転生先ではゆっくりと生きたい

ひつじ

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新しい街

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もう一度ネルのステータスを鑑定する。枷が外れたことにより薄くなっていたスキルや加護はちゃんと黒色で表示されていた。それよりも驚くことが…

「ま、魔力量が1万!?」
「はい。ハイエルフは元々魔力が高く、魔法に関する技術が高い一族なんです。私はまだ60歳なので成長途中ですが、私のお父さんなんかは10万程あります」

2000で俺すげーって思ってたのに。やっぱり村の中だけじゃ分からないことって沢山あるんだな。とても楽しいぞ。

「ソラ様のおかげで魔法も使えるようになりました。これでお二人のお力になれます。どうか連れて行ってください」
「ソラでいいよ。ネルさんの方が年上なんだし」
「いえ。命の恩人を呼び捨てにすることなんて出来ません。ソラ様こそネルとお呼びください」
「でも…」
「ったくここで言い合っても仕方ないだろ。取り敢えずネルも戦えるようになったんだから一緒に行くぞ。ダメって言ってもついてきそうだしソラもいいな?」
「ありがとうございます。ライド様」
「せめて様はやめてくれ」
「分かりました。ライドさん。ソラさんもよろしくお願いします」

ネルは深々と頭を下げる。様呼びじゃ無くなって一安心だ。2人だけだったら延々と言い合っていただろう。ライドがいてくれて本当に良かった。



ネルが先頭で俺、ライドの順に洞窟を進んでいく。ライドは火魔法で松明を作り道を照らしている。

鑑定で周囲に毒がないことは確認しているが、いつ毒が出てくるのか分からないため清浄化をかけたタオルで口元を覆っている。

「ネルさ…ネル、なんで毒の霧の中にいたのか教えて貰っていい?」
「はい」

昨日の俺たちとキースさんの話を聞いていたんだろう。けれど毒があるという情報を聞いて、毒消しを持たずに来るわけないだろう。

「昨日ご主人様はソラさん達の話を聞いていました。それで先にこの洞窟に来ることを決めたんです。誰も探索していない洞窟なら宝箱や鉱石がたくさんあるだろうと。
最近の白銀の獅子は依頼が上手くいかず資金難になっていたんです。だから洞窟で手に入ったものを売るつもりで」

そういえば最近ギルドで白銀の獅子を見ることはなかったな。たまに見かけても常に怒っているようだったし。まさか依頼失敗していたんだな。

「毒があるという情報もあったので毒消しは私以外の人数分持っていたんです。あの森も最初は毒なんてなくてこの洞窟の入口まで来ることが出来ました。
けれど洞窟に入った瞬間、奥から毒霧が襲いかかって来て、森を覆ってしまったんです。ご主人様達は毒霧を浴びて毒状態になったんですが、毒消しを使って毒を回復していました。
しかし毒消しを1つしか持っていなかったので、毒霧が蔓延している森の中では満足に歩くことも出来す、さらに毒状態になってしまい……」
「それで死んだってわけか」
「はい。私は体力がご主人様達よりもあったので、ソラさん達に会うまで耐えることが出来ました。その後はソラさん達に助けてもらいました。本当にありがとうございます」

先頭を歩いていたネルがこちらの方を向く。そのまま先程と同じように深々と頭を下げている。

「さっきも聞いたってば。もう大丈夫だから。ほら、早く行こう」

俺はネルの肩を掴んで前を向かせる。こう何度も感謝の言葉を伝えられるのは気恥しい。

洞窟を進んでいくとコウモリのような魔物-ブラバット-が多数いた。1匹1匹は強くないが多数で来られると分が悪い。しかし先頭にいるネルの風魔法で1匹残さず倒されていった。

「すごいな。全部首が綺麗に切られてる」
「魔法には自信があるんです。魔法属性にはないですが、初歩的な魔法だったら他属性の魔法でも使えるんですよ」

ハイエルフって魔法に関してはチートなんだな。もしかして俺の作った魔法を教えると使えるかもしれないな。もし機会があったら教えてみよう。

休憩も挟みつつ魔物を倒しながら奥へと進んでいく。迷わないよう休憩毎に探索を使い地形を把握し、紙に描いていく。手間だがこれにより1度通った道が分かるし、道に迷うことがなくなるのでやっておいて損は無い。

「これで終わりか?」

半日かけて洞窟内を全てへ探索する。地図も書いたし確認しながら歩いたので間違いないはずだ。隠し通路もなく、地下もない小さな洞窟だったようだ。

「みたいだな。今日はここで休んでから、明日鉱石と途中で見つけた宝箱を取っていくか」
「分かった。ネルもそれでいい?」
「私はソラさん達に従います」

ネルの言葉にソラは苦笑いを浮かべる。助けたのは事実だけど、こんな態度でこられるとどうしても恐縮してしまう。前世でも人の上に立ったことはないし、今世ではまだ12歳だ、もちろん人の上に立つことなんてなかった。だからこのような態度には慣れてないんだ。
探索途中で何度も対等にして欲しいと頼んだが「命の恩人と対等にするわけにはいけません」と頑なに拒否されてしまった。

「取り敢えず毒の沼は全部浄化したし、これ以上毒霧が発生することはないと思うけど」

洞窟の中には小さな毒沼が5つ、大きな毒沼が2つあった。毒沼の近くは毒霧が発生していたが清浄化をかけたタオルで吸い込むことは無かったし、沼に直接清浄化の魔法をかけることで毒沼は綺麗な湖へと変わってしまった。

「そうだな。キースさんに沼を清浄化した事を伝えとこう。明日はこことここの鉱石群に行きたいんだけど」

地図を見ながらライドが2つの場所を指さす。この2点は沢山の鉱石が埋まっており、それぞれ珍しいモノらしい。俺には違いが分からないが、鍛治職人のライドが必要なものと言うのなら必要なんだろう。幸いにも何日も洞窟で寝泊まりする予定で荷物を持ってきているからどれだけ時間がかかっても構わない。

「分かった。ところでネルは何してるの?」
「魔物よけです。結界みたいなもので魔物が寄ってこなくなります」

ネルは通路の方になにかお香のようなものをたいていた。どこに持っていたよか聞くと、アイテムボックスに入れていたとのこと。そういえばネルもアイテムボックス持ちだった。

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