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14話 取り換え
しおりを挟む「おおぉっ……! レインボースパイダーの足をこんなに持ってくるとは。さすがカインどの!」
ヘイムダルの商店街にある例のお肉屋さんで、僕は依頼分を除く蜘蛛の足を店主のリーネに見せたところだった。
あ、そうだ。オーガの死骸も持ってるから見せてみようかな。オーガの肉なんて市場で見たことないし売り物になるかはわからないけど。
「あと、これなんてどうかな……?」
「こっ、これは……オ、オーガの肉うぅっ!?」
「うん。肉っていうかそのまんまだけどね」
リーネ、どうしたんだろう? 呆然自失といった様子でピクリとも動かなくなった。さすがに売り物にならないからって呆れられちゃった?
「ま、まさか……カインどのがこれを倒したのだろうか……?」
「あ、うん。まぐれみたいな感じで」
「ま、まぐれでも凄いのだあっ……! オーガの肉は王室だけに振る舞われているから普段お目にかかることは決してないのだが、その中でもこれはずば抜けてるのだ。こんな上等な肉は初めてなのだ……」
「そ、そうなんだ……」
そういや、オーガの中でもレアアイテムを持ってたオーガだからね。特に上質なのかも?
「ぜ、是非、蜘蛛の足と合わせて金貨100枚で譲ってほしいのだ!」
「え、ええっ!?」
とんでもない額を提示されてしまった。というかもう意気揚々と氷漬けされちゃってるし、贔屓のお肉屋さんだしで断る理由もないよね。
「もちろんOKだよ!」
「あああ、ありがたいのだあぁ! そ、それから一つだけお願いがあるのだが……」
「お願い……?」
なんだろう? リーネが赤い顔でそわそわしてる。
「う、う、うちの頭を撫でて……そ、それからっ、『リーネ頑張ったね』って言ってほしいのだ……!」
「うん、いいよ。リーネ頑張ったね」
「……ほ、ほおぉ。飛んじゃうのだ……」
「え?」
リーネが仰向けに倒れたかと思うとそのまま寝息を立て始めた。急に意識が飛んじゃうくらい眠かったのかな? そんな状態でも接客してくれるんだから凄い。さ、寝てる彼女を店の奥まで運んだら次は冒険者ギルドだ。
「カイン様っ、依頼達成おめでとうございます!」
「ありがとう、エリス!」
依頼を達成して、受付嬢のエリスに笑顔で迎えられるこの瞬間が最高なんだ。
「これでA級も見えてきましたねえ」
「う、うん。エリスのおかげでね」
「はわっ……カ、カイン様ったら、お上手……うっ、コホッ、コホッ……」
「エリス?」
ん、エリスが急に咳き込んだかと思うと目配せされた。さては……僕のことを嗅ぎ回ってるやつがギルドに入ってきたってことだね。僕は彼女を安心させようと同じように片目を瞑って返してみせた。こういうこともあろうかとちゃんと手は打ってきてるんだ。
◆◆◆
「――待たせたな」
「おおっ。なぁ、どうだった?」
「どうだったのかね……?」
冒険者ギルドから目と鼻の先にある路地裏にて、三つの長い人影が寄り添う。
「あぁ、自分の【鑑定士】スキルで例の少年の鑑定に成功したよ。それについて記した紙は金と交換だ」
一人の男が二人組の男から効果の入った小袋を受け取り、確認後に周囲の様子を気にしながら足早に立ち去っていく。
「ジェリック、これで俺たちの恨みを晴らせるな。楽しみだぜ……」
「私も楽しみだよ、ギラン……」
ニヤリと嫌らしい笑みを浮かべつつ、受け取った紙を覗き込む二人の男。
名前:カイン
レベル:24
年齢:16歳
種族:人間
性別:男
冒険者ランク:B級
能力値:
腕力A
敏捷C
体力B
器用D
運勢E
知性D
装備:
ダガー(無銘)
レザーメイル
ブレスレット
スキル:
【ダストボックス】
効果:
丈夫なダストボックスに物をいくらでも収納できる。いつでも出し入れ可能。
ダストボックス:
空っぽ
テクニック:
《裁縫・小》
「「……」」
ギランとジェリックがお互いに目を擦りながら二度見するも内容は変わらず、彼らの表情は見る見る失望の色で染まっていく。
「な、なんだよこれ。まあレベルと冒険者ランクはそこそこたけえが、能力値に関しちゃ腕力と体力以外並み以下で装備なんてガラクタ同然だしよ、こんなしょぼいスキルとテクニックの持ち主だったのかよ、あいつ……」
「ぐぬう……どう考えても変だ。では何故私たちのスキルはなくなった? 一体何故なのかあっ……!」
なんとも苦し気に頭を抱える二人の男だったが、しばらくしてジェリックが我に返った様子で前を向いた。
「ほかに協力者がいたのでは……?」
「なるほど、それしか考えられねえな。冒険者の不正を暴くためのギルド調査員が各地にいるはずだが、そいつらの目を盗んで自分よりランクが上のパーティーに手伝わせて、俺らのスキルを封印した上で依頼もこなしてたに違いねえ」
「おのれ……だとしたら明確なルール違反ではないか……!」
「こうなりゃ、やつに協力者がいるかどうか調べるためによ、しばらく尾行してみっか」
ギランとジェリックは互いに鋭い目を見合わせてうなずくのだった……。
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