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93話 生き方
しおりを挟む「……」
旅先の宿の二階の一室にて、窓際で胸元まで伸びた白髭を弄りながら、素朴な景色をぼんやりと眺める男がいた。
(うーむ……そろそろ、カインめがギルド長の仕事に嫌気がさして尻尾を巻いて逃げたか、係員たちから総スカンを食らって孤立してしまったか……そういう知らせが届いてもおかしくないのだが、やたらと遅いな……)
――トントンッ。
それからほどなくして扉がノックされ、白髭の男が待ってましたといわんばかりに駆け寄る。
「お手紙が届いております、お客様」
「お、おぉっ、どうもありがとう……!」
宿主から嬉々とした表情で手紙を受け取り、間髪入れずに読み始める男であったが、まもなく至って陰鬱な表情でわなわなと肩を震わせた。
(うぬう……カインめ、アルフレドさえも丸め込むとは……。一体、どんな手を使ったというのだ……?)
前ギルド長宛と書かれた手紙をクシャクシャにする男。
(こうなったら、いよいよあやつを呼び戻すしかなかろう。この手段だけは使いたくなかったが、致し方あるまい……。それだけカインが有能ならば却って王位争いの的となり、やがてギルドが巻き込まれて潰されるのは目に見えている。ならば……カインがこれ以上慕われてしまう前に、痛みが少ないうちに終わらせてしまおう)
前ギルド長の目は、いつしか真っ赤に腫れ上がっていた。
(すまぬ……すまぬ、エリス、それにカインを慕う者たちよ……どれだけわしのことを恨んでも構わぬ。もう二度とお前たちの前に顔向けできなくなってもよい。ただ、ほんのしばらくは夢を見させてやろう。嵐の前の静けさという、束の間の安らぎをな……)
◆◆◆
「あ……」
冒険者ギルドの会議室の窓から外を眺めてたんだけど、雪が降り始めるのがわかった。道理で今日は朝から寒いと思ってたんだ。
金庫の盗難騒ぎが起きてから一カ月以上経っても、前ギルド長は旅先での仕事が長引いてるらしくてまだ帰ってこないし、僕の身辺でも変わったことは何一つ起きていない。
名前:カイン
レベル:67
年齢:16歳
種族:人間
性別:男
冒険者ランク:SS級
能力値:
腕力SS+
敏捷SS
体力SS+
器用S
運勢SS+
知性SSS+
装備:
ルーズダガー
ヴァリアントメイル
怪力の腕輪
クイーンサークレット
活力の帯
エンシェントロザリオ
宝珠の杖
聖書
ウィングブーツ
効果:
素早さが大幅に上昇する。
所持金:
金貨177枚 銀貨731枚 銅貨1556枚
スキル:
【削除&復元】A=【削除&復元DX】D
【鑑定士】S=【鬼眼】C
【武闘家】A=【武神】F
効果:
格闘能力が格段に上昇する。
【殺意の波動】A=【破壊の衝動】F
効果:
半径50メートル以内にいる標的をすべて麻痺させるだけでなく、士気も大いに下げることができる。
【擦り抜け】A=【幽体】E
効果:
生物を含む、すべてを擦り抜けることが可能。
【偽装】A=【変身】F
効果:
対象の姿形に完全に成りすますことができる。
【瞬殺】B
【亜人化】B
【難攻不落】B
【混合】B
【維持】C
【進化】D
【分離】E
【二重攻撃】D
【精神世界】E
【溜め】F
効果:
一定時間動けなくなる代わりに物理攻撃力や魔法力を上昇させる。
【融合】F
効果:
Sランクのスキルを二つ組み合わせることで新たなスキルを生み出す。
【ストーンアロー】A=【メテオアロー】F
効果:
魔法による強烈な石の雨を降らせる。
【ウィンドブレイド】A=【ストームブレイド】F
効果:
魔法による嵐の如き一撃を与える。
【ファイヤーフィスト】C
【アイススマッシュ】C
【サンダースピアー】D
【ホーリーシールド】F
効果:
魔法系の攻撃に対する耐性が上がる。
【ブラックメイル】F
効果:
毒や混乱等、状態異常に対する耐性が上がる。
テクニック:
《跳躍・大》
《盗み・大》
《裁縫・大》
《料理・大》
ダストボックス:
アルウ(亡霊)
ファラン(亡霊)
疲労17
腰痛15
頭痛6
眠気7
緊張3
チーズケーキ
チョコレートパフェ
久々に【鑑定士】スキルで自分のステータスを覗いてみる。レベルは58から67になり、冒険者ランクが遂にSSに到達してオッドアイの紫竜を胸に飾ることになった。
新装備のウィングブーツは、都内にある古代遺跡ダンジョンの隠し部屋にいたガーディアンから盗んだものだ。盗むのにかなり時間がかかったし、相当のレア装備なこともあって役立っている。
さらに結構な数のスキルがAになって、唯一【鑑定士】の熟練度がSになった影響か【進化】スキルまで併せて表示されるようになった。
新スキルの【溜め】は地味だけど受動的効果だから使えそうだし、【融合】はまだ使えないけど新しい楽しみがまた増えた。魔法系のスキルも、特に役立ちそうなものを二種類追加して豊富になってきた。
テクニックの組み合わせについても、もっともっと複雑なことができるようになった。自分のためであることはもちろん、何か大変なことが起きてもみんなを守れるためにと頑張った結果でもある。
さらに墓地や孤児院も設立して、人員も雇ったので僕の夢は現在進行形でどんどん叶いつつある。
お……誰かがこの会議室に近付いてくるのが足音でわかる。スキルを使ってない状態で、まだ姿形も見えないけど、今の時点でもう誰なのか判別できるようになった。
「――カイン様、おはようございます。なんだか、すっかりギルド長様らしくなってきましたね」
「そ、そうかな?」
「はい、雰囲気が出てきましたよ。背中とか大きく見えます……」
「そ、そうなんだ。エリスにそう言ってもらえると凄く自信になるよ」
「まあ、カイン様ったら……」
なんせ、彼女は前ギルド長のことを側でずっと見てきてるわけだしね。だからって追いついたなんてことはまったく思ってないけど――ん……? な、な、なんだ、今の気配は……?
「カイン様、どうされました……?」
「……く、来る。何かヤバいのが……」
「え……?」
「……」
爪先から脳天まで、これでもかと殺気を浴びせられているようなこの異常な感覚……。
「い、行かなきゃ……」
「カ、カイン様っ!?」
足が異様に重い。こんなことは初めてだ。体中が行くなって叫んでるみたいなんだ。それくらいの相手。おそらく、これこそが『破壊王』と呼ばれている人物……。
それでも、僕は逃げるわけにはいかない。敢然と立ち向かうんだ。何故なら、僕は冒険者だから。それこそが自分の生き方だから。
未来がどうなるかなんて誰にもわからないけど、これだけははっきりしていることがある。それは、本当の戦いがこれから始まるんだということ。さあ、来るなら来い。どんな難敵だろうと、必ずや打ち勝ってみせる……。
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