122 / 182
3章
外壁計画と割り込み
しおりを挟む魚屋《ヒジカタ》の閉店時間。
3階の事務所の長椅子に座り、俺はエースと遅れて帰宅したハヤテと一緒に、キキン茶を啜っているよ。
「売りたがらない大地主か……」
外壁建設予定地付近の土地を持つ大地主は、土地を手放すのが嫌で、どうせ売るなら少しでも高く売りたがる――。
あたり前だけどね。
前任者ピンソンは、悪どい手法(脅迫、暴行、それでもダメなら暗殺)で土地を地主から奪ったらしいけど、
アハートさんは真っ当な交渉なので、アハートさん自身が買い上げたのは、現在ゼロ。
買い取り予定地をあと8分の7も残し、ビンソンの時以上にプロジェクトは進んでいない。
「一週間後、外区外壁の建設発表を行うそうです」
「へー、大胆だなあ。土地の確保はまだなんだろ?」
「……はい。アハートさんは反対したのですが、広報が強引に」
「具体的な場所は出せないよなあ。まだ地主から買い取ってないんだから。イメージだけだろうね」
「たぶん……」
「建設発表して、もし計画が頓挫したら……、そうでなくとも、建設完了予定より大幅に遅れたら……、責任は全部アハートさんになる。大丈夫だろうか」
「わかりません……」
◆
「ヒジカタ! 国王の命令であるぞ!」
翌日のお昼どき。
1階魚屋店舗の前から、昨日以上になが~い列が出来ていた。
「聞こえないのか、ヒジカタよ!」
「はいはい、ちゃんと聞こえてますって。うなぎの蒲串30ですよね」
行列の2人に1人は昨日買ってくれたお客さんだよ。
美味しかったんだろうね。また買いに来てくれたんだ。
おかげで、準備していた蒲串800が3時間で売れ切れてしまい、昨日同様に、『焼き』が『売れ』に間に合わない状態。
「急いでおるぞ。その焼き上がった串を早く我らによこせ」
たくさん並べた蒲串が良い匂いをさせる焼台の前、
城内勤務者特有のシーグリーン色の軍服兵2名が、行列の先頭に割り込んできたよ。
蒲焼きの噂を耳にしたキキン国王が、部下を買いに寄こしたわけだ。
列のお客さんたちが、嫌な顔をするけど黙っている。
まあ、文句が言えるわけないよね。
相手は兵士だし。
仕方が無いなあ、俺がビシッと言ってやるかな。
「あのですね~。悪いけど、後ろに並んでくれない?」
「……だ、誰に言っておる?!」
「目の前の兵隊さんだけど」
「わ、我らに、……う、後ろだとッ?!」
「そうそう。みんな並んで順番に買ってるんだから、2人も列に並んでね。最後尾は……えーと……」
見えないなあ。
「並べるかっ! 国王が待っておられるんだぞ!」
「うちのお客さんも待ってるんだけど。
それに、割り込んで蒲焼きを買ったと国王が知ったらどうなんだろう」
「むぐぐぐぐ」
「蒲焼きは買っても、国民の不満は買わないほうが良いと思うよ」
後ろの方で「うまい!」と誰かが言ったよ。
「誰だ! 今笑ったのはッ!!」
「はいはい。買わないなら、商売の邪魔しないでね~」
「き、きさま……、我らは国王の命令で来たのだぞ!」
「知ってますよ。蒲串を買って来いって言われたわけでしょ?
でも、行列に割り込んで買って来いとは言ってないでしょ?
そういう事。
だからね、ほら、早く列に並ばないと、どんどん買うのが遅くなるよ」
キキン兵がブツブツ言いながら、列を辿って後ろへ向かったね。
「やれやれ」
◆
うなぎ蒲焼きの結果。
前日を上回る2000尾が売れたね。
ベーゼ蒲焼きも好調だったんだけど、在庫が乏しくなってきたので販売中止。
貴重なベーゼだから売らなきゃよかったかも。
他にも、穴子の蒲焼き丼が150パック。
炊きたてご飯が250パック売れたね。
日本米のアピールにもなったし、来週から2階の寿司屋キャンディーズのメニューにうな丼と穴子丼を加えよう。
しかし、この調子で売れ続けると、うなぎ3万尾の在庫が半月で底を突くぞ。
それに、蒲焼きの売れ行きを知った同業者がパクリだすだろうから、うなぎの引き合い(市場でうなぎが売れ始めて価格上昇)が強くなるだろうね。
キキン魚市場だけじゃ需要に追いつかなくなる。
アゼン国、ロアロク国、ケズカラ国の魚市場にも買い出しに行ってみるかな。
あちこちの漁師に、うなぎを獲るよう依頼もしたほうが良いだろうね。
うなぎの焼台を4台に増やし、
2階の寿司店舗から2名、1階の魚屋から2名抜いて蒲焼き専属のスタッフにしたよ。
リーダーにランちゃんを抜擢し、ドルンくんを加えた6名を蒲焼きチームとしたね。
「美味しそう」
「きゅーきゅー」
ランちゃんが、うなぎを焼きながら、食べなきゃいいけど。
10
あなたにおすすめの小説
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件
さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ!
食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。
侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。
「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」
気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。
いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。
料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!
~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる
静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】
【複数サイトでランキング入り】
追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語
主人公フライ。
仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。
フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。
外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。
しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。
そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。
「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」
最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。
仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。
そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。
そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。
一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。
イラスト 卯月凪沙様より
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~
みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった!
無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。
追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる