勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~

名無し

文字の大きさ
20 / 57
第一章

20話 支援術士、圧倒される

しおりを挟む

「――グレイスッ……!」
「「「「「グレイス先生っ!」」」」」

 夕陽を浴びて真っ赤に染まる冒険者ギルド前、俺はアルシュに涙ながらに抱き付かれ、待っていた多くの客たちからも歓声と笑顔で迎えられた。

「アルシュ、それにみんな、待たせたな。俺にかけられてた疑いは晴れたみたいだ……」
「「「「「おおおおっ!」」」」」
「グレイス、それならよかったぁ……ひっく……し、心配、したんだから――って、その人たちは……」
「あ、ああ、この二人は俺の元患者でな――って、テリーゼ、ジレード……?」

 後ろから大きな圧を感じると思ったら、俺の回復術をもっと見たいってことでついてきたテリーゼとジレードが揃って怖い顔をしていた。

「あの……この方は、グレイスさんのなんなのです……?」
「グレイスどののなんなのだ……?」
「え、えっと、それは……親しい友達、かな――うっ……?」

 今度はアルシュのほうから強烈な圧を感じて、恐る恐る見るととても怖い笑顔をしていた。

「グレイスー……? 私はそれ以上の関係でもいいんだけどぉ……?」
「あ、あはは……」
「あらあら、友人のアルシュという方なのですね。わたくしはテリーゼでこっちはジレード。よろしくですわ」
「アルシュとやら、よろしく頼む」
「よろしくー。テリーゼさん、ジレードさん。先日、グレイスがあなた方に応対してた場面を見てるから知ってたけどね。あ、ちなみに私はグレイスの幼馴染なんだっ」
「あら、そうなのですか……。それにしても、いくら幼馴染といえど、親しい友達程度ならまだ充分チャンスはありそうですわねぇ、ジレード?」
「た、確かに……って、テリーゼ様までグレイスどのを……?」
「あら? まさかジレードもですか……?」
「うっ。テリーゼ様、目がとても怖いです……」
「……」

 なんか凄く熱いような、それでいて酷く冷たいような妙な空気だ。それを煽るかのようにヒューヒューとほかの客たちが冷やかしてくるし、とにかく圧倒される。

「グレイスさんほどの神がかった【支援術士】なら、《高級貴族》以上の人とお付き合いするほうが釣り合うとわたくしは思いますわ」
「い、いや、テリーゼ様、釣り合うという意味では、《騎士》が一番ちょうどいいバランスかと……」
「あのぉ、二人とも、ちょっと待って! 釣り合うとかだったら、《庶民》同士が最高の組み合わせだって私は思うけどなあ……」
「「「むうぅ……!」」」
「……」

 おいおい、なんで火花が散ってるんだよ。ここは回復する場所なのに修羅場と化したら困るんだが……。

 ん? なんか今、どこかで凄く悲し気な叫び声が聞こえてきたような……。その方向を見てみるが、お年寄りが二人道を横切っていく姿がちらっと見えたくらいでそれらしき者はいなかった。ギルドで酔っ払いかなんかが大声で叫んだんだろうか……?



 ◇◇◇



(な、なんなんだよ。グレイスの野郎……いつの間にか帰ってきやがったと思ったら、なんであんなにモテてやがるんだよ。ありえねえ……これ、悪夢かなんかか? あっちにいるのが俺で、こっちにいるのがグレイスなんじゃねえのか……?)

 いつもの場所から【なんでも屋】周辺の様子を見て、わなわなと体を震わせる【勇者】ガゼル。

「――ん……?」

 ふと視線を感じた様子で彼が振り返ると、近くで男女の老人がヒソヒソと会話していた。

「婆さんや、ありゃ【勇者】のガゼルさんじゃないかい」
「あらまあ。【勇者】なのに、なんで一人なのかね、爺さん?」
「噂によりゃ、メンバーから総スカンに遭って逃げられたらしいぞい」
「んまあ、いい人って聞いてたのにねえ」
「人は見かけによらんもんじゃの。婆さんが慰めてやったらどうかね?」
「んー……可哀想だけど、やめとくよ。全然あたいの好みじゃないしね。勘違いされても困るしさっ」
「「ブハハッ!」」
「……」

 しばらく呆然とその場に立ち尽くすガゼルだったが、老人たちが笑いながら立ち去ってから見る見る顔を赤くした。

「……ち……ち、ちくしょおおおおおおおおおおぉぉぉっ! ぜってえやりかえしてやるうううううううううぅぅぅぅ!」

 ガゼルの絶叫が響き渡り、それに共鳴したのか近場にいた複数の犬たちまでもが一斉に吠え始めるのだった……。
しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。 名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。 絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。 運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。 熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。 そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。 これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。 「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」 知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。 だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。 その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。 だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…? 才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

処理中です...