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Ⅰ 強奪
5. 夜更けの語らい(1)
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「あら、お兄様。もうお戻りでしたか。レイ様にお会いになれませんでしたの?」
「サライヤ……。まだ起きていたのか」
レイの元を去り、急いで魔界の王宮に戻った魔王は、自室に向かう途中で、妹のサライヤに呼び止められた。
もう夜は更け、静まり返った宮中には、見張りの兵の姿を時折見かけるのみである。
「どうなさったの、お兄様。顔色が悪いわ。せっかくの男前が台無しでしてよ」
その声はふざけた調子を装っていたが、兄の顔を見上げる紫色の双眸は、心配げに曇っている。
魔王は力なく失笑し、項垂れた。
「何でもない……と言っても、お前のことだ、追及してくるのだろう?」
「あら、追及だなんて! そんな品のないこと、わたくしは致しませんわ! ……ただ、それとなく上品に、聞き出すだけです」
「何が違うのだ……?」
「優雅さですわ!」
顔をしかめている兄に、サライヤはとろけるような極上の笑顔で応酬した。
美しい花のような面、小柄ながら均整のとれた華奢な肢体、柔らかな物言い――初めてサライヤと会った者は皆、彼女を繊細かつ美麗なガラス細工のようだと思う。しかし彼女は、そんな壊れやすい印象とは正反対の、心身共に頑健な女丈夫である。
魔王が即位してからというもの、聡明な彼女は、王の筆頭補佐官を務め、影になり日向になり、ずっと兄を支え続けてきた。
これほど遅くまで起きていたのも、まだ残っている仕事を片付けていたのだろう。魔王がレイに会いに行く時間を捻出できたのも、彼女の協力の賜物だった。
魔王は改めて、妹の様子を見て取った。――疲れていると見え、白磁の様な肌も、心なしかくすんでで見える。
「無理をさせて、すまないな……サライヤ」
「あら、わたくしは好きでやっているのですわ、放っといて下さいまし! ……お兄様こそ、今夜はもうお休みなさいませ。追及とやらは、明日にして差し上げますわ」
にっこり微笑んだあと、その場を離れようとした妹を、魔王は引き止めた。
「待て。疲れているところ悪いが、少し時間をくれぬか。話したいことがあるのだ」
妹を自室に招いた魔王は、自ら淹れた茶を彼女に差し出し、単刀直入に切り出した。
「レイをどう思う?」
「どうとは……レイ様の人となり、のことですか?」
「そうだ。忌憚なく、思うところを聞かせてくれ」
サライヤがレイと初めて会ったのは、魔王と同じく、攫われた弟をレイが保護し、王宮に現れたときである。
以来レイが王宮を訪れる度、言葉を交わし、親睦を深めてきた。
サライヤは、茶をひとすすりする間に考えをまとめ、優雅な手つきでカップを置くと、おもむろに口を開いた。
「そうですわね……明るくて、とても快活な方ですわ。裏表なく、誰とでも打ち解けてお話しされますし……何より、あの屈託のない笑顔を向けられてしまうと、どんな頑固者でもほだされてしまうでしょう。何と言いましょうか……不思議な魅力をお持ちですわ。あれは天性の才ですわね」
「うむ……そうだな」
「それに……仙界の血を引いていらっしゃるせいかしら、邪心というものに縁がないように思えますわ。宮中の者の中には、人間の姿をしたレイ様に、無礼な態度を取る者もいるのですが……」
「何!? そんな者がいるのか! けしからん!」
「もう、お兄様、話の腰を折らないで下さいまし。ええと……無礼な者に対しても、レイ様は決して怒ったりなじったりなさいませんわ。むしろ、相手の立場や感情を理解することに心を砕いていらっしゃいました」
「……よく観察しているな、サライヤ」
「ほほほ……、だってレイ様、珍しいんですもの」
「珍しい? 珍獣のように言うな!」
「あらお兄様、『忌憚なく思うところを』と仰いましたわ!」
「ぐっ……! そうだったな。続けてくれ」
兄を言い負かしたサライヤは、心底愉快そうに目を輝かせると、茶を一口すすり、再び口を開いた。
「三つの世界の血を宿す者……実際レイ様は、稀有な存在だと思いますが、私が珍しいと申し上げたのは、あの方の魂の……透明度と言いますか、純粋さからです。あれほど高い魔力を持ち、高位の魔導術に通じていながら、一片の驕りも感じられません」
「確かにな……。あれが自らの力を誇示するのを見たことがない。やって見せろと言うと、必ず成功させるから、毎日相当訓練しているはずだが」
「まあ……レイ様に魔導術を強要したのですか?」
「どれほど使えるか、知りたくてな……。そういうおまえは、何故レイが高位の魔導術に通じていると知っているのだ?」
「わたくしの携わっている機関に、医術院があるのをご存知でしょう? レイ様が見学したいと仰るので、お連れしたことがあるのです」
その際、重傷を負って運び込まれた患者がいた。
一般的な施術と魔導術による回復、両方から治療を試みたが、患者の容態は一向に改善せず、医術師たちもとうとう匙を投げてしまった。
そのとき、それまで黙って見ていたレイが、その場にいた誰も知らない系統の療術を唱え、瀕死の患者を死の淵から救い出したのだ。
「奇跡のようでしたわ……」
そのときのことを思い出して、サライヤはうっとりと目を細めた。
「あれは仙界の療術でした。わたくしたちは、もっと彼らと交流すべきなんですわ。くだらない過去の確執など捨てて……」
仙界のものとはいえ、レイは新しい知識を医術院にもたらしたのである。
サライヤと医術師たちの懇願により、レイはその術の指導を引き受けてくれたが、あまりの高難易度に、脱落者が多数出た。
最終的に習得できた者は、サライヤの他にはわずか二名だけだったと聞き、魔王は驚きを隠せなかった。
「おまえでさえ、苦労したというのか?」
回復や療術系の魔道は、サライヤの得意分野だ。
魔道には各分野に於いて、生まれつきの才を必要とする領域が存在する。
天分の才がなければ、到達の叶わない領域――それを超えられる者だけが、高位の魔導術を習得できる。
「ええ、正直に申しますと、苦労しましたわ……。お兄様には、絶対無理ですわ」
「ぐっ……そうかもな」
療術系の魔道は、魔王の苦手分野だ。レイの傷を癒したような簡単なものなら造作もないが、複雑なものは手に余る。
サライヤはあのときのレイの態度を思い出して、話を続けた。
「あれほどの才を持ちながら、それをまったく鼻にかけないレイ様は、やはり珍しいお方。わたくしなど、この溢れるほどの美貌と、他の追随を許さない療術の才が、得意でならないというのに……」
言いながらサライヤは、チラッと兄に視線を向けた。
自分を見つめる妹の瞳が、同意と賛辞を求めていることに気付き、魔王はすぐさま口を開いた。
「ああ、サライヤ。得意になるのも当然であろう。おまえは例えようもなく美しいし、数多の才に秀でている。私の自慢の妹だ」
「あら、お兄様ったら、正直ですこと!」
ほほほ、と満足そうに高笑いするサライヤ。
妹の機嫌を取るポイントを無事に通過した魔王は、先を続けた。
「しかしサライヤ。レイはただ、自慢するのを抑えているだけで、内心は驕慢に満ちているやもしれぬぞ?」
「あら、その場合は、どんなに上手に隠していても、そのうち態度や言葉に出てしまうものですわ。例の療術を伝授して頂く際、習得に苦しむ者たちに、レイ様は始終こう仰っていました。『俺に出来ることは必ずあなたたちにも出来る。コツを掴めばすぐだ。俺の力不足で、うまく教えることができなくて、すまない』と。自身を他人よりも高みに置いて、このように言えましょうか?」
レイのことを語るうち、いつの間にか自分が熱弁をふるっていることに気付き、サライヤは赤くなった。
人を惹きつける何かが、あの青年にはある。
レイにその身を救い出された幼い弟は、彼にすっかり心酔し、今や手なづけられた犬のように懐いてしまっている。
それだけではない。
「そういえば、レイ様の愛好会が宮中にあるようですわ……。侍女たちが騒いでいましたの」
「何っ……!」
手に持っていたカップを、ガチャンと受け皿の上に叩きつけ、魔王は渋面を作った。
「レイ様は外見も素敵ですもの。日の光を集めたような、とろりとした蜂蜜色の瞳、長いまつげ、繊細な目鼻立ちに神秘的な黒い髪……ひそかに彼を愛でて、楽しんでいる者も多いと思いますわ」
魔王は更にワナワナと震え出した。
その様子をおかしそうに見つめ、サライヤは先を続けた。
「本当に魅力的な方。魔力に溢れ、高位の魔道に通じ、健康で、寛大な精神に富み、皆を愛している。――あとは、品格と教養ですが、あれほど聡明な方ですもの、後から何とかなるでしょう」
魔王は、はっとして妹の瞳を見つめ返した。
サライヤが揶揄を含んだ微笑を浮かべると、魔王はわずかに顔を赤らめ、溜息をついて視線を逸らせた。
「やはり気付いていたのか。……私の想いに」
「もちろんですわ。お兄様の熱い視線を受けてレイ様が焦げてしまわないか、いつも心配しておりました」
ふっ、と魔王の唇が自嘲気味に歪む。
「それではおまえは、私があの者を妃に望むことを、賛成してくれるのだな?」
サライヤが晴れやかに笑う。
「ええ。反対する者もおりましょうが、及ばずながらご助力致します」
「ありがたい。そなたという妹を産んで授けてくれた亡き母に、私は何度感謝したことか」
「まあ、ほほほ……今日は本当に、どうなさったの、正直なお兄様。気持ち悪いくらいですわ!」
「気持ち悪いは余計だろう……」
サライヤは再び高笑いした後、急に真顔になり、「でも…」と何か言いかけて、ためらうように口をつぐんだ。
「何だ? 言ってみろ」
「サライヤ……。まだ起きていたのか」
レイの元を去り、急いで魔界の王宮に戻った魔王は、自室に向かう途中で、妹のサライヤに呼び止められた。
もう夜は更け、静まり返った宮中には、見張りの兵の姿を時折見かけるのみである。
「どうなさったの、お兄様。顔色が悪いわ。せっかくの男前が台無しでしてよ」
その声はふざけた調子を装っていたが、兄の顔を見上げる紫色の双眸は、心配げに曇っている。
魔王は力なく失笑し、項垂れた。
「何でもない……と言っても、お前のことだ、追及してくるのだろう?」
「あら、追及だなんて! そんな品のないこと、わたくしは致しませんわ! ……ただ、それとなく上品に、聞き出すだけです」
「何が違うのだ……?」
「優雅さですわ!」
顔をしかめている兄に、サライヤはとろけるような極上の笑顔で応酬した。
美しい花のような面、小柄ながら均整のとれた華奢な肢体、柔らかな物言い――初めてサライヤと会った者は皆、彼女を繊細かつ美麗なガラス細工のようだと思う。しかし彼女は、そんな壊れやすい印象とは正反対の、心身共に頑健な女丈夫である。
魔王が即位してからというもの、聡明な彼女は、王の筆頭補佐官を務め、影になり日向になり、ずっと兄を支え続けてきた。
これほど遅くまで起きていたのも、まだ残っている仕事を片付けていたのだろう。魔王がレイに会いに行く時間を捻出できたのも、彼女の協力の賜物だった。
魔王は改めて、妹の様子を見て取った。――疲れていると見え、白磁の様な肌も、心なしかくすんでで見える。
「無理をさせて、すまないな……サライヤ」
「あら、わたくしは好きでやっているのですわ、放っといて下さいまし! ……お兄様こそ、今夜はもうお休みなさいませ。追及とやらは、明日にして差し上げますわ」
