127 / 182
3章
売買成立
しおりを挟む
『これで絶対満足するわ。しなければおかしい。ありがとう、ヒジカタさん』
『い、いや……そんな……』
アハートさんが、後ろに組んでいた俺の手を解き握手をしているよ。
異種間心話(ナイショ話だね。何処でも良い、他人の身体に触れると、触れた相手と心の中で会話ができる俺だけの能力)だけど、
コツさえ掴めば、相手から一方的に俺の心へ話しかける事ができるよ。
正直、あまり嬉しいものじゃない。
むしろやめて欲しい。
今のアハートさんもそうだけど、いきなり心の中へ入って来られ、それまでの思考が吹っ飛ぶから。
言い方は悪いが《ドッキリ》に近いね。
後ろから『わっ!』と脅かされたのと変わらない。
1番嫌なのは女性に触られ、別の意味でドキドキしちゃう事も、ちゃんとアハートさんに伝わってしまう事。
女性免疫ほぼゼロの35歳おっさんの心の揺らぎがバレバレになっちゃう。
ヒトミさんが心眼で敵の心を読み取り、俺の手を握り心話で伝える――、
何度も握手している俺たちを見て、アハートさんも真似しはじめたわけ。
最初は重要な話しだけだったのに、今では小声で話せばいいことまで、わざわざ心話で伝える。
今もいたずらめいた顔のアハートさんから愉楽の感情が流れ込むから、俺の狼狽ぶりが楽しいんだろうね。
『私の思惑通りになるわ』
『よかったですね』
『でも、あの気持ち悪いうなぎを、こんな美味しくさせるなんて、凄いわ』
だらだらと心話してくるぞ。
そろそろ手を離してくれないかなあ。
『だらだらで悪かったわね。
まだ手は離さないから』
手を握ったまま、迂闊に愚痴はこぼせないんだったね。
『そうよ。だから、分かるでしょ。私の気持ちも』
不思議な事を言い出したアハートさんは、俺が気持ちを読み取ろうとする前に、手を離しニコッとしたよ。
「やっぱり、読ませてあげない」
はあ?
踵を返したアハートさんは、声を高くして皆に話し始めたよ。
「皆さん。如何でしたでしょうか?」
ざわざわする人々。
「この、うなぎの蒲焼……。
登場したのは、たった2日前です。
しかしながら、濃厚で深い味わいは外区の民に好評で、長い行列ができるほどです。
新しいキキンの名物となると思い、カタリヤさんに食べてもらいました。いかがでしたでしょうか?」
カタリヤさんに返事はない。
口に残った蒲焼きの味を思い返しているのかな。
やがて――。
「お、美味しかったわ……」
怒ったように言い捨てたよ。
「良かった。
満足してもらえたみたいで」
「……美味しかったけど……」
奥歯を噛み締め、俺を睨みつける。
「な、なにか……?」
「……お、……おかわり頂戴っ!」
あ~、
なんだ。
「それと、早く広めなさい、この蒲焼きっ!」
◆
カタリヤさんの土地を買えたよ。
だけど。
「この場所って……」
外壁建設予定地より2~5キロも奥ばかり、しかも小さなハゲ山も加わっていた。
外区の繁華街辺りは売らないとしても、建設予定地近くも売らないんだ。
「誰が全部売ると言ったかしら?
