外れスキル【削除&復元】が実は最強でした~色んなものを消して相手に押し付けたり自分のものにしたりする能力を得た少年の成り上がり~

名無し

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72話 火

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「――あっ……!」

 早速、『鬼哭の森』を目指して《跳躍・大》で高く跳び上がったときだった。向こうのほうで黒煙と炎が上がっているのが見えた。か、火事……!? しかも王城がある方向だ。

 よーし、水属性の魔法系スキル【アイススマッシュ】で火消ししてやろう。僕は【擦り抜け】も駆使して一直線に王城へと向かう。やがて城の全体像が見えてきて、野次馬たちや兵士たちが慌てふためく中、彼らの指差す城の天辺あたりが激しく燃え盛っているのがわかった。

 このままじゃ目立つので【偽装】で自分の姿を隠しつつ回り込み、【混合】+《跳躍・大》+《裁縫・大》によって、出火している箇所を目指して縫うように跳び上がっていく。こうなったらもう時間との戦いだ。煙を吸い込まないよう、息を大きく吸ってから【アイススマッシュ】と【維持】で一気に――って、あれ……?

 スキルが発動しない。一体どういうことなんだ……?

「あっ……」

 よく見ると、城の外壁には見覚えのある幾何学模様が刻まれていて、僕はそこでソフィアと手合わせしたときのことを思い出していた。そうか、これがあるところではスキルが使えないようになってるんだ。じゃあ僕にはもうどうしようも――

「――えっ……?」

 まもなく火は跡形もなく消えてしまった。あれだけ燃え盛っていたはずなのに、何故……。その答えは、煙が風で流されたときにわかった。何か黒い石のようなものが屋根の上に幾つか置かれていて、それが小さくなったことで火が弱まり、こうして消えたように思う。

 その周りの外壁は熱で変色してるけど一向に燃え広がるような気配はなかった。よく考えてみると、こんな幾何学模様があるような場所だから特殊な仕掛けが施されてるのは間違いないし、簡単に燃え広がるはずがないんだ。

 つまり、誰かがここに石を置いて城を燃やそうとしたけど、特殊な仕掛けがあることを知らなかったので失敗した……?

「「「「「そこまでだっ!」」」」」

「っ!?」

 気が付けば僕は弓を構えた兵士たちに囲まれてしまっていた。まずい、このままじゃ僕が火をつけて失敗したみたいに思われるし早く逃げなきゃ――って、あれ? 全然動けない。両足が屋根にくっついてる。鳥類を捕まえるためのとりもちの強化版みたいなものか、これは……。

「「「「「大人しくしろ!」」」」」

「ぼっ、僕は何もやってないっ……!」

「「「「「黙れっ!」」」」」

「くっ……!?」

 じたばたともがいているうちに、僕は近付いてきた兵士たちによってあっという間にロープで縛り上げられ、さらに首の辺りに打撃を加えられて意識を手放すことになった……。



「――うっ……? こ、ここは……」

 気が付くとそこは暗くて冷たい窮屈な空間だった。しかも唯一の扉が鉄格子なことから、自分が牢屋の中に閉じ込められていることがわかる。僕はきっと、あれから城に放火した容疑で捕まったんだ。早く逃げなきゃ……って、やっぱりスキルが使えない。【鑑定士】スキルで自己開示すらもできないんだ。

 よく見ると壁に例の幾何学模様があるのがわかった。武器や鎧も全部取り上げられてるし、これはもう完全に希望を断たれてしまったんじゃ……? ん、コツコツと乾いた足音が徐々に近づいてくる。一体誰なんだろう。このまま僕は処刑場へと連れられていっちゃうんだろうか……。

「ククッ。カインよ、今の気分はどうだ……?」

「あっ……」

 まもなく鉄格子越しに僕の前に現れたのは、忘れたくても忘れられないあの仮面の男だった。

「殺され屋……」

「ほう、吾輩のことを覚えておいてくれたか。フハハッ……」

「そりゃ……あなたにはあの一件で苦しめられたからね。今回も罠にかかって牢獄に入れられちゃったし……」

「ククッ。吾輩もお前には随分と苦労させられたのだからお互い様だ……っと、時間があまりないゆえ手短に話させてもらう。カインよ、吾輩とともにダリア様の元へ来てもらうぞ。その理由は賢いお前のことだからもう知っているだろう?」

「……そうか、あなたは第一王女のダリア一派なのか。でも、残念だけど僕はどの派閥であっても協力なんてできない……」

「ふむ……しかし、吾輩の誘いを容易く断れるような状況なのかね……?」

「……」

 やっぱりそうなっちゃうよね。そのためにああして巧妙な罠を張ってまで僕を捕まえたんだろうし……。

「吾輩はこう見えて非情に徹することができない男なのだが、カインがどうしても協力を拒むというのなら、やむを得ずしてもらうだけの話……」

「契約……?」

「そうだ。吾輩に逆らえば気絶するような痛みを覚える契約……お前が意識を消失している間にそれをしなかったのは、お前と信頼関係を築きたいからであり、あくまでも自分の意思で協力すると言ってもらいたいのだ。カイン、どうか力を貸してほしい……」

「……」

 この男、そこまで悪い人じゃないんだろうな。僕と信頼関係を築きたいから、そういう契約ができるのにあえてしなかったとか、そういう話を聞かされると心が揺れてしまう……。

「まあ、簡単には決められぬことだろう。しかし、残された時間も少ない。短い時間だが一人にしてやるからよく考えることだ。できれば、カイン、お前とは従属関係よりも仲間同士の関係になりたいと吾輩は心の底から願っている……っと、そうだ、自己紹介がまだであったな。吾輩はシュナイダーという者だ。よく覚えていておいてほしい……」

 仮面の男は口元をひん曲げて笑うと、マントを翻して立ち去っていった。シュナイダー、か。はあ。これほど早く忘れたいって思った名前は初めてだ……。
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