ダンジョン菌にまみれた、様々なクエストが提示されるこの現実世界で、【クエスト簡略化】スキルを手にした俺は最強のスレイヤーを目指す

名無し

文字の大きさ
53 / 91

第53回 お守り

しおりを挟む

「佐嶋ぁ、起きろおぉ――」

「――う、うああぁぁっ……!」

 の声がして俺は思わず飛び起きたわけだが、そこは紛れもなく病室で、窓際には可笑しそうに口元を押さえる風間の姿があった。

 どうやら、彼が羽田の真似をしたらしい。おいおい……。

「……はぁぁ、はぁぁっ……か、風間さん……脅かさないでくださいよ……」

 本当に、心臓が今にも口から飛び出そうだ。しかも、両腕がない俺に対してやりすぎだろう……。

「す、すまんの、佐嶋よ。まさか、そんなに効くとは……」

 まったく……って、暗がりを映す窓際に風間は立っているわけだが、定期的にフラッシュがたかれていた。誰かに外から写真を撮られているっぽいが、何故だ……?

「不思議か? 佐嶋よ、あれからお前さんが病院へ運ばれて明け方から夜まで眠っている間、わしは学校ダンジョンを攻略したスレイヤーとして取材を受けておったというわけだ……」

「な、なるほど……でも、スレイヤーがダンジョンを攻略するなんて、別に珍しくもなんともないんじゃ……?」

「まあ、それはそうだがの、、となれば、話は別だろう?」

「あっ……」

 そういや、ダンジョンに入る前、風間はそんなことを警官たちに話してたっけか。

「一般人のおりをしながら、一体どうやってボスを倒したのかと、そりゃもう引っ張りだこでなあ……」

「……むしろ、俺が風間さんのお守りをしたんですが……」

「相変わらず言うのー、言うのー。だがな、世間の目は違うのだよ」

 ドヤ顔で決めポーズを取る風間にフラッシュがたかれる。白髪もすっかり染めてるし、服もおしゃれなものに新調されてるしで、見ていて段々苛立ってきた。

「風間さん、後頭部に白髪が目立ってますよ」

「な、なぬっ!? しっかり染めたはずだが……。こっ、後頭部のどの辺だっ!?」

「冗談です」

「ぐあっ!?」

 フラッシュとともに、風間の変顔もしっかりフィルムに収められたみたいなので、溜飲が下がる思いだ。

「風間さん、有名になれてよかったですね」

「お、おいおい、冷たい感じの物言いだが、これでよかっただろう?」

「どうしてですか?」

「お前さんはあの裏切り者の黒坂のように、一般人なのにダンジョンをクリアした英雄として生きたいのか? そんなことをしても無意味に目立つだけだぞ。そしたら、いずれ黒坂、羽田あたりの目にも入ることになるだろうて」

「……そ、それは、確かにそうですね……」

 母さんや妹、それに玄さんらに累が及ぶことを考えたら、事実を明らかにして目立つことは風間の言うように悪手だろう。

「あと、お前さんの体をしつこく調べたがっとる医者がおったから、知り合いのヒーラーを連れてくるからと嘘を言って追い出したんだぞ」

「それって……もしかして、眼鏡を掛けてる医者の男ですか?」

「うむ、そうだったな。よっぽど興奮しとったのか、鼻息を荒くして眼鏡が曇っておった。知り合いか?」

「いえ、顔見知りなだけです。なんか変な感じの医者だったし、追い出してくれてよかったですよ」

「ふむ……」

 あの医者は俺にやたらと執着してたからな。風間がいなかったら解剖でもされかねなかったし感謝しないと。

 ちなみに、医者という職業はヒーラーがいるからまったくいらないってわけでもなく、ヒーラーは身体の欠損には強いが病気の分野には弱いらしいから棲み分けがちゃんとできているってわけだ。ダンジョン菌に対しては、どちらもどうしようもないみたいだが。

「ところで、佐嶋よ、ちょっと聞きたいことがあるのだが……」

「なんですか、風間さん、そんなに改まって」

「両腕がないその体で、どうやってレベルを上げるのかと不思議に思ってな……」

「……そ、それは……まあ、大丈夫です」

 風間に言われてちょっと焦ったが、手がないといっても方法はあるから問題ない。

「わしが手伝おうか?」

「……いえ、大丈夫ですよ」

 手伝うとか言っているが、それを通じて俺の秘密を探ろうとしているのはバレバレだ。

「佐嶋よぉ、遠慮するなぁ」

「だから、自分でなんとかするんで大丈夫ですって。それに、気分が悪くなるから羽田の真似だけはやめてくださいよ……」

 俺の腕がこんな状態だからって風間はしつこいなあ。羽田の名前を出すだけでも具合が悪くなりそうだっていうのに。

「――康介っ!」

「康介兄ちゃんっ!」

「「あっ……」」

 俺と風間の上擦った声が重なる。病室に響き渡ったのは、俺の母さんと妹の灯里の声だったからだ。

「ひっく……こ、こんな腕になっちまってええぇっ! 辛かっただろうにっ! でも、よく生きててくれたよ。これからは母ちゃんが、なんでもしてやるからっ!」

「ぐすっ……! 康介兄ちゃんがこんな風になっちゃうなんてえぇっ……! でも、生きててよかったあっ! 私がずうぅっと側にいてあげるから安心してねっ!」

「…………」

 これはまずいな。使命感によるものか、二人の目が燃え上がってしまっている。

「あ、えっと、母さんも、灯里も、俺のことは大丈夫だから。アムゾンで頼んだ義手がもうすぐ届く予定だし、何より俺の師匠の風間さんが面倒を見てくれることになったから……」

「へ……?」

 呆然とする風間に、二人の魔の手が迫る。ここは申し訳ないが、あなたに避雷針――いや、俺のお守《まも》りになってもらうしかないんだ……。

「あ、あ、あなたが、康介の師匠の風間様でいらっしゃいましたかっ!」

「はふうっ! 康介お兄ちゃんのお師匠さんっ!」

「え、えっと、ふむ、確かにわしがそうだが――」

「――よかったら肩を揉ませてくださいっ!」

「私は足をっ!」

「え、ちょっ!?」

「「全身をっ!」」

「どっ……どわあぁっ!?」

 風間が目を見開いて逃げ回るのもわかるくらい凄い迫力で、に火がついた母さんと妹から追い回される羽目になっていた。いやあ、引き受けてくれて助かるが、さすがに気の毒になってきたな……。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~

尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。 だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。 全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。 勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。 そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。 エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。 これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。 …その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。 妹とは血の繋がりであろうか? 妹とは魂の繋がりである。 兄とは何か? 妹を護る存在である。 かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。 全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。 ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。 これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

処理中です...