16 / 93
16話 至高
しおりを挟む「化け物めっ、来い。相手になってやる!」
『ヒュルルルルルッ――』
「――うぎゃあああああああぁぁぁぁっ!」
「っ!?」
あ、あれは……。
僕が現場に着いたときだった。そこから30メートルほど先で長剣を振り上げた男が、尋常じゃない速度で飛行する何かに迫られたかと思うと全身をまたたく間に切り裂かれ、血まみれになりながら吹き飛んでいった。
僕はレベルアップによって動体視力も向上してるためか、その正体がなんなのかすぐに把握することができた。蜂だ。それも、人間の大人並みに大きい……。早速【鑑定士】スキルを使って詳しく調べてみよう。
名前:ミストレス
レベル:38
種族:昆虫族
属性:風
サイズ:中型
能力値:
腕力C
敏捷S
体力D
器用B
運勢E
知性S
装備:
クイーンサークレット
効果:
頭部に装着することで知性(魔力)が大幅に増大する。
スキル:
【ウィンドブレイド】
効果:
切れ味鋭い魔法の風を発生させる。
特殊攻撃:
毒針
効果:
猛毒が塗られた針を放つ。命中すると体力が徐々に減っていく。
うわ……レベル38だって。35レベルだったあのオーガよりも高い。でも良さそうな装備を持ってるな。それに加えて魔法系のスキルも持ち合わせてる。装備が装備なだけに超威力になってるってわけだ。
さらに、新たに能力値もそうだけど特殊攻撃や効果まで一度に閲覧できるようになった。これは僕の【鑑定士】スキルの熟練度が順調に上がってるからなのかもね。
さて、これ以上の被害が出る前になんとかしないと……。僕は頭の中で色々とシミュレーションしたのち、《跳躍・小》によって一気に蜂のモンスター、ミストレスとの間合いを詰めていく。
『ヒュルルル――』
あ……ミストレスがこっちに気付いたらしくて、飛び掛かってきたかと思うと頭上で止まって魔法陣を足元に出してきた。スキルを使おうとしてるのは丸わかりだ。
『――ルッ……!?』
よし、タイミングよく削除してやった。これで【ウィンドブレイド】は僕のものだ。警戒したのか蜂は高く飛翔したけど、僕にとっては充分届く距離だし倒す前にやることをやっておかないとね。
まず【殺意の波動】で動きを完全に封じ込めると、僕は何度も高く跳び上がってクイーンサークレットを盗むために《盗み・小》を繰り返した。その際、【偽装】スキルで見た目の跳躍力を削り落としたり、ルーズダガーを当てようとして空振りしたりするのも忘れない。
これによって、追手や周りで見物してる冒険者たちに普通より少し強い程度の冒険者だと思われるためだ。だって、実際の戦闘能力が偽ステータスと乖離してたらますます疑われそうだしね。
その間、動きを封じられたミストレスは避けられないレベルの量の毒針を飛ばしてきたけど、削除したり【ウィンドブレイド】スキルで弾き飛ばしたりして対応する。もちろん、【偽装】スキルで僕の見た目の動きは少々劣化させているつもりだ。
「――あっ……」
思わず声が出る。おおっ、遂にクイーンサークレットを盗めた。そのまま被るようにして装着すると、僕は【ストーンアロー】スキルで頭上の蜂に反撃を開始する。
『ヒュルルルルアァァァッ!』
「……」
え、ええ……? ミストレスの体は一瞬にして蜂の巣になって地面に落ちることになった。これがクイーンサークレットの威力なのか……。慌てて【偽装】スキルで穴の数を少なめに補正したけど、自分でも呆然としてしまうくらいとんでもない破壊力だった……。
◆◆◆
「み、見たか、ジェリック! ヒャッホー! あれなら倒せるっ、殺してくれるっ。あの蜂のモンスターならカインをぐちゃぐちゃにしてくれるっ!」
「もちろん見ているとも、ギラン。もし仮に上級の協力者が出てきても違反を報告できて美味しい、一人で挑んでも無様に死んでくれるから美味しい! まさにどっちに転んでも至高の展開っ……!」
蜂のモンスターから少し離れた場所にある木陰にて、わくわくした様子で戦況を見つめるギランとジェリック。だが、しばらくして二人とも見る見る焦った表情に変わっていく。
「な、なんであんなしょうもない動きをしてるカインを殺せねえんだ!?」
「本当に、どうしてなのか!? あのモンスターの中に意地悪な人間でも入っているのか!? 早く、早く憎きカインを倒しておくれ! 蜂の化け物よ――」
『――ヒュルルルルアァァァッ!』
「「……」」
まもなくモンスターの断末魔の悲鳴が響き渡り、ギランとジェリックは苦悶の表情で頭を抱えるのだった……。
80
あなたにおすすめの小説
神々に見捨てられし者、自力で最強へ
九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。
「天職なし。最高じゃないか」
しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。
天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。
チートツール×フールライフ!~女神から貰った能力で勇者選抜されたので頑張ってラスダン前まで来たら勇者にパーティ追放されたので復讐します~
黒片大豆
ファンタジー
「お前、追放な。田舎に帰ってゆっくりしてろ」
女神の信託を受け、勇者のひとりとして迎えられた『アイサック=ベルキッド』。
この日、勇者リーダーにより追放が宣告され、そのゴシップニュースは箝口令解除を待って、世界中にバラまかれることとなった。
『勇者道化師ベルキッド、追放される』
『サック』は田舎への帰り道、野党に襲われる少女『二オーレ』を助け、お礼に施しを受ける。しかしその家族には大きな秘密があり、サックの今後の運命を左右することとなった。二オーレとの出会いにより、新たに『女神への復讐』の選択肢が生まれたサックは、女神へのコンタクト方法を探る旅に目的を変更し、その道中、ゴシップ記事を飛ばした記者や、暗殺者の少女、元勇者の同僚との出会いを重ね、魔王との決戦時に女神が現れることを知る。そして一度は追放された身でありながら、彼は元仲間たちの元へむかう。本気で女神を一発ぶん殴る──ただそれだけのために。
リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!
【完結】勇者PTから追放された空手家の俺、可愛い弟子たちと空手無双する。俺が抜けたあとの勇者たちが暴走? じゃあ、最後に俺が息の根をとめる
ともボン
ファンタジー
「ケンシン、てめえは今日限りでクビだ! このパーティーから出て行け!」
ある日、サポーターのケンシンは勇者のキースにそう言われて勇者パーティーをクビになってしまう。
そんなケンシンをクビにした理由は魔力が0の魔抜けだったことと、パーティーに何の恩恵も与えない意味不明なスキル持ちだったこと。
そしてケンシンが戦闘をしない空手家で無能だったからという理由だった。
ケンシンは理不尽だと思いながらも、勇者パーティーになってから人格が変わってしまったメンバーのことを哀れに思い、余計な言い訳をせずに大人しく追放された。
しかし、勇者であるキースたちは知らなかった。
自分たちがSランクの冒険者となり、国王から勇者パーティーとして認定された裏には、人知れずメンバーたちのために尽力していたケンシンの努力があったことに。
それだけではなく、実は縁の下の力持ち的存在だったケンシンを強引に追放したことで、キースたち勇者パーティーはこれまで味わったことのない屈辱と挫折、そして没落どころか究極の破滅にいたる。
一方のケンシンは勇者パーティーから追放されたことで自由の身になり、国の歴史を変えるほどの戦いで真の実力を発揮することにより英雄として成り上がっていく。
追放王子の気ままなクラフト旅
九頭七尾
ファンタジー
前世の記憶を持って生まれたロデス王国の第五王子、セリウス。赤子時代から魔法にのめり込んだ彼は、前世の知識を活かしながら便利な魔道具を次々と作り出していた。しかしそんな彼の存在を脅威に感じた兄の謀略で、僅か十歳のときに王宮から追放されてしまう。「むしろありがたい。世界中をのんびり旅しよう」お陰で自由の身になったセリウスは、様々な魔道具をクラフトしながら気ままな旅を満喫するのだった。
復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る
神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】
元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。
ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、
理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。
今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。
様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。
カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。
ハーレム要素多め。
※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。
よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz
他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。
たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。
物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz
今後とも応援よろしくお願い致します。
料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される
向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。
アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。
普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。
白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。
そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。
剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。
だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。
おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。
俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる