ダンジョン菌にまみれた、様々なクエストが提示されるこの現実世界で、【クエスト簡略化】スキルを手にした俺は最強のスレイヤーを目指す

名無し

文字の大きさ
6 / 91

第6回 桁違い

しおりを挟む

「――あ、あれは……」

 俺たちはカモフラージュゼリーを倒してからしばらく進んで、ふと立ち止まった。何かがいるんだ……。ここから遠目に見えるものは、倒れた人間とその傍らでうずくまる小柄な人物だった。

 死んだ親を前にして泣き崩れる子供のようにも見えるが、ここはあくまでもダンジョンだ。モンスターがパンに成りすましていたことから、決めつけるのはよくない。

「「「「「「……」」」」」」

 俺たちは対象に対し、これでもかと慎重な足取りで近付いていく。

 あれが人間かモンスターかどうかは、前回もそうだが相手が実体を見せてこないとわからないようになっているみたいだ。

 いくらダンジョン菌対策でワクチンを打っているとはいえ、何かそういうスキルでもない限り、一般人ではできることが制限されるんだろう。

「――うぅ、うぅ……」

 10メートルほどの距離まで迫ったわけだが、どうやら倒れている女性の腹に顔を埋めて小さな男の子が泣いてるようだった。見た目的にも人型で服を着ていてモンスターには見えないし、やはり親子の客なんだろうか? 倒れている女はピクリとも動かない上、血だまりもできてるからもう死んでるっぽいな……。

「ううぅ……ひひっ!」

「「「「「「っ!?」」」」」」

 男の子が顔を上げたと思ったら、真っ赤な口を吊り上げながらこっちへ猛然と駆け寄ってきた。

 そこでようやくウィンドウが出てきてレベル2のゾンビだと表示される。

 クソッ、ゾンビかよ。つまり食ってただけなんだ。あの女のはらわたを……。

「きしゃああああぁぁっ!」

「み、みんな、横に避けてくれ――ぐっ!?」

 俺は子供のゾンビから体当たりされたわけだが、かなり体格差があるにもかかわらず、大きく後方に弾き飛ばされる格好になった。

 やはりそこはモンスター。圧力が全然違うので俺のほうが子供扱いされてしまう。みんなが後ろに並んでたら巻き添えを食らったはずだから、横に回避してもらって正解だった。

「こいつ!」

 俺は傘を子供ゾンビの頭に向かって全力で振り下ろし、命中したと思ったら半分に折れてしまっていた。な、なんて硬いんだ……。

「う、ううっ……? うじゃああああぁっ!」

「ぐあっ!?」

 俺は子供ゾンビに突き飛ばされ、立ち上がろうとしたときにはもう馬乗りにされてしまっていた。

「こ、こいつっ! 離れろっ! このっ、このっ……!」

 折れた傘を落としてしまったので、俺は仰向けに倒れたまま、ゾンビの顔面をガンガンぶん殴るも、石を殴ってるみたいで俺の拳のほうが痛くなる始末。効いてる様子はないが、それでも抵抗しないと終わってしまう。

「うししっ……うひゃひゃっ!」

「…………」

 こいつ、俺に殴られながらも笑ってて、サーッと血の気が引く思いだった。俺の顔を見て嬉しそうに舌なめずりしてるし、蚊に刺された程度だとでも言いたげだ。

 だめだ、こんなの、力の差がありすぎて勝てっこない。スレイヤーじゃなきゃ倒せないと思えてくる。俺の考えは間違いだったのか、無謀だったのか……。

「み、みんな、今のうちに逃げろ……!」

 俺は力の限り叫んだ。自分が食われている間、仲間には逃げるチャンスはあるはずだからだ。

 もちろん死ぬのは怖いし悔しいが、全員ここでくたばってしまったらそれこそ終わりだから、誰かが仇を取ってくれれば……。

「誰が逃げるかよっ!」

 女子高生の黒坂が駆け寄ってきて、その勢いで子供ゾンビの腹を蹴ったものの、ニタニタと笑われるだけだった。助けに来てくれたことは嬉しいが、まるで効いてない。

「同意だ。工事帽、お前にだけいい格好をさせてたまるかっ!」

 野球帽の藤賀も負けじとバットでゾンビの頭を殴り始める。しかし、このモンスターには依然としてダメージを与えられてない様子。

「若いのっ! 諦めるなっ!」

 今度は爺さんの風間が折れた傘を拾い、その先端でゾンビの背中を突き始めたがまったく刺さってない。警備員だし力はあるはずなのに。このゾンビ、いくらなんでも硬すぎだろう……。

「自分も、加勢します……!」

 トラックの運ちゃん、山室の重い体重を乗せた肘打ちや足踏みによってモンスターの体を微かに揺らすが、それでもダメだ。

「わ、私は勘弁してくださぁぁい……!」

「…………」

 セールスマンの羽田は、震えながらうずくまっていた。何もできないなら逃げてくれればいいんだが、それすらできないのか……。

「……うぅ、うぅ……しょ、しょろしょろ……ぬーみしょ、脳みしょちょうらいっ、パパアアアァッ」

「っ!?」

 子供ゾンビが俺に向かって顔を近付けてきて、糸を引きながら大きく口を開けた。やつは生きたまま脳を食うつもりだ。もう終わりなのか……。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~

尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。 だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。 全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。 勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。 そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。 エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。 これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。 …その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。 妹とは血の繋がりであろうか? 妹とは魂の繋がりである。 兄とは何か? 妹を護る存在である。 かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。 全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。 ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。 これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

処理中です...