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56話 探しもの
しおりを挟む「……」
古城ダンジョンに入ってすぐ、僕は重圧と緊張を同時に削除することになった。
巨人専用かと思えるほど縦横に広い通路には天窓からの朝陽が入り込み、大きな柱に施された十字盾の浮き彫りや不気味に漂う霧を鮮やかに照らしていて、荘厳かつ幻想的な雰囲気をこれでもかと作り出していたんだ。
とんでもないところに一人で来ちゃったと感じる。しかも一定の時間が経つと構造自体が変化するみたいだし、そういうところでのプレッシャーもガンガン感じるんだ。
……っと、いつまでもぼんやりしてる場合じゃなかった。構造が変わるといってもこの一階層に隠し通路があるのは間違いないみたいだし、ギルド長として夕方までに攻略も済ませなきゃいけないことを考えると、なるべく早く探さないとね……。
『『『『――コオオオオオォッ……』』』』
「あっ……」
輝く霧から染み出すようにしてモンスターが四匹出てくるのが見えた。
名前:死霊騎士
レベル:25
種族:アンデッド
属性:闇
サイズ:中型
能力値:
腕力B
敏捷C
体力B
器用A
運勢E
知性C
装備:
ランス
プレートメイル
クロスシールド
スキル:
【擦り抜け】
効果:
生き物や特殊な仕掛けが施された場所を除く、壁や柱等の障害物を擦り抜けて移動することができる。
特殊防御:
鉄壁
効果:
攻撃動作中以外、物理防御力が跳ね上がる。
【鑑定士】スキルで調べてみると、あの猪人族と比べても大して遜色がないことがわかる。ただ、あいつらに関してはボスのクアドラが強かっただけだからね。
って、【擦り抜け】スキルが凄く便利そうだから欲しいな……。
というわけで一体の死霊騎士を除き、【殺意の波動】を食らわせて動けなくしたあと、特殊防御のことも考えて魔法系のスキル【ストーンアロー】と【ウィンドブレイド】のセットであっさり殲滅してやった。
残りの一体が僕に向かって襲い掛かろうとするところで、《跳躍・大》で柱の後ろに隠れてみたら狙い通り魔法陣を足元に出してくるのがわかったので、そこで【削除&復元】を使ってありがたく【擦り抜け】を頂戴することに。
最後に【瞬殺】を使って倒そうと思ったら効かなかったのでどうしてかと思ったら、アンデッド……すなわち不死属性だった。こうなったら襲い掛かってくるタイミングで急所を攻撃して終わらせてやろう。
おお、どっちにしろ一発で倒せた……。鎧や盾の欠片等、落ちた収集品も削除したし、隠し通路を探しにいくとしようかな。どこにあるのかは、【鑑定士】を使わなくても見るだけで受動的効果によってわかるはず。
というわけで僕は早速、復元したばかりの【擦り抜け】スキルとテクニック《跳躍・大》を使用しつつ、周囲を隈なく調べ回ることにした。うわ、これ障害物とか一切気にしなくていいから快適すぎる……。
◆◆◆
「――これでよし、と……。おい、お前たちも準備はいいか?」
「「「準備オーケー!」」」
古城ダンジョン内の出入り口近辺にて、ファリムを除いて全員覆面姿のナセルたち。
「いいか、念のためにもう一度作戦内容を確認するぞ。まずカインが入ってきたらファリムが悲鳴を上げて、変装した俺たちがならず者として襲い掛かってるっていう状況を作る」
「「「うんっ」」」
「そのあと、やつは間違いなく助けようとするはずで、俺たちがびびって逃げたように見せかけて、ファリムはカインに抱き付いて泣きじゃくる」
「「「うんうんっ」」」
「んで、ファリムがパーティーの空気が悪いからとリーダーに文句を言ったら追放を言い渡されて、一人で帰ろうとしたら入口でならず者に襲われたと嘘をつくんだ。カインの気持ちがよくわかったって泣きながらな」
「「「うんうんうんっ」」」
「そこで、やつはようやくファリムに同情するだろう。僕の惨めな気持ちが少しは理解できたかなって。それから、カインがいなくなったあと雰囲気が最悪になったことが事の発端だと告げて、あなたと一緒ならパーティーに復帰できそうだからお願い、ついてきて……って頼むって寸法よ――って、おい、聞いてるのか……!?」
「「「……う、後ろ……」」」
「え……?」
ナセルが振り返ると、そこにあったはずの出入り口はなくなってしまっていた。
「げええぇっ……!? もう構造が変わりやがったのかよ、クソッ! しかもこのタイミングで……!」
「もぉ! ナセル、どうするのよ……?」
「リーダー、どうするっ?」
「リーダーさん、どうします?」
「こ、こうなったら悲鳴を上げつつ歩いていこうぜっ! そしたらあいつもいずれ気がついて探しにくるだろっ!」
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