どこを売るかは、私の勝手でしょ!」
建設完了すれば、壁に囲まれた土地は地価が上がる。
どれだけ上がるかは、欲しがる人・需要度に比例するけど、とにかく、
モンスターの被害がありながら、それでも経済が活発なキキン国だから、外壁完成後は、壁内の土地は爆上昇するだろうね。
わざわざ、底値の今売る馬鹿はいないって理由(わけ)だね。
「そりゃまあ、そうだけど……」
でもなあ~。
予定地じゃない土地(ハゲ山など)を買っても使い道がないよ。
地図でも分かるように、ハゲ山から15キロ奥地は、モンスターが巣食う渓谷があり、さらにその向こうは俺の生まれた北山がそびえている。
「いえ、買わせていただきます、カタリヤさん」
意外だろ。
いいのか国王さん、黙ってて。
俺を制したアハートさんは、契約書に自分のサインをし捺印、それからキキン国の受領印を押した。
◆
持ち込んだうなぎは綺麗になくなり、満足した公人たちは城内に戻って行ったね。
芸人たちは演技を開始し、国王も客席につく。
片付けを始めた俺たちに、アハートさんが近寄る。
「お話しあります、ヒジカタさん」
そういやいつの間にか、ヒジカタさまから、ヒジカタさんに呼び方が変わったよね。
いいけど。
「はあ……、いや、俺も訊きたい事があったから」
「何故無意味な土地を買ったか――、ですね」
外壁建設予定地の購入は絶対無理だとアハートさんは言う。
「ビンソンと同じ手口を使えば別ですが……、するつもりはありません。
それで、提案しました国王に。
予定地より外の区域購入を――」
「……」
「外側は荒れ果てていて、モンスターの出現率も高く、使い道がないので売り手はいます。
なので、密かに予定地より2~10キロ先の土地をあえて購入しています」
「いや、分かるけど、なんで?」
「……非公開です。ヒジカタさん。
外壁をもう2~10キロ外側に建設します」
「……あ」
土地が確保できないなら、確保出来る場所に壁を建てるわけだね。
「父の計画を、最初から全部組み直すわけで、躊躇ったのですが」
予算計画もゼロからだ。
いや、土地を買ってから、壁の場所決めをして予算を出すわけか。
逆だね。
よく国王が賛成したなあ。
それだけ、実現したかったわけか、この計画を。
「ただし、キキン国が購入したとは明かしません。
この計画を知るのは、王と私たちだけ」
バレると、地主が警戒するからだね。
「あくまで購入者は民間業者か、他国の貴族として。購入目的も、放牧、開墾用」
土地登記も偽名で登録すれば問題ない。
(ズルだけど、まあ、これくらいはOKだよね)
あ~、そうか!
エースとハヤテが顔を変え、民間業者や他国の貴族になりすまし、地主と交渉したわけね。
「今でも、当初予定地の買い取り行為は進めています。ダミーですけど」
「なるほど。
あくまで、なかなか土地を買えない国を装っているわけね」
1ヶ月前から着々と土地購入は進んでいて、今日のカタリヤの土地を加えると8割以上完了になると言う。
「流石です」
ちょっと嬉しそうなアハートさん。
「そこで、これを見てください」
バッと広げられたキキン国の地図には、購入済みの土地が赤色で示してあった。
アハートさんが、今日契約した部分を書き加える。
起伏を意味する等高線上がほとんど、つまり山の傾斜面。
これだと万里の長城みたいな、山に建った外壁になるなあ。
「問題は、この標高3000メートルの高山です」
「カタリヤさんのハゲ山かあ」
「はい。このままでは、横断する形で壁を建てないといけない」
富士山とほぼ同じ。
手強いぞ。
「かと言ってキキンよりに迂回して建てると未購入の区域にかかり、北山側に迂回すると渓谷に入るわ」
「むむむむ……」
詰んでる。
買っちゃダメな物件じゃないの。
「そこで、ヒジカタさんにお願いがあります」
俺に何ができるだろうか。
「この山を消して欲しいのです」
「はい? はいはい?」
山って聞こえたぞ。
「……えっと……もう一度」
「良いですよ。
先ほど購入手続きを済ませた、標高3000メートルの山を1つ消して下さらない?」
「消す……」
「取り敢えず1つだけで結構ですわ」
「取り敢えずもなにも、……等高線上の土地全部を?」
「ええ、他は後からで良いので、まずはあの山を消し、さら地にして欲しいのです」
さら地って……。
そうか、だから、俺にさら地化させるつもりで、ほいほい斜面の土地を購入したんだ。
一言、欲しかったなあ。
神さまじゃないんだけど、俺。
「どうやって消すわけ?」
「魔法でパッと消せないのですか」
「いやあ~」
簡単に言うよねえ。
「丸焦げで、死ぬ寸前だった私を、ヒジカタさんが救ってくださったわ」
だからって、山を消せるかどうかは分からない。
「飛べば大気圏の突破もでき、私の肌もすべすべに」
山を消すのに関係無い能力だけど。
「どんな物でも入る四次元ポケットを持っていますし……」
どんどん関係なくなるよ。
ドラえもんは好きだけど。
「それに、美味しいうなぎの蒲焼きまで」
とりあえず、何でも言っちゃってるわけね。
「なんとかなると思うのですが……」
肩を落とし、俯いてしまったアハートさん。
「困ったわ。もう買ってしまったし」
俺の顔をチラチラ見て、大きなため息をひとつ。
「どうしたら、いいのかしら。
このままだと、標高3000メートルの山に壁を建設しないといけなくなるわ。
国家予算を大幅に越え、完了までいったい何年かかるのかしら……」
クフ王のピラミットだったかな、建設に100年以上かかったらしい。
今回はそれ以上だろう。
「う~~ん。ちょっと、試してみますか……」
「できるのですねッ!」
「いや、まだでき「ありがとうございますっ!! ヒジカタさん!!」
聞いちゃくれないのね。
まあ、できるはずないと決めつけている俺も悪いわけで、
山を消すには――。
富士山レベルの山を消し去るには――。
試しに強く念じてみると、意外にもテロップが流れはじめたよ。
~ スクロペトゥム・スペーニェレ ~
~ ルス トゥルエノ アパガル ~
~ ジャーマ・フシール・エタンドル ~
~ ブロンデー スキアー・アオスマッヘン ~
~ プロクス・クリュスタッロス・スウィッチオフ ~
・
・
・
・
一応できちゃうんだ。
凄いな俺。
可能な技名が続々流れるけど、ネーミングだけじゃ意味がさっぱり分からない。
そう思ったら、テロップが増え、1語づつ詳しい説明が始まった。
ビームや熱で焼き消す系、風や衝撃で吹き飛ばす系などいろいろあるけど、
熱でも衝撃でもない、亜空間に移動させる消去系の最強技を試してみる。
パグローム・ツアンサ・アオスマッヘン
舌噛んじゃうよ。
声に出さず、強く思うだけでも技が発動すみたい。良かったー。
地図で消す位置をよく確認してから。
「念のために聞くけど、今から山を消していいわけ?」
「はい。できれば」
「まさか人間はいないよね」
登山中の人間ごと消したら大変だよ。
「立ち入り禁止区域です。放牧もしていません。
モンスターの巣が多く、危険で誰も近寄りませんから」
「そうか、分かった」
焼台を引っ張って高い木々の陰に入り、人気がないのを確認してから、焼台を収納庫に収める。
ランちゃんには、青ちゃんを連れて店に帰るよう言ったよ。
「今から向かうのですね」
「そのつもりだけど」
「私もご一緒してもよろしいですか。
間違って違う山を消してはいけないですし」
「いいけど……どうやって」
お姫様抱っこを希望したよ。
でもジャンプ飛行は強いG(重力加速度)がかかる。
「やめたほうが良いと思う。ヒトミさんも気絶したし」
「私はヒトミさんとは違いますから」
「いやあ~、もし、アハートさんに何かあったら、ロアンくんに申し訳が立たないし」
「ロアンとは、もう何でもありません。ただの友人、いえ、同じキキン住人と言うだけですから」
ちょっと怒ってるみたい。
別れたってこと?
どんな経緯があったのか知らないけど。
「だから、はい。どうぞ! 同じ細胞を共有した私たちですので、遠慮なく」
まるでシャル・ウイ・ダンス。
俺の手を取り、密着してきたぞ。
「はあ……」
意味が分からないなあ。
『い、いや……そんな……』
アハートさんが、後ろに組んでいた俺の手を解き握手をしているよ。
異種間心話(ナイショ話だね。何処でも良い、他人の身体に触れると、触れた相手と心の中で会話ができる俺だけの能力)だけど、
コツさえ掴めば、相手から一方的に俺の心へ話しかける事ができるよ。
正直、あまり嬉しいものじゃない。
むしろやめて欲しい。
今のアハートさんもそうだけど、いきなり心の中へ入って来られ、それまでの思考が吹っ飛ぶから。
言い方は悪いが《ドッキリ》に近いね。
後ろから『わっ!』と脅かされたのと変わらない。
1番嫌なのは女性に触られ、別の意味でドキドキしちゃう事も、ちゃんとアハートさんに伝わってしまう事。
女性免疫ほぼゼロの35歳おっさんの心の揺らぎがバレバレになっちゃう。
ヒトミさんが心眼で敵の心を読み取り、俺の手を握り心話で伝える――、
何度も握手している俺たちを見て、アハートさんも真似しはじめたわけ。
最初は重要な話しだけだったのに、今では小声で話せばいいことまで、わざわざ心話で伝える。
今もいたずらめいた顔のアハートさんから愉楽の感情が流れ込むから、俺の狼狽ぶりが楽しいんだろうね。
『私の思惑通りになるわ』
『よかったですね』
『でも、あの気持ち悪いうなぎを、こんな美味しくさせるなんて、凄いわ』
だらだらと心話してくるぞ。
そろそろ手を離してくれないかなあ。
『だらだらで悪かったわね。
まだ手は離さないから』
手を握ったまま、迂闊に愚痴はこぼせないんだったね。
『そうよ。だから、分かるでしょ。私の気持ちも』
不思議な事を言い出したアハートさんは、俺が気持ちを読み取ろうとする前に、手を離しニコッとしたよ。
「やっぱり、読ませてあげない」
はあ?
踵を返したアハートさんは、声を高くして皆に話し始めたよ。
「皆さん。如何でしたでしょうか?」
ざわざわする人々。
「この、うなぎの蒲焼……。
登場したのは、たった2日前です。
しかしながら、濃厚で深い味わいは外区の民に好評で、長い行列ができるほどです。
新しいキキンの名物となると思い、カタリヤさんに食べてもらいました。いかがでしたでしょうか?」
カタリヤさんに返事はない。
口に残った蒲焼きの味を思い返しているのかな。
やがて――。
「お、美味しかったわ……」
怒ったように言い捨てたよ。
「良かった。
満足してもらえたみたいで」
「……美味しかったけど……」
奥歯を噛み締め、俺を睨みつける。
「な、なにか……?」
「……お、……おかわり頂戴っ!」
あ~、
なんだ。
「それと、早く広めなさい、この蒲焼きっ!」
◆
カタリヤさんの土地を買えたよ。
だけど。
「この場所って……」
外壁建設予定地より2~5キロも奥ばかり、しかも小さなハゲ山も加わっていた。
外区の繁華街辺りは売らないとしても、建設予定地近くも売らないんだ。
「誰が全部売ると言ったかしら?