にっこり微笑んだあと、その場を離れようとした妹を、魔王は引き止めた。
「待て。疲れているところ悪いが、少し時間をくれぬか。話したいことがあるのだ」
妹を自室に招いた魔王は、自ら淹れた茶を彼女に差し出し、単刀直入に切り出した。
「レイをどう思う?」
「どうとは……レイ様の人となり、のことですか?」
「そうだ。忌憚なく、思うところを聞かせてくれ」
サライヤがレイと初めて会ったのは、魔王と同じく、攫われた弟をレイが保護し、王宮に現れたときである。
以来レイが王宮を訪れる度、言葉を交わし、親睦を深めてきた。
サライヤは、茶をひとすすりする間に考えをまとめ、優雅な手つきでカップを置くと、おもむろに口を開いた。
「そうですわね……明るくて、とても快活な方ですわ。裏表なく、誰とでも打ち解けてお話しされますし……何より、あの屈託のない笑顔を向けられてしまうと、どんな頑固者でもほだされてしまうでしょう。何と言いましょうか……不思議な魅力をお持ちですわ。あれは天性の才ですわね」
「うむ……そうだな」
「それに……仙界の血を引いていらっしゃるせいかしら、邪心というものに縁がないように思えますわ。宮中の者の中には、人間の姿をしたレイ様に、無礼な態度を取る者もいるのですが……」
「何!? そんな者がいるのか! けしからん!」
「もう、お兄様、話の腰を折らないで下さいまし。ええと……無礼な者に対しても、レイ様は決して怒ったりなじったりなさいませんわ。むしろ、相手の立場や感情を理解することに心を砕いていらっしゃいました」
「……よく観察しているな、サライヤ」
「ほほほ……、だってレイ様、珍しいんですもの」
「珍しい? 珍獣のように言うな!」
「あらお兄様、『忌憚なく思うところを』と仰いましたわ!」
「ぐっ……! そうだったな。続けてくれ」
兄を言い負かしたサライヤは、心底愉快そうに目を輝かせると、茶を一口すすり、再び口を開いた。
「三つの世界の血を宿す者……実際レイ様は、稀有な存在だと思いますが、私が珍しいと申し上げたのは、あの方の魂の……透明度と言いますか、純粋さからです。あれほど高い魔力を持ち、高位の魔導術に通じていながら、一片の驕りも感じられません」
「確かにな……。あれが自らの力を誇示するのを見たことがない。やって見せろと言うと、必ず成功させるから、毎日相当訓練しているはずだが」
「まあ……レイ様に魔導術を強要したのですか?」
「どれほど使えるか、知りたくてな……。そういうおまえは、何故レイが高位の魔導術に通じていると知っているのだ?」
「わたくしの携わっている機関に、医術院があるのをご存知でしょう? レイ様が見学したいと仰るので、お連れしたことがあるのです」
その際、重傷を負って運び込まれた患者がいた。
一般的な施術と魔導術による回復、両方から治療を試みたが、患者の容態は一向に改善せず、医術師たちもとうとう匙を投げてしまった。
そのとき、それまで黙って見ていたレイが、その場にいた誰も知らない系統の療術を唱え、瀕死の患者を死の淵から救い出したのだ。
「奇跡のようでしたわ……」
そのときのことを思い出して、サライヤはうっとりと目を細めた。
「あれは仙界の療術でした。わたくしたちは、もっと彼らと交流すべきなんですわ。くだらない過去の確執など捨てて……」
仙界のものとはいえ、レイは新しい知識を医術院にもたらしたのである。
サライヤと医術師たちの懇願により、レイはその術の指導を引き受けてくれたが、あまりの高難易度に、脱落者が多数出た。
最終的に習得できた者は、サライヤの他にはわずか二名だけだったと聞き、魔王は驚きを隠せなかった。
「おまえでさえ、苦労したというのか?」
回復や療術系の魔道は、サライヤの得意分野だ。
魔道には各分野に於いて、生まれつきの才を必要とする領域が存在する。
