外れスキル【削除&復元】が実は最強でした~色んなものを消して相手に押し付けたり自分のものにしたりする能力を得た少年の成り上がり~

名無し

文字の大きさ
38 / 93

38話 失踪

しおりを挟む

「はふう……」

 ヘイムダルの都の一角にある武具屋にて、兎耳がトレードマークの店主ミュリアが浮かない表情でカウンターに頬杖をついていた。

「――あぅっ?」

 唐突におでこを指で突かれ、はっとした顔になる彼女の前にいたのは、同じ兎耳を持つ男クロードであった。

「お兄ちゃん、いつの間に……」

「ミュリア、元気ないぞ? そんなんじゃ客足も遠のくだろうよ」

「それは……心配なんだからしょうがないよ……」

「ん、何が心配なんだ?」

「とぼけちゃって~。カイン君のことだよ……」

「あぁ、カインが例の化け物を倒して王城まで招かれた件、か……」

 薄笑いを浮かべるクロードに対し、さも不満げに頬を膨らましてみせるミュリア。

「わかってるのに、なんでそんなに余裕綽々なの~……」

「大丈夫だって。心配しすぎだ、ミュリア。そんなにカインのことが気になるのか?」

「だって、あそこには第四王女がいるし……」

「それはそうだが、やつはまつりごとには興味もなく中立な立場だから問題ない。それに、邪魔なやつはことごとく消してるしほとんどが【忘却】の海の中だ」

「それでもなんだか不安なの~……」

「それならミュリア、俺が今晩添い寝してやろうか?」

「遠慮しとくよ~」

「あーあ、お前の気持ちがカインのほうにあるってよくわかった。あいつにミュリアと寝たぜって言って驚かせたかったのに……」

「もぉ、お兄ちゃんの意地悪~……って、またいなくなってる……」

 ミュリアの言う通り、クロードはまたしても忽然と姿を暗ましていたのであった……。



 ◆◆◆



「時間だ! 応答がなくば、これより強制的に入らせていただく――」

「――ちょっとくらいいいじゃないかっ」

「あ、い、いけません……」

「コ、コホンッ……でしたか。これは失敬……」

 足音が徐々に遠ざかっていくのがわかる。使用人のファランが察してくれたおかげで、僕たちは無事にこの場を乗り切ることができた。

「ファラン、協力できるかどうかはわからないけど、よかったら話の続きを」

「は、はい。ではまずその前に、二つの勢力についてお話します……」

 ファランがゆっくりとした口調で語り始める。

「この国には、第一王子クロード、第一王女ダリア、第二王女ミュリア、第三王女アルウ、第四王女ソフィアという五人の後継者候補がおり、当初は立場上クロード様かダリア様が有力な後継者候補と目されていて、ミュリア様が仲の良いクロード様のためにと辞退し、ソフィア様も拒んだため、本人たちもそのつもりだったのでございますが……王様が選ばれたのは、なんとアルウ様だったのです……」

「……」

 やっぱり情報量が多すぎて頭が真っ白になりそうだったので、僕は混乱状態を削除した。

 クロードにミュリアって……。名前が同じだけかもしれないって一瞬思ったけど、実際兄妹ってはっきり言ってたよね。じゃあ、都で武具屋の店主なんてやってるのは、王位争いを少しでも有利に進めるためにカモフラージュしてるだけ……?

「カインさん、大丈夫でございますか?」

「あ、うん……続けて」

「はい。王様がアルウ様を後継者として指名したことで、泥沼の王位争いが始まってしまいました。ですが、ソフィア様に王位を継ぐ気がまったくなかった以上、あの中で相応しいのはどう見てもアルウ様でした……」

 ファランの目元に涙が滲むのが見える。とても綺麗な涙で、まるでみたいだった。気のせいかな……?

「アルウ様は誰にでも平等に接する方で、無能と蔑まれていた自分を重用してくださったのもあの方だったのでございます。自分よりもずっと有能な方がいますのでその方を雇ってくださいと拒んでも、『私にはあなたが必要だと思えるんだからそれでいいのよ。その時点であなたは有能だから』って、涙ぐみながら仰ってくださりました……」

「そっか……」

 いかにもアルウらしいエピソードだと感じた。あの夢の中の光景もそうだ。

「アルウ様は、所持スキルにせよ教養にせよ、とにかく後継者としては相応しくないと執拗に二つの勢力から非難されましたが、それでも挫けずに敢然と立ち向かわれたのでございます。『王様らしくないなら、国民の目線に立った庶民的な王様になってみせるんだから!』と譲らなかったのです」

「あはは……」

 思わず笑ってしまった。そういや、確か【商人】だっけ? スキルからして全然王様っぽくないんだよね。こう言ったらアルウから怒られるかもしれないけど。

「それからまもなくのこと……王様が病でお倒れになって王室が慌ただしくなり、アルウ様が自分にこう仰いました。『お父様の病を治すための手段を見つけたけど、あいつらに見返してやりたいし今持ってるお金は使わずに自分の力だけでやるわ』と。それからほどなくして、お出かけになられたアルウ様が失踪してしまわれたのでございます……」

「まさか……『鬼哭の森』……?」

「よくご存知ですね。アルウ様はそこで命を落とすわけでございますが、向こう見ずに見えてとても慎重な方です。誰もが警戒するような危険な森にむざむざ殺されに行くとは思えません」

「ってことは……」

「はい。ここからは推測でございますが、第一王子クロード様のスキル【忘却】によってあの森がどれだけ恐ろしいかという情報を含め、記憶を失ってしまったのでしょう。実際に自分は無性に心配になってアルウ様を追いかけたところ、クロード様とすれ違ったのです……」

「【忘却】……」

 そういえば、僕はあのときアルウのことをクロードに話そうとして、彼女の声に阻まれたような気がした。

 なるほど、そういうことだったのか……ってことは、ミュリアが僕にルーズダガーやヴァリアントメイルを薦めてくれたのも、いずれ王位争いに協力させるため……? 俄かには信じられない。あんなにいい子に見えたのに、どうして……。

 権力争い――それも王位争いってことで、人格まで歪めてしまうんだろうか……。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

チートツール×フールライフ!~女神から貰った能力で勇者選抜されたので頑張ってラスダン前まで来たら勇者にパーティ追放されたので復讐します~

黒片大豆
ファンタジー
「お前、追放な。田舎に帰ってゆっくりしてろ」 女神の信託を受け、勇者のひとりとして迎えられた『アイサック=ベルキッド』。 この日、勇者リーダーにより追放が宣告され、そのゴシップニュースは箝口令解除を待って、世界中にバラまかれることとなった。 『勇者道化師ベルキッド、追放される』 『サック』は田舎への帰り道、野党に襲われる少女『二オーレ』を助け、お礼に施しを受ける。しかしその家族には大きな秘密があり、サックの今後の運命を左右することとなった。二オーレとの出会いにより、新たに『女神への復讐』の選択肢が生まれたサックは、女神へのコンタクト方法を探る旅に目的を変更し、その道中、ゴシップ記事を飛ばした記者や、暗殺者の少女、元勇者の同僚との出会いを重ね、魔王との決戦時に女神が現れることを知る。そして一度は追放された身でありながら、彼は元仲間たちの元へむかう。本気で女神を一発ぶん殴る──ただそれだけのために。

【完結】勇者PTから追放された空手家の俺、可愛い弟子たちと空手無双する。俺が抜けたあとの勇者たちが暴走? じゃあ、最後に俺が息の根をとめる

ともボン
ファンタジー
「ケンシン、てめえは今日限りでクビだ! このパーティーから出て行け!」  ある日、サポーターのケンシンは勇者のキースにそう言われて勇者パーティーをクビになってしまう。  そんなケンシンをクビにした理由は魔力が0の魔抜けだったことと、パーティーに何の恩恵も与えない意味不明なスキル持ちだったこと。  そしてケンシンが戦闘をしない空手家で無能だったからという理由だった。  ケンシンは理不尽だと思いながらも、勇者パーティーになってから人格が変わってしまったメンバーのことを哀れに思い、余計な言い訳をせずに大人しく追放された。  しかし、勇者であるキースたちは知らなかった。  自分たちがSランクの冒険者となり、国王から勇者パーティーとして認定された裏には、人知れずメンバーたちのために尽力していたケンシンの努力があったことに。  それだけではなく、実は縁の下の力持ち的存在だったケンシンを強引に追放したことで、キースたち勇者パーティーはこれまで味わったことのない屈辱と挫折、そして没落どころか究極の破滅にいたる。  一方のケンシンは勇者パーティーから追放されたことで自由の身になり、国の歴史を変えるほどの戦いで真の実力を発揮することにより英雄として成り上がっていく。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる

六志麻あさ
ファンタジー
異世界に召喚され、魔王を倒して世界を救った少年、夏瀬彼方(なつせ・かなた)。 強大な力を持つ彼方を恐れた異世界の人々は、彼を追い立てる。彼方は不遇のうちに数十年を過ごし、老人となって死のうとしていた。 死の直前、現れた女神によって、彼方は二度目の人生を与えられる。異世界で得たチートはそのままに、現実世界の高校生として人生をやり直す彼方。 再び魔王に襲われる異世界を見捨て、彼方は勇者としてのチート能力を存分に使い、快適な生活を始める──。 ※小説家になろうからの転載です。なろう版の方が先行しています。 ※HOTランキング最高4位まで上がりました。ありがとうございます!

追放王子の気ままなクラフト旅

九頭七尾
ファンタジー
前世の記憶を持って生まれたロデス王国の第五王子、セリウス。赤子時代から魔法にのめり込んだ彼は、前世の知識を活かしながら便利な魔道具を次々と作り出していた。しかしそんな彼の存在を脅威に感じた兄の謀略で、僅か十歳のときに王宮から追放されてしまう。「むしろありがたい。世界中をのんびり旅しよう」お陰で自由の身になったセリウスは、様々な魔道具をクラフトしながら気ままな旅を満喫するのだった。

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。 「天職なし。最高じゃないか」 しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。 天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

追放された最弱ハンター、最強を目指して本気出す〜実は【伝説の魔獣王】と魔法で【融合】してるので無双はじめたら、元仲間が落ちぶれていきました〜

里海慧
ファンタジー
「カイト、お前さぁ、もういらないわ」  魔力がほぼない最低ランクの最弱ハンターと罵られ、パーティーから追放されてしまったカイト。  実は、唯一使えた魔法で伝説の魔獣王リュカオンと融合していた。カイトの実力はSSSランクだったが、魔獣王と融合してると言っても信じてもらえなくて、サポートに徹していたのだ。  追放の際のあまりにもひどい仕打ちに吹っ切れたカイトは、これからは誰にも何も奪われないように、最強のハンターになると決意する。  魔獣を討伐しまくり、様々な人たちから認められていくカイト。  途中で追放されたり、裏切られたり、そんな同じ境遇の者が仲間になって、ハンターライフをより満喫していた。  一方、カイトを追放したミリオンたちは、Sランクパーティーの座からあっという間に転げ落ちていき、最後には盛大に自滅してゆくのだった。 ※ヒロインの登場は遅めです。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

処理中です...