どこを売るかは、私の勝手でしょ!」
建設完了すれば、壁に囲まれた土地は地価が上がる。
どれだけ上がるかは、欲しがる人・需要度に比例するけど、とにかく、
モンスターの被害がありながら、それでも経済が活発なキキン国だから、外壁完成後は、壁内の土地は爆上昇するだろうね。
わざわざ、底値の今売る馬鹿はいないって理由(わけ)だね。
「そりゃまあ、そうだけど……」
でもなあ~。
予定地じゃない土地(ハゲ山など)を買っても使い道がないよ。
地図でも分かるように、ハゲ山から15キロ奥地は、モンスターが巣食う渓谷があり、さらにその向こうは俺の生まれた北山がそびえている。
「いえ、買わせていただきます、カタリヤさん」
意外だろ。
いいのか国王さん、黙ってて。
俺を制したアハートさんは、契約書に自分のサインをし捺印、それからキキン国の受領印を押した。
◆
持ち込んだうなぎは綺麗になくなり、満足した公人たちは城内に戻って行ったね。
芸人たちは演技を開始し、国王も客席につく。
片付けを始めた俺たちに、アハートさんが近寄る。
「お話しあります、ヒジカタさん」
そういやいつの間にか、ヒジカタさまから、ヒジカタさんに呼び方が変わったよね。
いいけど。
「はあ……、いや、俺も訊きたい事があったから」
「何故無意味な土地を買ったか――、ですね」
外壁建設予定地の購入は絶対無理だとアハートさんは言う。
「ビンソンと同じ手口を使えば別ですが……、するつもりはありません。
それで、提案しました国王に。
予定地より外の区域購入を――」
「……」
「外側は荒れ果てていて、モンスターの出現率も高く、使い道がないので売り手はいます。
なので、密かに予定地より2~10キロ先の土地をあえて購入しています」
「いや、分かるけど、なんで?」
「……非公開です。ヒジカタさん。
外壁をもう2~10キロ外側に建設します」
「……あ」
土地が確保できないなら、確保出来る場所に壁を建てるわけだね。
「父の計画を、最初から全部組み直すわけで、躊躇ったのですが」
予算計画もゼロからだ。
いや、土地を買ってから、壁の場所決めをして予算を出すわけか。
逆だね。
よく国王が賛成したなあ。
それだけ、実現したかったわけか、この計画を。
「ただし、キキン国が購入したとは明かしません。
この計画を知るのは、王と私たちだけ」
バレると、地主が警戒するからだね。
「あくまで購入者は民間業者か、他国の貴族として。購入目的も、放牧、開墾用」
土地登記も偽名で登録すれば問題ない。
(ズルだけど、まあ、これくらいはOKだよね)
あ~、そうか!
エースとハヤテが顔を変え、民間業者や他国の貴族になりすまし、地主と交渉したわけね。
「今でも、当初予定地の買い取り行為は進めています。ダミーですけど」
「なるほど。
あくまで、なかなか土地を買えない国を装っているわけね」
1ヶ月前から着々と土地購入は進んでいて、今日のカタリヤの土地を加えると8割以上完了になると言う。
「流石です」
ちょっと嬉しそうなアハートさん。
「そこで、これを見てください」
バッと広げられたキキン国の地図には、購入済みの土地が赤色で示してあった。
アハートさんが、今日契約した部分を書き加える。
起伏を意味する等高線上がほとんど、つまり山の傾斜面。
これだと万里の長城みたいな、山に建った外壁になるなあ。
「問題は、この標高3000メートルの高山です」
「カタリヤさんのハゲ山かあ」
「はい。このままでは、横断する形で壁を建てないといけない」
富士山とほぼ同じ。
手強いぞ。
「かと言ってキキンよりに迂回して建てると未購入の区域にかかり、北山側に迂回すると渓谷に入るわ」
「むむむむ……」
詰んでる。
買っちゃダメな物件じゃないの。
「そこで、ヒジカタさんにお願いがあります」
俺に何ができるだろうか。
「この山を消して欲しいのです」
「はい? はいはい?」
山って聞こえたぞ。
「……えっと……もう一度」
「良いですよ。
先ほど購入手続きを済ませた、標高3000メートルの山を1つ消して下さらない?」
「消す……」
「取り敢えず1つだけで結構ですわ」
「取り敢えずもなにも、……等高線上の土地全部を?」
「ええ、他は後からで良いので、まずはあの山を消し、さら地にして欲しいのです」
さら地って……。
そうか、だから、俺にさら地化させるつもりで、ほいほい斜面の土地を購入したんだ。
一言、欲しかったなあ。
神さまじゃないんだけど、俺。
「どうやって消すわけ?」
「魔法でパッと消せないのですか」
「いやあ~」
簡単に言うよねえ。
「丸焦げで、死ぬ寸前だった私を、ヒジカタさんが救ってくださったわ」
だからって、山を消せるかどうかは分からない。
「飛べば大気圏の突破もでき、私の肌もすべすべに」
山を消すのに関係無い能力だけど。
「どんな物でも入る四次元ポケットを持っていますし……」
どんどん関係なくなるよ。
ドラえもんは好きだけど。
「それに、美味しいうなぎの蒲焼きまで」
とりあえず、何でも言っちゃってるわけね。
「なんとかなると思うのですが……」
肩を落とし、俯いてしまったアハートさん。
「困ったわ。もう買ってしまったし」
俺の顔をチラチラ見て、大きなため息をひとつ。
「どうしたら、いいのかしら。
このままだと、標高3000メートルの山に壁を建設しないといけなくなるわ。
国家予算を大幅に越え、完了までいったい何年かかるのかしら……」
クフ王のピラミットだったかな、建設に100年以上かかったらしい。
今回はそれ以上だろう。
「う~~ん。ちょっと、試してみますか……」
「できるのですねッ!」
「いや、まだでき「ありがとうございますっ!! ヒジカタさん!!」
聞いちゃくれないのね。
まあ、できるはずないと決めつけている俺も悪いわけで、
