妄想女医・藍原香織の診察室

Piggy

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障害編

78話【daily work】佐々木 楓:「何か聞いてる?」(楓編)

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「ぎゃはは! マジで!」

 ナースステーションに、ひときわ大きな笑い声が響く。戸叶先生、今日は朝からご機嫌だなあ。なんだか暇そうにナースと話してるけど、もう朝の回診、終わったのかなあ? そういえば、もう10時なのに、藍原先生が見当たらない。今日は、外来も外勤もないはずだけど。
 そういうあたしは夜勤明け。明け方に患者さんがひとり亡くなって、ばたばたしていたから、帰りが遅くなっちゃった。ぼちぼち帰ろうとしていたら、西園寺先生が現れた。

「おはようございます、先生。珍しいですね」

 西園寺先生、病棟長だったころはよく来ていたけど、4月から内科部長に昇進したから、それからは週に1,2回しか病棟に来ない。

「今日は藍原先生がお休みだから、ちょっと様子を見に、ね……」

 いいながらあたりを見回している。そうか、やっぱり藍原先生お休みなんだ。珍しいな、病気とか滅多にしないのに。

「病気ですか? それとも外勤とかですか?」
「風邪ひいたらしいわよ。昨日から38度ですって」

 きょろきょろしていた西園寺先生が、戸叶先生を見つけて目を止めた。そうか、病棟長で指導医の藍原先生がいないと、3年目とはいえ若い戸叶先生がひとりきりになっちゃうから、フォローに来たのね。

「戸叶先生。病棟はどう、落ち着いてる?」
「あ、はい、問題ないでーす」

 ナースカウンターで世間話をしていた戸叶先生が振り返って明るく答える。

「藍原先生、大丈夫ですかね? 風邪ですか?」
「そうみたいよ。昨日よりはいいようだから、明日は出勤できそうとかいってたけど。困ったことがあったら私にいってちょうだい」
「了解でーす」

 ……やっぱり戸叶先生、妙に上機嫌だ。上司の藍原先生がいないから、羽伸ばしてるのかな? ……まあ、あたしには関係ないけど。
 帰ろうとすると、西園寺先生に呼び止められた。

「佐々木さん。あなた確か、藍原先生と仲良かったわよね」
「え? あ、はい、仲はいいほうだと思いますけど……」

 西園寺先生が、声を低くしていった。

「……あなた、何か藍原さんから聞いてる?」
「え? 何かって、何ですか? 何も、聞いてないですけど……」
「……そう」
「何か、あったんですか? 風邪のことですか?」
「いえ別に、何もないならいいのよ」

 西園寺先生はひらひらと手を振って病棟を降りていった。
 ……なんだろう、今の。気になるなあ。いつも直球であっさり系の西園寺先生が、あんな言い方するなんて。
 もう一度、時計を見る。10時半。今日はこのまま帰って寝ようと思ってたけど……なんだか気になる。38度っていってたけど、ちょっと顔見て差し入れして帰るくらいなら、迷惑じゃないよね?
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