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3章
城へ
しおりを挟む今日は週に一度の定休日。
SSたちは人間レベルの労働では全然疲労しないけど、他のスタッフは普通の人間なので、
朝食をとった後も部屋でごろごろしている。
サキュバットのポラリスくんも自分の部屋で、ぶら下がり睡眠中。
ハードな仕事だもんねえ。無理もない。
SSのランちゃん、ミキちゃん、スーちゃん、ジン、と俺は、2階の寿司厨房でうな丼と穴子丼の試作品を作っていた。
「誰か来たみたい」
突然、ランちゃんが気配を感じたみたい。
スライム全員同じ。
「ぐるるるる……」
青ちゃんが唸り声を上げ、辺りを気にし始める。
少しして1階の閉まったドアがノックされので、降りて開けると昨日の城内勤務のキキン兵だった。
「あの……定休日に申し訳ないのですが……」
丁寧にお辞儀までしたよ。
「どうしたんです?」
「それが……」
国王が今度はうな丼が食べたいとの事。
「そうなんだ」
今日は定休日だから、と断るわけにもいかないよ。
国王は俺の刺し身も寿司も、気に入ってくれるファンだし。
「蒲焼きの実演もするわけ?」
「国王がぜひ見たいと」
「はあ~」
最近国王は、ほいほい外区に出てこなくなったよ。
国王に限らず、位の高い公人もね。
外区でまれに見かける時があるけど、兵に厳重に守られていたよ。
2ヶ月前に起きた魔法使いによる、アハート殺害未遂事件が大きく影響しているね。
そもそも魔法は訓練で修得はできない。
生まれながら持つ能力で、幼年期に現れたり年老いて備わったり、いつ魔法が使えるようになるかは個人差がある。
魔法スキルが備わる確率は、一万人に1人とも五万人に1人とも言われ、
このキキン国生まれの魔法使いは現在わずか10名、全て名衛軍に加入している。
つまりアハート事件は、外国人魔法使いの犯行。
今までは、外国人魔法使いが内区に入るおりは申請が義務付けられ、
申請無しで内区入りした場合、重い罰則を科せていた。
もちろんデーモン眼スキルを持つ兵が外区と内区をパトロールし、デーモンを発見次第、召喚した魔法使いを逮捕。
それでじゅうぶんだった。
ところが、アハートさんを襲った外国人魔法使いは申請無しで入国し、デーモン眼スキルを持つ兵の眼をすり抜け、外区内区で犯行に及んでいた。
しかも人数が多い。
申請無し入国魔法使いの多さに、ビビったわけね。
だから国王はもちろん貴族のお偉いさんも、外区を出歩かない。
国王が、じっと城にこもったままなのは辛いだろうな。
庶民の流行り、新商品(うなぎの蒲焼き)に興味があるのはわかる。
本当なら俺の新店に直接来たいんだろうね。
「わかりましたよ。
お昼前にお伺いしますと、国王にお伝え下さい」
「あ、ありがとうございますッ!」
兵士たちが喜んで帰城したね。
生うなぎ50尾とアツアツご飯をうなぎの屋台に入れ、
どうしても付いていくと言い張るランちゃんも連れて、キキン城に行くことにした。
「きゅーきゅー」
青ちゃんも来るの?
「きゅー」
青ちゃんがぴょんぴょん跳ねる。
大丈夫かなあ。
応援ありがとうございます!
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