3 / 93
3話 弾み
しおりを挟む「おいセニア、お前、荷物係のくせにそれだけしか持てないっていうのか!?」
古城ダンジョン一階奥の通路にて、ポニーテールの少女に対してリーダーであるナセルの叱責が飛ぶ。
彼女が持つことのできる荷物の量が早くもオーバーしたということで、パーティーは二階に上がる途中で帰還せざるを得なくなったからだ。
「はあ……?」
セニアは新人として入ってきたばかりだったが、いかにも納得がいかないといった様子で勝気な顔をしかめてみせた。
「リーダー……オレはもう荷物がいっぱいで持てないから、いちいち収集品を拾わないでほしいって何度も忠告しておいたはずだぜ? それにオレは【戦士】スキル持ちだし、荷物係専任じゃなく、戦闘の役割も兼ねてる。それはお互いに納得済みのはずだろ……?」
「いやいや、お前、この程度で音を上げてるようじゃ兼任でも荷物係なんて呼べないだろ! 俺だって矢筒を抱えてんだし、重くても少しは我慢しろってこった! おい、ファリム、ロイス、ミミル、みんなも黙って見てないで何か言ってくれよ、この生意気な新人に!」
「ナセル……アレを追放したばっかりなんだから少しは我慢しなきゃ」
「イエスッ、自分もファリムに同意するよ、リーダー。折角アレを追放したばかりなのだから我慢したまえ」
「あたしもファリムさんとロイスさんに同意します。リーダーさん、戦えるだけアレよりはマシですし、もうちょっと我慢しましょうよ」
「……わ、わかったよ。けどなあ、アレは荷物に関してはまったく問題なかったわけだしよ――」
はっとした顔で口を閉ざすナセル。
「えっ、まったく問題ないって、そんな有能な荷物係がいるのか? すげーじゃん!」
「「「「……」」」」
セニアの弾んだ台詞に、ナセルたちは気まずそうに黙り込むのだった。
◆◆◆
よーし、やってやるぞ……。
ギルドに入るまでの自分と、今まさにそこから出ようとする自分はもう別人だった。何故なら、外れスキルだと思ってた【削除&復元】が最高のスキルだってわかったからだ。僕の所有物、または自身に及ぼされるものだと判断されれば、頭痛どころか自分に向けられたスキルでさえ削除、復元できてしまう。
なんともウキウキで、小さな子供に戻ったような気分だ。これさえあればどんどん強くなれそう……ってことで、僕はまず解体用の短剣を握りしめてフィールドへ向かうことにした。最近、冒険者ギルドでは兎のヘアバンド等の材料になる毛皮を集める依頼が人気で、自分もそれに便乗した形だ。
正直、今の僕はそういうのを通り越してダンジョンに潜りたいくらい気持ちは高まってるけど、超一流の冒険者、すなわちS級以上を除いてソロでの立ち入りを固く禁じられている。それだけ厳しい場所ってことなんだ。そこに少しでも近づけるために、簡単な依頼を通して着実にレベルを上げておきたい。
「――うあ、いるいる」
町の外は見晴らしのいい草原が広がっていて、その先に見える森を背景に毛むくじゃらの兎たちが躍動していた。この辺なら弱いモンスターしか出ないから安全に狩ることができるんだ。ただ、僕と同じことを考えてる人もそれだけいるのか冒険者の姿も多かった。
名前:モッピングラビット
レベル:3
種族:動物
属性:地
サイズ:小型
テクニック:
《跳躍・小》
早速【鑑定士】スキルで兎を調べてみると色んな情報が出てきた。重要なことだけこうして即座に視覚化できるなんて凄いな。人気スキルなわけだ。
「それ――あっ!」
『ムキュキュッ』
兎に駆け寄って倒そうとしたけど、笑い声のような鳴き声をセットに軽々とかわされてしまう。『跳躍・小』っていう割りに半端ないジャンプ力で、大体2メートルくらい跳んでそうだ。
「当たれえぇっ!」
それならこれはどうだと、モンスターが跳躍後に落下するタイミングを狙おうとしてるんだけど、身体能力がかなりあるらしくて前後左右にクルッと方向転換して巧みに避けられる有様だった。
「――はぁ、はぁ……」
うーん、単純に自分のレベルが低いからっていうのもあるんだろうけど、攻撃を当てるのってこんなに難しいんだなあ。僕はモッピングラビットを追い回すのに疲れて両膝に手を置いた。
『ムキュウゥゥーッ!』
「はっ……!?」
一段と鋭い声がしたので前を向くと、兎が一転して牙を剥き僕に向かって飛び掛かってくるところだった。小型でもあの強い跳躍から繰り出される体当たりをまともに受けた場合、打ちどころが悪いと死ぬこともあるみたいだし、この勢いでぶつかってきたらまずい――って、待てよ? そうだ、あの手があるじゃないか。
『……ムキュッ?』
高く飛び上がっていたはずの兎は、僕の足元にいた。ぴょこぴょことそこから何度も跳び上がろうとしてるみたいだけどできないのが丸わかりだ。これは……やっぱりあれを削除できたってことだよね。
『ムキャャアァァッ!』
しきりにジャンプしようとするモッピングラビットを難なく短剣で仕留めると手早く解体して削除し、自分のステータスを確認することにした。
名前:カイン
レベル:1
年齢:16歳
種族:人間
性別:男
冒険者ランク:F級
装備:
短剣
革の鎧
スキル:
【削除&復元】
【鑑定士】
ダストボックス:
頭痛
《跳躍・小》
兎の毛皮
兎の肉
「おおっ……!」
思わず声が出た。やっぱりモンスターが使ってきたテクニックを削除できてる。それを手元に復元してみると、新たにテクニック欄とその下に《跳躍・小》が表示される格好になった。
テクニックっていうのはスキルの下位互換で、特訓を重ねれば人によっては取得可能なものなんだけど、それでも得意な分野に長い年月をかけてようやく芽が出るっていうレベルなんだ。だからよっぽど必要だと思わないと積極的に取りにいく人は少ない。そういう苦労の結晶みたいなものを一瞬でゲットできるんだから大きすぎる……。
91
あなたにおすすめの小説
チートツール×フールライフ!~女神から貰った能力で勇者選抜されたので頑張ってラスダン前まで来たら勇者にパーティ追放されたので復讐します~
黒片大豆
ファンタジー
「お前、追放な。田舎に帰ってゆっくりしてろ」
女神の信託を受け、勇者のひとりとして迎えられた『アイサック=ベルキッド』。
この日、勇者リーダーにより追放が宣告され、そのゴシップニュースは箝口令解除を待って、世界中にバラまかれることとなった。
『勇者道化師ベルキッド、追放される』
『サック』は田舎への帰り道、野党に襲われる少女『二オーレ』を助け、お礼に施しを受ける。しかしその家族には大きな秘密があり、サックの今後の運命を左右することとなった。二オーレとの出会いにより、新たに『女神への復讐』の選択肢が生まれたサックは、女神へのコンタクト方法を探る旅に目的を変更し、その道中、ゴシップ記事を飛ばした記者や、暗殺者の少女、元勇者の同僚との出会いを重ね、魔王との決戦時に女神が現れることを知る。そして一度は追放された身でありながら、彼は元仲間たちの元へむかう。本気で女神を一発ぶん殴る──ただそれだけのために。
【完結】勇者PTから追放された空手家の俺、可愛い弟子たちと空手無双する。俺が抜けたあとの勇者たちが暴走? じゃあ、最後に俺が息の根をとめる
ともボン
ファンタジー
「ケンシン、てめえは今日限りでクビだ! このパーティーから出て行け!」
ある日、サポーターのケンシンは勇者のキースにそう言われて勇者パーティーをクビになってしまう。
そんなケンシンをクビにした理由は魔力が0の魔抜けだったことと、パーティーに何の恩恵も与えない意味不明なスキル持ちだったこと。
そしてケンシンが戦闘をしない空手家で無能だったからという理由だった。
ケンシンは理不尽だと思いながらも、勇者パーティーになってから人格が変わってしまったメンバーのことを哀れに思い、余計な言い訳をせずに大人しく追放された。
しかし、勇者であるキースたちは知らなかった。
自分たちがSランクの冒険者となり、国王から勇者パーティーとして認定された裏には、人知れずメンバーたちのために尽力していたケンシンの努力があったことに。
それだけではなく、実は縁の下の力持ち的存在だったケンシンを強引に追放したことで、キースたち勇者パーティーはこれまで味わったことのない屈辱と挫折、そして没落どころか究極の破滅にいたる。
一方のケンシンは勇者パーティーから追放されたことで自由の身になり、国の歴史を変えるほどの戦いで真の実力を発揮することにより英雄として成り上がっていく。
復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる
六志麻あさ
ファンタジー
異世界に召喚され、魔王を倒して世界を救った少年、夏瀬彼方(なつせ・かなた)。
強大な力を持つ彼方を恐れた異世界の人々は、彼を追い立てる。彼方は不遇のうちに数十年を過ごし、老人となって死のうとしていた。
死の直前、現れた女神によって、彼方は二度目の人生を与えられる。異世界で得たチートはそのままに、現実世界の高校生として人生をやり直す彼方。
再び魔王に襲われる異世界を見捨て、彼方は勇者としてのチート能力を存分に使い、快適な生活を始める──。
※小説家になろうからの転載です。なろう版の方が先行しています。
※HOTランキング最高4位まで上がりました。ありがとうございます!
追放王子の気ままなクラフト旅
九頭七尾
ファンタジー
前世の記憶を持って生まれたロデス王国の第五王子、セリウス。赤子時代から魔法にのめり込んだ彼は、前世の知識を活かしながら便利な魔道具を次々と作り出していた。しかしそんな彼の存在を脅威に感じた兄の謀略で、僅か十歳のときに王宮から追放されてしまう。「むしろありがたい。世界中をのんびり旅しよう」お陰で自由の身になったセリウスは、様々な魔道具をクラフトしながら気ままな旅を満喫するのだった。
神々に見捨てられし者、自力で最強へ
九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。
「天職なし。最高じゃないか」
しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。
天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。
追放された最弱ハンター、最強を目指して本気出す〜実は【伝説の魔獣王】と魔法で【融合】してるので無双はじめたら、元仲間が落ちぶれていきました〜
里海慧
ファンタジー
「カイト、お前さぁ、もういらないわ」
魔力がほぼない最低ランクの最弱ハンターと罵られ、パーティーから追放されてしまったカイト。
実は、唯一使えた魔法で伝説の魔獣王リュカオンと融合していた。カイトの実力はSSSランクだったが、魔獣王と融合してると言っても信じてもらえなくて、サポートに徹していたのだ。
追放の際のあまりにもひどい仕打ちに吹っ切れたカイトは、これからは誰にも何も奪われないように、最強のハンターになると決意する。
魔獣を討伐しまくり、様々な人たちから認められていくカイト。
途中で追放されたり、裏切られたり、そんな同じ境遇の者が仲間になって、ハンターライフをより満喫していた。
一方、カイトを追放したミリオンたちは、Sランクパーティーの座からあっという間に転げ落ちていき、最後には盛大に自滅してゆくのだった。
※ヒロインの登場は遅めです。
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる