A級パーティーを追放された黒魔導士、拾ってくれた低級パーティーを成功へと導く~この男、魔力は極小だが戦闘勘が異次元の鋭さだった~

名無し

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33話 対照的

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「「「乾杯っ……!」」」

 ベグリムの都の冒険者ギルドでは、A級パーティー【風の紋章】の三人による祝勝会が執り行われていた。

「ゴクッゴクッ……プハーッ、ロナ、カリン、勝利の酒は実に格別だなっ!」

「だねえ。カリンの顔も元に戻ったし、モンドは呪われたパーティーの餌食になって廃人化する予定だしで、こんなに愉快な日はないわね!」

「ですね。やっぱりモンドさんを追放した私たちの選択は間違ってませんでした……!」

 ゴート、ロナ、カリンの三人は、少し赤みを帯びた会心の笑顔を見合わせた。

「うえっぷ……あの呪いの噂についてもたっぷり流しておいたし、あとは廃人になったモンドの帰りを待つだけだぜえぇ……」

「プハー……ホントォ、楽しみねえ。あいつを追放する前夜祭のときみたいにワクワクしちゃう……」

「ひっく……私たち以外にも注目されてる状況ですし、見物ですねえ……」

「「「プププッ――」」」

「――そこの方々っ!」

 噴き出すように笑う三人の元に、目を吊り上げた一人の少女がやってくる。

「な、なんだよ、お前は?」

「誰なのよ、いきなり」

「誰なんです?」

「コホン……私はですね、受付嬢のイリスと申す者です! モンド様について、妙な噂を流すのはおやめください。ギルドが混乱してしまいます!」

「「「……」」」

 イリスと名乗った受付嬢の怒鳴り声に対し、ゴートたちはしばらくぽかんとした顔を見合わせたあと、一様に小馬鹿にしたような笑みを浮かべてみせた。

「誰かと思ったら、冒険者に不人気で有名な受付嬢じゃねえか。顔も悪いなら頭も悪い。まさに罪だな」

「んだねえ。お似合いなんじゃないの? あたしたちに追放された、無能モンドの専属受付嬢さん」

「お気の毒ですが、モンドさんはもう……噂の【時の回廊】パーティーの呪いによって、変わり果てた無惨な姿になってると思いますけど……?」

「そ、そんなはずはありませんっ! もし本当に、あなた方の言うように呪いと呼ばれるものがあったとして、あの方が簡単に負けるはずはないです!」

「はあ……。もうほっとこうぜ、こんなやつ」

「そうね。バカはスルーしてどんどん飲みましょっ」

「賛成ですぅー」

「む、むううっ……」

 悔しそうに唇を噛むイリスだったが、まもなくはっとした顔に変わる。

「モ、モンド様……!」

「「「えっ!?」」」

 ギルドの入り口から、臨時メンバーのモンドを含む【時の回廊】パーティーが姿を現したのだ。

「う、嘘だろ……まさか、こんなに早く攻略したっていうのか……?」

「そ、そんなはずないわ! あれでしょ、依頼をこなすのが厳しそうって判断して、途中で断念したんじゃないの?」

「多分、ロナさんの言う通りでしょうね。役立たずのモンドさんもいるのに、こんなに早く終わるはずがありませんし……」

「ってことは、より早くモンドの廃人姿を拝めるってわけだ! よっしゃ、早速行くぜええ! どけどけっ!」

「今までの分、思い知らせてやりましょっ。そこ、どきなさいよ!」

「どいてください、よく見えません……!」

「あ、こらっ、待ちなさい! あなた方はノーマナーにもほどがありますよ!?」

 ゴート、ロナ、カリンの三人がイリスの制止を聞かず、集まった野次馬をも押しのけてモンドたちの元へと迫っていく。

「――【時の回廊】御一行様方、おめでとうございます」

「「「へ……?」」」

 彼らの期待とは裏腹に、カウンターにいる受付嬢が言い放ったのは祝福の言葉であった。

「こちらで確認したところ、スピード、クオリティともに最高クラスであるため、文句なしにB級昇格となります」

「「「「「お、おおぉっ!」」」」」

「あのモンドって黒魔導士が【時の回廊】パーティーの呪いを解きやがった!」

「てか、モンドってあのG級パーティーを成功させたやつじゃね!?」

「マジかよ、あいつすげー!」

 野次馬たちから歓声と拍手が沸き起こり、笑顔を向け合う【時の回廊】パーティーの面々とモンド。

「そ、そんなバカなあぁ……ありえねえよ、畜生……」

「なんなの、これ。あたしたちのほうが呪われてるんじゃないの……」

「も、もう嫌……。こんなの沢山です……」

 呆然自失とした表情で呟くゴートたちの姿は、眼前の光景と比べてあまりにも対照的なものだった……。
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