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22話 気付き
しおりを挟む「――と、こういうわけなのです、リーネ様……」
「あ、あわわ、そ、そんなっ……」
冒険者ギルドのカウンター前にて、受付嬢エリスからカインに関する話を聞いたドワーフのリーネが、動揺した様子で両膝を床に落とすところだった。
「優しいカインどのが殺しなんてするはずもないのに……こ、こんなの濡れ衣に決まってるのだぁぁっ」
「お気を確かに持ってください、リーネ様。同感ですが、今私たちができることは気持ちを正常に保つことです」
「し、しかし、とてもじゃないがじっとなんてしていられないのだ。エリスどのは平気なのか? カインどのが冷たい牢獄に閉じ込められているなどと……想像しただけで吐き気がするというのに……」
「私だって悔しいです。でも、ここで泣き喚いても結果は変わらないじゃないですかあっ! し……失礼しました。つい大声を上げてしまって……」
「う、うちもすまなかったのだ。エリスどのも辛いのに……」
「いえ、私のほうこそ興奮しちゃってごめんなさい。それよりリーネ様、ちょっとお話が……」
急に小声になり、目配せするエリス。それに対し、リーネが察した様子で顔を近付けた。
「は、話とはなんなのだ、エリスどの……?」
「私と一緒に調査しましょう」
「え、ええっ……!?」
「カイン様は何者かに追われていました。そして、事件の現場となった路地裏の奥では死体が消えるという不穏なことが起きています。目撃者がいないかどうか調べるのです」
「そ、それはいいアイディアなのだ。うちと一緒にカインどのの疑いを晴らすのだ……!」
エリスとリーネはお互いに強い表情でうなずき合った。
◆◆◆
「おい、お前ら……今の話、聞いたか?」
冒険者ギルドの一角にて、メンバーにそう訊ねるナセルの顔は勝ち誇ったものだった。現在、冒険者の間ではA級冒険者のカインの話題で持ち切りであり、それはギルドに立ち寄った彼らの耳にも当然入ったのである。
「うん、聞いた聞いたっ。カインのやつが人殺しで捕まったって!」
「あのお人よしが殺しなどするとは……意外だが、最高にクレイジーでファンタスティックな展開だ。実にいい気味である……!」
「やっぱり、あたしたちが彼を追放したのは間違いじゃなかったってことですねえ。無能があんまり調子に乗るからこういうことになるんですよ。正直スカッとしました」
ナセル、ファリム、ロイス、ミミルの四人が揃って満面の笑顔でうなずき合う。
「そうだ、今からみんなでカインの惨めな顔を拝みに行かねえか?」
「ナセル、それ賛成っ! この際どっちが下なのかあいつに思い知らせてやりましょ!」
「自分も賛成だ。あの男がパーティーカーストの底辺であることをわからせなくてはっ!」
「いいですね。あわよくば奴隷化しちゃうのも悪くないですよ?」
「お、ミミル、奴隷化か、そりゃいいな。褒章を貰ってるしやつが処刑されることはねえだろうが、もう冒険者には戻れねえはず。だったらダンジョンの入り口にやつを置いて荷物係兼ストレス発散係にできる……!」
「「「ごくりっ……」」」
格好の標的を得たパーティーの一体感は増すばかりであった……。
◆◆◆
「うう……僕はもうダメだ……」
『カインのバカッ!』
「う……?」
僕の目の前には涙ぐんだアルウがいた。あれ……ダストボックスから復元なんてしてないはずなのに、なんで……。
『こんなところに閉じ込めておいて、そんな風に弱気にならないでよ! あなたなら私をいつか助け出してくれるって、そう信じてたのに……!』
「ア、アルウ……あれ……?」
見慣れない天井がぼやけて見える。なんだ……僕は牢屋の中でいつの間にか寝ちゃってて、それでアルウの夢を見ていたのか……。
「……」
なんで僕が怒られなきゃいけないんだよって一瞬思ったけど、寝ているときとはいえアルウが不安になってもおかしくないくらい弱気になってたのかもしれない。
あれから、兵士からあと一週間で解決しないと除名処分だぞって聞いたとき、目の前が真っ白になって何も考えられなくなった。【削除&復元】がなかったら、僕はとっくに発狂してたんじゃないかな。
そのとき、自分がまだまだ弱くて未熟だってわかったんだ。A級冒険者になったからって心まで一流になれるわけじゃないんだって気付かされることになった。
夢の中とはいえ、アルウの言葉は現実よりも説得力があった。彼女の言う通り、これくらいで弱気になってるようじゃダメだ。自分さえ助けられないやつが他人を救えるものか――
「――囚人カイン、お前に面会したい連中がいるそうだ」
「えっ……?」
兵士の声で僕は我に返る。連中ってことは複数だよね? 一体どんな人たちが会いに来たっていうんだろう……?
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