A級パーティーを追放された黒魔導士、拾ってくれた低級パーティーを成功へと導く~この男、魔力は極小だが戦闘勘が異次元の鋭さだった~

名無し

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32話 罪滅ぼし

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「こ、これは一体どうしたっていうんだい!?」

「ど、どういうことだよ、これは!?」

「や、やっぱりお前の仕業だったのか……!」

「あ……」

 メルルが失神してまもなく、ラダン、バルダー、キールの三人がテントの中に飛び込んできた。

 確かにこの状況じゃ疑われるのも仕方ないか。誰がどう見たって、俺が襲う目的でメルルのテントに押し入ったように見えるだろうし。

 ただ、実際には犯人じゃないのでただちに弁解する必要がある。

「いや、待ってくれ。違うんだ、これは――」

「――モンド君、どうしてこんな。信じてたのに……」

「チッキショウ! モンド、てめえはなんてことをしやがるんだ!」

「モンド、お前が犯人だとわかった以上、絶対に逃しはしないからな……」

「……」

 ダメだ。取り付く島がないし、簡単には信じてもらえそうにもない。

 どうしようか……。とりあえずこいつらを倒してここから逃げるか。でもそんなことをしたら悪い噂を流される可能性が高そうだ。ただでさえゴートたちにそういうことをされているわけで、今後は仕事がますます減るかもしれない。

 それでも、ここで捕まって兵士に引き渡されるようなことがあれば、それこそ噂どころじゃ済まなくなる。どこへ行っても犯罪者として後ろ指をさされるわけで、冒険者としては完全に終わりといってもいい。

 となれば、やはり強行突破して逃げるしかないか。しばらくベグリムの都にはいられなくなるだろうが、別の都に行くっていう選択肢もあるしな……。

「――ま、待って……」

 重苦しいほどの緊迫感と沈黙に包まれる中、メルルの小さな声が響いた。

「モンドおにーちゃんは悪くない。全部、私が悪いの……」

「「「「メルル……?」」」」

 これはかなり意外だった。俺が暗黒状態からメルルに施した光魔法――疑似白魔法――によるショック療法で精神が正常になったとはいえ、本当のことは言い辛いだろうと思いきや、まさかこうも早く罪を認めるとは……。

 彼女は頬を濡らしながら立ち上がった。

「実のお兄ちゃんがね、夢の中に出てきたの……。もうこんなことはやめてくれって。僕もそろそろ大人になるからって……」

「そうか、妹のためを思って兄が一肌脱いだのかもな。それじゃ、メルルもその思いに応えなきゃダメだぞ」

「うん……。お兄ちゃんが大人になったから、今度は私の番。みんな、ごめんなさい……」

 それから、メルルは何故依頼の妨害をしていたのか、事の経緯をみんなに話すことになった。たどたどしくもしっかり話せてたし、もう彼女についてはほとんど心配いらないだろう。

 問題は、今まで散々呪いという名の妨害を受けてきた仲間たちがどう思うかだ。

「――というわけなの……」

「「「……」」」

 メルルが話し終わった途端、血相を変えて前に出てきた男がいた。

「メルル……お前っ……!」

「はうっ!」

 キールがメルルの頬を勢いよく張ると、バルダーが慌てて止めに入る。

「お、おいキール、やめろって!」

「バルダー、放せっ! おい、メルル、お前自分が何をやったか、本当にわかってるのか!? ふざけるなよ、遊びじゃねえんだぞ!」

「ひっく……ごめんなさい……。気のすむまで殴って……殺してもいいから……」

「じょ、上等だあぁっ!」

「だから、よせってキール!」

「は、放せって言ってるだろ! バルダー、お前は悔しくないのか!?」

「バカ言うんじゃねえ、キールッ! 俺だって悔しいに決まってるだろ! でも、メルルを殺したところでなんにも解決しねえじゃねえか。それとも、仲間を失ってまた依頼に失敗してもいいっていうのか!?」

「くっ……」

 確かにバルダーの言う通りだ。キールも少しは納得できたのか、悔しそうにしつつも下を向いた状態で暴れなくなった。

「けどよ、俺にはキールの気持ちが痛いほどわかるし、メルル……お前には心底失望したぜ。可愛い妹みたいに思ってたってのによ……」

「ぐすっ……ごめんなさい……ごめんなさい……私を殺せないなら、依頼が終わったあと、このパーティーを抜けるから、だから、許して――」

「――それだけは許さない、メルル」

 その言葉を発したのは、それまで難しい顔で黙って聞いていたリーダーのラダンだった。

「……ラ、ラダン……?」

「自分だけ逃げるのは絶対に許さない。今まで妨害してきた分だけ、君には償ってもらう」

「で、でも、みんな私を許せないと思って……」

「もちろん、簡単に許せるわけがないさ。僕だってそうだ。はらわたが煮えくり返ってる」

「……」

「けど……時間が解決してくれるかもしれない」

「時間、が……?」

「そうさ。みんなが君にこれだけ憤りを覚えてるってことは、メルルのことをそれだけ信頼してたってことなんだ。覚えてるだろ? どうしてこんなパーティー名になったのかを。いくら歩いても何も変わらない、果てしないと思える状況でも諦めずに進むことで、いつか僕たちが時代を動かす寵児になる、そんな意味が籠められてる。だから、どんな状況からでもやり直せるはずだ。みんなで、一から……」

「……」

 吟遊詩人ラダンの歌うような言葉は、俺の胸にも響き渡るようだった。臨時メンバーにすぎない自分でさえそうなんだから、それまで仲間だった者たちには相当な重みとして響いたに違いない……。
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