転生先ではゆっくりと生きたい

ひつじ

文字の大きさ
74 / 78
旅立ち

23

しおりを挟む

次の日、俺たちは3人で街に出かけた。何処で聞かれているかも分からないので、セトの店で話すことにした。

「と、こちらが話した情報屋のセトです」
「なんでここにいるんだ?」
「だって誰に話聞かれてるか分からないし…。ここなら誰にも聞かれないだろ」
「ったく…使用料とるからな」
「ありがとう。セト」

案外推しには弱いのかな?文句を言いつつも了承してくれたセトにお礼を言いライドとネルに向き合う。ライドには昨日説明をしていたが、同じことをもう一度説明する。

「スパイですか…。まぁ有り得なくもない話ですね」

お、ライドとは違って驚かないところか納得してるんだけど。これが年の功ってやつなのかな?

「それでどうやってスパイを見つければいいのか考えてるんだ」
「……1つ提案があります。この方法を使えばスパイが見つかるでしょう」
「え?もう!?」

待って、考えるのはやくないか?

「昔似たようなことがあったので。作戦自体は簡単なものですが、公爵様にも確認を取らなければなりません。しかも他の方には絶対にバレてはいけません」

ネルの言葉に何度も頷く。ライドも頷いているようだ。俺たちが了承したのを確認したネルは作戦を話してくれた。







「なるほど。そんな手があったのか。早速次の仕事の時にクリスさんにバレないよう話してみるよ」
「公爵様を危険に晒してしまうかもしれませんが、これが1番確実だと思います」
「うん。ネルに相談して良かった」

まさかこんなにも早く解決策が見つかるとは思わなかったけど…。意気込んでいたのに少し拍子抜けだ。

「話は済んだか?」


話し合いの間席を外してくれていたセトが部屋に戻ってきた。ナイスタイミング過ぎて部屋に何か仕掛けてたんじゃないかと思うほどだ。

「うん。場所を貸してくれてありがとう」
「いいってことよ。それよりほらこれ」
「なに?」

セトは手に持っていた1枚の紙を俺渡す。受け取った紙には護衛隊の数名の名前が書いてあった。

「あの中でスパイじゃないかと疑っている奴らの名前だ。今のお前らに必要だろ?」

ニヤッと笑うセト。いや、だからななんで分かるんだよ…。絶対に俺たちの話聞いていただろ。
でもこのリストはありがたい。ネルのたてた作戦もスムーズにいくだろう。

「ありがとうセト。この情報にいくら払ったら良い?」
「あー要らねぇよ。その情報はまだ未完成だ。金なんてとれねぇよ」
「でも…」
「そんな中途半端な情報で金を取るなんて
情報屋としてのプライドが許さないからな」
「分かった。ありがとう」

ここで俺がいくら言ってもセトはお金を貰ってくれないだろう。ここは有難く情報を貰っておこう。

「お前らもう帰るんだろ?ならこれ持っていけよ」

昨日と同じように本を渡しくてくるセト。今日は3人だから3冊だ。
【明日に繋がる裁縫】【君も今日から腹筋マスター】【好きな人をオトす料理】とまた変な本達ばかりだ。

「なんでこんな本ばっかりなんだよ…」
「面白いだろ?この店の本は俺の趣味で集めてるものばかりだからな。面白い本が多いから今度見てみろ」
「今度ね…。場所貸してくれてありがと。また何かあったら情報聞きに来るから」
「おう。こっちも何か分かったら教えてやるよ。まぁその前にその姉ちゃんの作戦が成功しそうだけどな」

これは絶対に俺たちの話を聞いていたな。まぁセトが敵側でない限りバレても困らないんだけど…。でも情報を売る可能性もあるな。チラッとセトをみると指で口の前でバツを作っている。言わないということなのだろうか。

「ソラ行くぞー」
「う、うん。じゃあまた」
「おー。またな」

本をアイテムボックスに収納し先に行っていたライドとネルの傍に走っていく。店を出る際に探索をして先程セトに貰った紙の人物や、俺たちを監視している人がいないか確認する。どちらもいないので安心して店を出る。

「さて、まずはアレク様に伝えることだな。その後に作戦開始だ」

俺の言葉に2人とも頷く。俺は明日仕事だから作戦は明後日から開始だ。ネルの考えてくれた作戦ならばすぐにスパイが見つかるだろう。



次の日、俺はクリスさんにバレないようにアレク様にセトから買った情報とネルの作戦を伝えた。初めは驚いていたアレク様だが、スパイを捕まえるためだと快くひきうけてくれた。作戦としては明日の夜。ネルだけがアレク様付きの護衛だけど大丈夫だろう。アレク様と簡単に明日の流れを話し合ったあと俺は仕事に戻った。




次の日………。


月明かりの照らす庭園に、アレクは1人たっていた。いつもならいる護衛も今はいない。アレクが着いてこなくていいいと命令したのだ。
今は庭園の入口で侵入者がいないか見張っている。

「誰も来て欲しくないと思っていたがそうはいかなかったみたいだな」

アレク以外誰もいなかったはずの庭園に真っ黒の服を着た人物が立っていた。手には小型ナイフを持っている。侵入者にはすぐ対応出来るように入口の2人は注意深くなっていたがそこをくぐり抜けたらしい。

「こちらも仕事なんだ。恨むなよ」

侵入者がアレクに向かって走り持っていた小型ナイフを振り上げる。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

魔法学校の落ちこぼれ

梨香
ファンタジー
昔、偉大な魔法使いがいた。シラス王国の危機に突然現れて、強力な魔法で国を救った。アシュレイという青年は国王の懇願で十数年を首都で過ごしたが、忽然と姿を消した。数人の弟子が、残された魔法書を基にアシュレイ魔法学校を創立した。それから300年後、貧しい農村の少年フィンは、税金が払えず家を追い出されそうになる。フィンはアシュレイ魔法学校の入学試験の巡回が来るのを知る。「魔法学校に入学できたら、家族は家を追い出されない」魔法使いの素質のある子供を発掘しようと、マキシム王は魔法学校に入学した生徒の家族には免税特権を与えていたのだ。フィンは一か八かで受験する。ギリギリの成績で合格したフィンは「落ちこぼれ」と一部の貴族から馬鹿にされる。  しかし、何人か友人もできて、頑張って魔法学校で勉強に励む。 『落ちこぼれ』と馬鹿にされていたフィンの成長物語です。  

魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡

サクラ近衛将監
ファンタジー
 女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。  シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。  シルヴィの将来や如何に?  毎週木曜日午後10時に投稿予定です。

司書ですが、何か?

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 16歳の小さな司書ヴィルマが、王侯貴族が通う王立魔導学院付属図書館で仲間と一緒に仕事を頑張るお話です。  ほのぼの日常系と思わせつつ、ちょこちょこドラマティックなことも起こります。ロマンスはふんわり。

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む

家具屋ふふみに
ファンタジー
 この世界には魔法が存在する。  そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。  その属性は主に6つ。  火・水・風・土・雷・そして……無。    クーリアは伯爵令嬢として生まれた。  貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。  そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。    無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。  その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。      だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。    そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。    これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。  そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。 設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m ※←このマークがある話は大体一人称。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅

散歩道 猫ノ子
ファンタジー
捨てられてしまった2匹の神獣と育む異世界育成ファンタジー 2匹のねこのこを育む、ほのぼの育成異世界生活です。 人間の汚さを知る主人公が、動物のように純粋で無垢な女の子2人に振り回されつつ、振り回すそんな物語です。 主人公は最強ですが、基本的に最強しませんのでご了承くださいm(*_ _)m

処理中です...