歩み寄ってきたし、仲間として呼ばれたことに対しては満更でもなさそうだった。主に女子高生の黒坂のほうをチラチラと見てたから、元気がいいっていうのはそういう意味も含まれてそうだな。
彼に名前を聞くと、風間昇といって普段は近くの施設で警備員をやっているらしい。今日は非番だからぶらぶらしていたとか。年齢の割りにガタイがいいのはそういうことか。
「よーし、それじゃ、これでメンバー集めは終わりにすっか――」
「――ま、ま、待ってくださいぃ……」
意外なことに、手を挙げながらこっちに近付いてきた人物がいた。
鞄を脇に抱えた、七三分けでスーツ姿のサラリーマン風の男だ。俺たちの仲間になりにきたんだろうか? かなり気弱そうに見えるだけに意外だが……。
「な、なんだよ、一体どうしたんだ、あんた? 怖いならその辺でじっと隠れてろって」
これにはさすがの黒坂も戸惑ってる様子。男は緊張した表情で足を震わせている。
「……そ、その、恐れながら、私はこういう者でしてぇ……」
男が手を震わせつつ名刺を俺たちに手渡してきた。
何々――羽田京志郎、か。怪しげな健康食品のセールスマンをやってるみたいだ。こんな押しの弱そうな人で務まるんだろうか。
「なんだよ、セールスマンか。まさかこんなときに押し売りでもする気か?」
「い、いえっ……」
「じゃあ、ここに何しに来たっていうんだよ、あんた、なんか苛つくやつだなっ!」
「も、申し訳ないですうぅ。わ、わわわ、私もっ、あなっ、あなたたちの仲間に、その、い、入れてもらえないかなって……」
「はあぁ? 仲間になりたいって、あのなあ、あたしらは遊びに行くわけじゃねえんだぞ!?」
「ひぃっ! そ、そう言わずに、どどっ、どうか、お願いしますううぅ……」
「…………」
黒坂に怒鳴られると、羽田という男は涙目で土下座してしまった。こんなに弱気な性格なのにパーティーに入りたいなんて、本当に人は見かけによらないな……。
もしかしたらあれかな、何かを機会に臆病な自分を変えたいっていう、変身願望みたいなものが元々あったのかもしれない。
「ま、別にいいけどよ、足手纏いになりそうならすぐに置いてくから、そのつもりで」
「あ、ありがたいですうぅ……!」
男はネクタイを弄りながら何度も俺たちに頭を下げてきて、周りから失笑が上がるのだった。本当に大丈夫なんだろうか、この人……。
25
あなたにおすすめの小説
シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~
尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。
だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。
全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。
勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。
そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。
エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。
これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。
…その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。
妹とは血の繋がりであろうか?
妹とは魂の繋がりである。
兄とは何か?
妹を護る存在である。
かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!
無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います
長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。
しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。
途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。
しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。
「ミストルティン。アブソープション!」
『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』
「やった! これでまた便利になるな」
これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。
~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~
さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。
全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。
ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。
これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる