僕は美女だったらしい

寺蔵

文字の大きさ
58 / 66
もうすぐ夏休み

ストーカー行為、八鬼様にばれてました

しおりを挟む
 こんにちは。引き続き、ストーカー男ならぬ、須戸 佳央斗(すど かおと)です。

 お祭りの翌日。
 ボクはホクホクで昨日の戦利品を部屋でプリントしていました。

 ボクの部屋は一人部屋です。

 実はボク、こう見えても親がカメラ屋の社長でお金持ちなのです。
 まぁ、ぶっちゃけますと、地方の名も無きカメラ屋で、同じ県内に店舗が三つあるだけの個人商店に毛が生えた程度の規模の店ですが、それでも社長は社長。

 寮に入るにあたり、一般生徒のような二人部屋ではなく、完全個室の部屋を手配してくれました。
 ドアを入ってすぐにリビングとミニキッチン。そして隣に寝室付き。
 狭いけどシャワールームとトイレも付いているのです。

 リビングには夏樹ちゃんに関するものは一つも置いていません。
 万が一他の生徒が入ってきた時に見られたらことですからね。

 なにせ夏樹ちゃんはあの八鬼様の女。
 八鬼様に告げ口でもされようもんなら、ボクなんか一蹴りで三途の川に叩き落とされますよ。

「フンフフフーン♪」

 写真を現像するのも、飾るのも、誰も入ってこない寝室でやってます。
 今日も今日とて、意味不明な歌を歌いながら排出される写真を眺めます。
 この部屋は六畳一間の狭い部屋です。

 一時期は壁や天井いっぱいに夏樹ちゃんの写真を貼りまくろうかと考えていたのですが、実際は、両手で抱えられる程度の大きさのコルクボードに数枚だけを貼ることしかできませんでした。

 なんといいますか、自分でも説明し難いのですが、写真を沢山貼ると夏樹ちゃんの毒にやられそうな妙な気分になってしまうのです。

 写真の中でほほ笑む夏樹ちゃんを見ていると、

『ねぇ、迎えにきて。あなたが大好きだよ』

 僕に心を許しきった甘えた声で、そう、囁き始めるのです。

 夏樹ちゃんはボクを好きではありません。むしろ、ボクの名前と顔を覚えているのかどうかすら怪しい。
 ボクはそれをわかっているのに、幻聴が聞こえるのです。

『大好きだよ。愛してるよ。僕に何をしてもいいよ。迎えに来て』と。

 そして、ボクはそれを実行に移してしまいそうになるのです。

 自分で自分が恐ろしい。いや、夏樹ちゃんの醸し出す毒が怖い。

 破滅するとわかっておきながら毒婦にはまる男たちはこんな気持ちだったに違いありません。

 部屋中に貼って部屋中の夏樹ちゃんに『『『『『迎えに来て。愛してるよ』』』』』なんて言われたら、相手が八鬼様だろうと立ち向かいにいきかねません。コルクボードに数枚飾るのが精いっぱいです。

 貼ってある写真を二枚だけアルバムに移し、新しく現像した二枚を貼ります。

 厳選に厳選を重ねた二枚です。一枚は真っ赤になって八鬼様の陰に隠れようとする夏樹ちゃん。もう一枚は例の手を繋いでいる写真です。

 両方とも八鬼様まで写っているのが少々残念ですが、夏樹ちゃんの毒を中和する為にはこのデカイ男の貌も見ておかなければ。

「よしかんせ――――」

 胸を反らすと同時に、バンとドアが開く音がしました。
 いや、開いたというか蹴り開けられたような――――!?

 何事!?

 慌ててドアを見ました。

 ボクが外に出ようと一歩を踏み出すよりも早く、そのドアもまた、バン! と音を立てて開きました。

「ひょええええええ!?」

 そこに立っていたのはドアの入り口よりも高い長身の男。

「やっぱ盗撮してたのはテメェだったか。写真を出せ。データもだ」

 にぃ、と唇を吊り上げて笑う八鬼白夜様でした――――――!!!

 どうしてここに、どうしてボクがわかったのですか、盗撮に気が付いてらっしゃったんですね、なんてこった殺される、とかとかいろんな考えが一気に頭に沸き上がりましたが、ボクの体はボクの命を最優先させるかのように適切に動きました。

 すなわち、質問や疑問を投げかけるより先に、八鬼様の命令を忠実に実行したのです。

「はいいい、お待ちください、すぐご用意致します!!!」

 今まで隠し撮った写真の中でも特にお気に入りを現像し作ったアルバム(計38冊)をクローゼットから引っ張り出し(自分で南京錠を掛けてたのに何の意味もなかった)、夏樹ちゃんの写真と動画専用にしているパソコン(めちゃくちゃロックかけてたのに何の意味もなかった)を起動させました。

 八鬼様は床に座り込んで、アルバムを捲り始めました。

「へぇ。なかなか良く撮れてるじゃねえか」

「お、おほめいただきコウエイデございます。わたくしカメラ屋の息子でありますれば」

 ボクは部屋の角に正座して、ただただ震え声を絞り出すことしかできません。
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?

krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」 突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。 なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!? 全力すれ違いラブコメファンタジーBL! 支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。

藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。 妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、 彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。 だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、 なぜかアラン本人に興味を持ち始める。 「君は、なぜそこまで必死なんだ?」 「妹のためです!」 ……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。 妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。 ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。 そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。 断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。 誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。 漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。 陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。 漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。 漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。 養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。 陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。 漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。 仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。 沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。 日本の漁師の多くがこの形態なのだ。 沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。 遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。 内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。 漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。 出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。 休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。 個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。 漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。 専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。 資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。 漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。 食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。 地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。 この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。 もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。 翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。 この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

処理中です...