SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)

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3章

脱出

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 終わるのは、彼らが戦いに飽きた時。
 終わるとは、俺たちが死んでも、天使の輪を注がなくなった時。

 そうだろう。
 たぶん、そうに違いない。
 
 俺らは、エインシェントの練習相手みたいなもの。
 この戦いは、ボクシングで言うところのスパーリングだし、
 この部屋は、ボクシングのリングだよ。

 エインシェントも疲れれば、戦いをやめるはず。
 睡眠や食事だってとるはず。
 自分らが戦わなくなったら、練習相手だった俺たちに休息を――なんて、
 豪華ホテル宿泊、なんて、お客さま待遇するわけないよね。
 復活光線を止め、俺たちを皆殺しにして終了。そう思ってるだろうよ。 
 
 逃げようかな。
 逃げるなら今直ぐが良いかも。
 俺のレベルが30に成る前に。

 それらしき、逃げ道は6つの廊下だけ。
 ここに来た廊下を逆に戻って出れれば良いんだけど……。

 さっきみたいに、それぞれ分裂個体を進ませ判断するしかない、か。
 ただ、そんな暇があるかな。
 
「コラコラ、元気がないぞ、スラちゃんたち! せっかく、そっちのボスが到着たのに」
「期待してんだから、しんみりすんなよ! ヘヘヘッヘ」

 舐めてるなあ。
 俺たちを。

 浮かぶヤツらのステータス表にも『ステータス確認』とある。
 俺の数値が自分より高いのを知りながら、よく言うよ。

 どうせ、死んでも生き返る安心感。天使光線があるからだろうけど、それでも、切られれば痛いし、苦しい。
 ひと思いに死ねればいいけど、激痛がいつまでも続くと最悪だよ。
 どんだけ、戦い好きなんだよ。
 ヤツらは痛点が無いとか、鈍いとか?

 まあ良い。
 それなら、そうで。

「つまんねえ。ビビっちまったのか?」
「さあ~、かかって来いよ、ゼロ階層のボス。引っ込んでないで、強さを見せてくれ」

『あんな事、言ってますよ、お父さん』(ヒソヒソ)
『う~ん……』
『腹が立つ! やっつけちゃってよ、ヒジカタ』
『気持ちは分かるよ、気持ちは』

 倒すだけなら、難しくはない。
 幸いツェーン迷宮最強ボス・SSSレア・エインシェントが、この場に居ないし。
 居るのは、全て2S以下が10匹。

 俺1人で……、
 ……2秒……、……いや、1秒もあれば……、
 可能だと思う。

 死者を復活させる天使の輪は、たぶん目前の戦闘オタクが、念動力とか、そんな見えない何かで照射しているだろう。
 だから、今ここに居る2S以下エインシェント10匹を同時に屠れば、天使は動かず復活はできない。

 その間に遺跡を脱出する――。
  
 いい考えだけど、
 ただ、2S級エインシェントを10匹も倒して得る経験値はどれほどだろうか。
 俺が29レベを通り越し、30レベに成ったら、SSたちだけで迷いの遺跡を出れるか?
 出たとして、地上に戻れるだろうか……。

 両眼を左右に移動させ、マイナス発想を打ち消した。
 いや、考えても無駄だ。無駄無駄。
 逃げ道を探す前に、降りかかる火の粉を払おうか。
 それに、ちょっとだけ、強気な戦士さんたちをビビらせたいしね。

 俺は、ジリジリとすり足で近寄るエインシェントたちとの間合いをはかったよ。

 因みに、俺を中心にSSたちが固まっていて、皿に盛られた水色わらび餅状態だね。
 ちょっとだけ、邪魔かも。

 天井付近ではビトくんが旋回している。
 何かを発見したみたい、触手を出してジェスチャーしてるけど、さっぱり分かりません。

「…………」
 
 ……ああ、そうか、そうだよ。
 なんで、今まで気が付かなかったんだろう。

 俺は密着しているSSたちに囁いたよ。
 返事は――。
 
『できるかな?』
『やってみよう』
『戦うのあきた』
『おなかすいた』
『おしっこしたい』

 SSたちと意見統一。
 青ちゃんは流されるままOK。
 種(しゅ)族違いのポラリスくんは、『ご主人様のいのままで』と合意。
 ご主人様とは、俺のことね。

『みんな、静かにして…………』

「「「「「「「はーい」」」」」」」

 やがて、剣を向けるエインシェントたちの呼吸が聞こえてくる。
 ドックン、ドックン、ドックンと心音。殺気までも。

 ヤツら10匹の緊張が頂点に達した――、
 そう感じたとき、俺はポラリスくんを天井に投げたね。
 案の定、ヤツらが一斉に襲ってきた。  

 狙っているのは周りのSSたちだ。
 眼球の少し下に、剣を高速で突き立てて来るので、狙いは核。
 密着した俺たちを串刺し。10振りの剣がマシンガンのように突き立てくる。
 あわよくば数匹同時に、3Sのボス(俺)もついでに殺せれば、そんな思惑だろう。

 だけど、俺たちは死なない。
 殺せない。殺せるわけがない。
 
 SSたちの核が、
 総勢27匹のビトスライムの核が俺の体内に移動し、俺の核にくっつき、
 そして俺が、エインシェントの速度より早く全核を動かしているから。
 剣はかすりもしない。 

 刺されるのをそのままにして俺は、剣状にした触手を真横に振り上げたよ。
 だけど、エインシェントを斬ったはずなのに、びっくりするほど、まるっきり抵抗が無い。
 例えるなら通過、すり抜けに近い。

 一番右側のエインシェントの腰から刃が入り、
 その横のエインシェントの腹部を輪切りにし、
 続くエインシェントの胸部から、横のエインシェントの肩、その横は首、と連続で両断してゆき、
 10匹目、最後のエインシェントの頭部に、ツツツ……ッと緑色の線が走った。

「……はれ」
「…………どうしちゃったの?」

 ランちゃんが、立ったまま歯を食いしばる戦士をツンツンした。
 反応がない。まるでマネキン。
 間違いなく、きちんと、10匹の戦士の腰骨、筋肉、内蔵を切断したけど、斬ったはずだけど。
 血も出ず、エインシェントも斬られた感覚がないみたい。

「おいおい、いい加減にしろッ!」

 エースが突き飛ばすと、そこでようやく、エインシェントがバタバタ崩れ落ちた。

「し、死んでる、全部」
「……す、……すごい…………」
「キュー」

 触手の刃先を、刺し身包丁レベルの切れ味にはした。
 だけど、

 0.5秒。
 触手を1度振っただけ。
 たったそれだけ。
 斬ったかどうか、不安になるほどの切れ味なんて――。

 何気なくステータスに目をやり、改めて納得。
 レベル28・俺の素早さ値が119億を超え、攻撃力値が4億越えていた。

 緑血まみれの戦士に、天使の輪は注がない。
 やはりね。
 それに、レベルアップのアナウンスもない。
 よかったー。
 
 天井からバッサバッサとサキュバット・コウモリ形態でポラリスくんが降りてくる。
 
「やりましたね、ご主人様!」

「ありがとう、上手くできたみたい」

 核をそれぞれの身体に戻す。

「…………」

 すると、じっと見つめるSS2期生と、ランちゃんと青ちゃん。
 何を見ているのかって?
 
「ねえねえ、これ、食べちゃだめ?」
「美味しそう」
「じゅるじゅる……ごっくん」

 よだれが凄いんだけど。

「もう、おなかぺこぺこで動けないよぉ~」

「まあ、そうだろうなあ」

 エインシェントはここの10匹だけじゃないよ。
 援軍、仲間、戦闘愛好家、そんな連中が遺跡に来る可能性は高いね。

 いつ、まともな食事を取れるか分からない遺跡内だし。

「……うん。いいだろう」

「「「「「「「「わ~~~~~~いっ!!」」」」」」」」」

「そしたら、みんなで仲良く――――」

 と言っている最中に、SSたちがエインシェント目掛けて卒倒したね。
 消化吸収祭りが始まったよ。
 
「うまうま」
「おいちいね~♪」
「元気でちゃう」

 俺も少し食べとこうかな、
 そう思ったら、亡骸は綺麗に消えていたよ。
 完食しちゃってたね。

 うーん。

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