天分の才がなければ、到達の叶わない領域――それを超えられる者だけが、高位の魔導術を習得できる。
「ええ、正直に申しますと、苦労しましたわ……。お兄様には、絶対無理ですわ」
「ぐっ……そうかもな」
療術系の魔道は、魔王の苦手分野だ。レイの傷を癒したような簡単なものなら造作もないが、複雑なものは手に余る。
サライヤはあのときのレイの態度を思い出して、話を続けた。
「あれほどの才を持ちながら、それをまったく鼻にかけないレイ様は、やはり珍しいお方。わたくしなど、この溢れるほどの美貌と、他の追随を許さない療術の才が、得意でならないというのに……」
言いながらサライヤは、チラッと兄に視線を向けた。
自分を見つめる妹の瞳が、同意と賛辞を求めていることに気付き、魔王はすぐさま口を開いた。
「ああ、サライヤ。得意になるのも当然であろう。おまえは例えようもなく美しいし、数多の才に秀でている。私の自慢の妹だ」
「あら、お兄様ったら、正直ですこと!」
ほほほ、と満足そうに高笑いするサライヤ。
妹の機嫌を取るポイントを無事に通過した魔王は、先を続けた。
「しかしサライヤ。レイはただ、自慢するのを抑えているだけで、内心は驕慢に満ちているやもしれぬぞ?」
「あら、その場合は、どんなに上手に隠していても、そのうち態度や言葉に出てしまうものですわ。例の療術を伝授して頂く際、習得に苦しむ者たちに、レイ様は始終こう仰っていました。『俺に出来ることは必ずあなたたちにも出来る。コツを掴めばすぐだ。俺の力不足で、うまく教えることができなくて、すまない』と。自身を他人よりも高みに置いて、このように言えましょうか?」
レイのことを語るうち、いつの間にか自分が熱弁をふるっていることに気付き、サライヤは赤くなった。
人を惹きつける何かが、あの青年にはある。
レイにその身を救い出された幼い弟は、彼にすっかり心酔し、今や手なづけられた犬のように懐いてしまっている。
それだけではない。
「そういえば、レイ様の愛好会が宮中にあるようですわ……。侍女たちが騒いでいましたの」
「何っ……!」
手に持っていたカップを、ガチャンと受け皿の上に叩きつけ、魔王は渋面を作った。
「レイ様は外見も素敵ですもの。日の光を集めたような、とろりとした蜂蜜色の瞳、長いまつげ、繊細な目鼻立ちに神秘的な黒い髪……ひそかに彼を愛でて、楽しんでいる者も多いと思いますわ」
魔王は更にワナワナと震え出した。
その様子をおかしそうに見つめ、サライヤは先を続けた。
「本当に魅力的な方。魔力に溢れ、高位の魔道に通じ、健康で、寛大な精神に富み、皆を愛している。――あとは、品格と教養ですが、あれほど聡明な方ですもの、後から何とかなるでしょう」
魔王は、はっとして妹の瞳を見つめ返した。
サライヤが揶揄を含んだ微笑を浮かべると、魔王はわずかに顔を赤らめ、溜息をついて視線を逸らせた。
「やはり気付いていたのか。……私の想いに」
「もちろんですわ。お兄様の熱い視線を受けてレイ様が焦げてしまわないか、いつも心配しておりました」
ふっ、と魔王の唇が自嘲気味に歪む。
「それではおまえは、私があの者を妃に望むことを、賛成してくれるのだな?」
サライヤが晴れやかに笑う。
「ええ。反対する者もおりましょうが、及ばずながらご助力致します」
「ありがたい。そなたという妹を産んで授けてくれた亡き母に、私は何度感謝したことか」
「まあ、ほほほ……今日は本当に、どうなさったの、正直なお兄様。気持ち悪いくらいですわ!」
「気持ち悪いは余計だろう……」
サライヤは再び高笑いした後、急に真顔になり、「でも…」と何か言いかけて、ためらうように口をつぐんだ。
「何だ? 言ってみろ」
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