山を消すには――。
富士山レベルの山を消し去るには――。
試しに強く念じてみると、意外にもテロップが流れはじめたよ。
~ スクロペトゥム・スペーニェレ ~
~ ルス トゥルエノ アパガル ~
~ ジャーマ・フシール・エタンドル ~
~ ブロンデー スキアー・アオスマッヘン ~
~ プロクス・クリュスタッロス・スウィッチオフ ~
・
・
・
・
一応できちゃうんだ。
凄いな俺。
可能な技名が続々流れるけど、ネーミングだけじゃ意味がさっぱり分からない。
そう思ったら、テロップが増え、1語づつ詳しい説明が始まった。
ビームや熱で焼き消す系、風や衝撃で吹き飛ばす系などいろいろあるけど、
熱でも衝撃でもない、亜空間に移動させる消去系の最強技を試してみる。
パグローム・ツアンサ・アオスマッヘン
舌噛んじゃうよ。
声に出さず、強く思うだけでも技が発動すみたい。良かったー。
地図で消す位置をよく確認してから。
「念のために聞くけど、今から山を消していいわけ?」
「はい。できれば」
「まさか人間はいないよね」
登山中の人間ごと消したら大変だよ。
「立ち入り禁止区域です。放牧もしていません。
モンスターの巣が多く、危険で誰も近寄りませんから」
「そうか、分かった」
焼台を引っ張って高い木々の陰に入り、人気がないのを確認してから、焼台を収納庫に収める。
ランちゃんには、青ちゃんを連れて店に帰るよう言ったよ。
「今から向かうのですね」
「そのつもりだけど」
「私もご一緒してもよろしいですか。
間違って違う山を消してはいけないですし」
「いいけど……どうやって」
お姫様抱っこを希望したよ。
でもジャンプ飛行は強いG(重力加速度)がかかる。
「やめたほうが良いと思う。ヒトミさんも気絶したし」
「私はヒトミさんとは違いますから」
「いやあ~、もし、アハートさんに何かあったら、ロアンくんに申し訳が立たないし」
「ロアンとは、もう何でもありません。ただの友人、いえ、同じキキン住人と言うだけですから」
ちょっと怒ってるみたい。
別れたってこと?
どんな経緯があったのか知らないけど。
「だから、はい。どうぞ! 同じ細胞を共有した私たちですので、遠慮なく」
まるでシャル・ウイ・ダンス。
俺の手を取り、密着してきたぞ。
「はあ……」
意味が分からないなあ。
10
あなたにおすすめの小説
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件
さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ!
食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。
侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。
「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」
気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。
いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。
料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる
静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】
【複数サイトでランキング入り】
追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語
主人公フライ。
仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。
フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。
外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。
しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。
そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。
「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」
最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。
仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。
そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。
そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。
一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。
イラスト 卯月凪沙様より
スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~
みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった!
無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。
追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる