固有スキルが【空欄】の不遇ソーサラー、死後に発覚した最強スキル【転生】で生まれ変わった分だけ強くなる

名無し

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第二四階 不遇ソーサラー、気付く

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「……また、ここなのか……」

 フラフラと、気付けば俺は冒険者登録所のトイレまで舞い戻ってきていた。行くつもりなんてまったくなかったんだけどな。

 あのボロアパートもそうだがここも実家のような安心感があるし、それで足が勝手に俺をここまで運んだってことなんだろうか。てか、こんなところで今更何をするつもりなんだ。催してもいないのに用でも足そうっていうのか? あいつ……エリナだっていないのにこんなところで何をしようっていうんだよ、畜生……。

「――なっ……」

 俺は鏡に映った自分をしばらく睨みつけていたが、まもなくはっとなった。このマイザーというアルケミストの顔、誰かに似てるような気がしていたんだが、エリナに少し似ているように思えたんだ。そういえばあいつ、兄を通り魔に殺されてるんだよな。まさか……。

 事実を確かめるべく、俺はマジックフォンを取り出すと詳細ステータスを調べることにした。これは本人にしか覗くことができないようになっているもので、家族構成、姓名、本籍といった個人情報が事細かに記されているんだ。

 指紋認証と意思認証を済ませたことで波紋が画面全体に広がり、マイザーについての詳細な情報が次々と浮かび上がってくる。これは凄い……。全身の筋力の数値とか時間ごとの精神力の揺らぎ具合とかそういう緻密なデータまで載っいた。俺はある程度情報をざっと見たあと、避けていた核心の情報を恐る恐る見てみることにする。

「……やっぱりか……」

 自分はマイザー=ライムフィールドという姓名で、親族の中にはエリナの名前もあった。これ以上の情報は彼女の詳細ステータスでしかわからないが、ここまで一致するならマイザーの妹である可能性が高い……って、こうしちゃいられない。俺はすぐその場をあとにして教会へと走った。

 もし本当に今回の通り魔事件の被害者があいつなら、このまま死なせてしまうわけにはいかない。エリナ……どうか無事でいてくれ。外は既に薄暗くなりつつある中、俺は尖塔の十字架を見つめながら無我夢中で走っていた。



 ◆◆◆



「エ……エリナ……」

 聖堂内、柩の中に納められている少女は、目元は血で滲んだ布巾で覆われてるが確かに俺の知っているエリナだった。そこ以外はとても綺麗で、まるで眠っているみたいで亡くなっているということがしばらく信じられなかった。

 あれからたった一人で仇を討とうと頑張ったんだろう。ごめんな、俺が臆病なのが悪かったんだ。あんなに手伝ってもらったのに言い訳ばかりして、信じるということから逃げ出してしまった卑怯者の俺をどうか許してくれ……。

「神父、果たしてこのマイザーとかいう男は被害者の兄で間違いないのですかね……?」
「確かにエリナという妹の名前は一致しておりますが、一度は我々の元から逃げるように立ち去った男ですぞ!」

 後ろにいる教会兵たちが俺を怪しんでいる。まあ俺は一度引き下がった人間だし仕方ないか。親族を騙って侵入し、蘇生後に記憶がなくなることを見越してそのまま連れ去ろうとする悪党もたまにいるらしいしな。

「大丈夫でしょう。何よりこの方は本当に悲しんでおられるのが伝わってきます。嘘をついてるようには到底見えないのです」
「「むう……」」

 神父の言葉で、教会兵たちが渋々といった様子で引き下がっていく。

「神父様、信じて頂いてありがとうございます」

 俺の言葉に対し、神父は黙って微笑んだ。何も言わずともわかる、神は我々とともにいる、そう言いたげだった。

 エリナが生き返れば、自分で詳細ステータスを提示することができるのではっきり兄妹だとわかることなんだがな。ただリザ8なので確実に蘇生できるわけでもなく、成功したとしても記憶に障害が出る可能性が高いらしいが、それでもこのまま確実に死なせてしまうよりはチャレンジしたほうがよっぽどいい。

「では、始めます。マイザーさん、本当に良いのですかな?」
「……はい」

 俺は棺越しに神父の問いかけに対してうなずいた。エリナへのリザレクション8の使用を家族が完全に許可した格好だ。これでもう後には引けなくなる。

「天にまします我らの父よ――」

 いよいよ神父の祈りが始まり、緊張感が一気に駆け上がっていく。こうした儀式が成功率に影響することはないのかもしれないが、それでもないよりはずっとマシだ。やれることはやったんだと思いたいしあとで後悔したくないんだ。

「――アーメン。リザレクション!」

 眩い光が地面から立ち昇り、またたく間に棺を包み込んでいく。こんなときに限ってエリナとの思い出がどんどん蘇ってきた。あいつの何気ない仕草、表情、口調……些細な事柄が憎たらしいほど輝いて見える。

 そうか……唯一血に染まらなかったのはお前との思い出だったということか。今なら信じられる。どんな陳腐な占いでも、どれだけ馬鹿げた迷信でも。エリナさえ目覚めてくれるなら、俺はどんな方法にだって縋りつく。頼む、起きてくれ。もうどこにも行かないから。逃げ出さないから、お前の笑顔や怒った顔、照れ臭そうな顔をもう一度見せてくれ。会いたいよ、エリナ……。
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