49 / 80
Ⅱ 幽閉
30. 夜明け前の性急な繋がり(1)
しおりを挟む
セラシャル葉の効能は抜群で、程なくレイの魔力は完全に回復していた。
昼間に眠りこけた上、魔力を完全に取り戻したレイは、当然ながらまったく眠くもならず、深夜を過ぎてもウロウロと、封印扉前の廊下を徘徊していた。
「遅いじゃないか……何してんだよ、あいつ……」
レイは魔王を待っていた。
いつもならとっくに来ている時間帯だが、待てど暮らせど、現れない。
(何かあったのか? ……いや、きっと仕事が終わらないんだろうな。昼間二度もここへ来たから、段取りが狂って……)
以前、魔王がちらっと明かしていたことを、レイは思い出した。この<最果ての間>に辿り着くには、複雑な迷路状の<霧の宮>を抜けた上、三つの封印扉を解呪しなくてはいけない。どれほどの手間と時間、そして労力が必要になるか、想像するに難くない。
レイはふと、ラルカの街の宿屋、『踊るイルカ亭』で、魔王と会った夜を思い出した。
――あれから2か月も経っていないというのに、もう何年も過去のような気がする。
あの夜、魔王は疲れきって、虚ろな目をしていた。
そしてレイの膝の上で寝息を立て、束の間の眠りに落ちた。
(あれは明らかに、何日もろくに寝てないという様子だったな……)
王様業が突然暇になるとは思えない。きっと今もあのときと同じように、魔王は多忙な日々を送っているに違いない。にもかかわらず、魔王は毎晩欠かさず、レイに会いに来る。そしてレイが目を覚ます頃には、もう<最果ての間>にはいない。
「あいつ……睡眠時間……とってるのか……? ここに来るのに、無理してるんじゃ……」
レイはぼそりと呟いた。
自業自得とは思うが、気になって仕方がない。
レイは封印扉前に座りこみ、ひたすら考え事をしながらぶつぶつと独り言を漏らしている。その様子を、シルファが少し離れたところから、心配げに見つめていた。
その後、明け方近くになって、やっと魔王が現れた。
思いがけずレイの出迎えを受けた魔王は、驚きと共に、大きく相好を崩した。
「レイ、待っていてくれたのか! 体は大丈夫なのか!?」
息も出来ないほどに強く抱きしめられ、レイは目眩を感じた。
――その心地よいともいえる目眩が、心因性であることを自覚しながら、レイは魔王の抱擁に身を任せた。
もう、自分に嘘はつけなかった。
魔王の匂いに包まれ、その腕に抱かれながら、レイはまたもや、込み上げてくる想いに涙腺が緩むのを感じ、慌てて魔王の抱擁を振り解いた。
「俺のことより、あんた、大丈夫なのか。……忙しいんだろ。無理してまで会いに来なくても……いいんだぜ……」
「おお……」
魔王は感極まったという表情で、震える手でレイの頬を撫でた。
「私の身を案じてくれるのか……。嬉しいぞ、レイ」
そう言うなり、いきなり唇を重ねてくる。
「やめろ!」
――シルファが見てる、と小声で付け加え、真っ赤になってうろたえているレイを、魔王は無造作に抱え上げた。
「では、二人きりになろう」
甘い囁きと共に、魔王の熱い息が耳元にかかり、抵抗しようとしたレイの体から、次第に力が抜けてゆく。
昼間に眠りこけた上、魔力を完全に取り戻したレイは、当然ながらまったく眠くもならず、深夜を過ぎてもウロウロと、封印扉前の廊下を徘徊していた。
「遅いじゃないか……何してんだよ、あいつ……」
レイは魔王を待っていた。
いつもならとっくに来ている時間帯だが、待てど暮らせど、現れない。
(何かあったのか? ……いや、きっと仕事が終わらないんだろうな。昼間二度もここへ来たから、段取りが狂って……)
以前、魔王がちらっと明かしていたことを、レイは思い出した。この<最果ての間>に辿り着くには、複雑な迷路状の<霧の宮>を抜けた上、三つの封印扉を解呪しなくてはいけない。どれほどの手間と時間、そして労力が必要になるか、想像するに難くない。
レイはふと、ラルカの街の宿屋、『踊るイルカ亭』で、魔王と会った夜を思い出した。
――あれから2か月も経っていないというのに、もう何年も過去のような気がする。
あの夜、魔王は疲れきって、虚ろな目をしていた。
そしてレイの膝の上で寝息を立て、束の間の眠りに落ちた。
(あれは明らかに、何日もろくに寝てないという様子だったな……)
王様業が突然暇になるとは思えない。きっと今もあのときと同じように、魔王は多忙な日々を送っているに違いない。にもかかわらず、魔王は毎晩欠かさず、レイに会いに来る。そしてレイが目を覚ます頃には、もう<最果ての間>にはいない。
「あいつ……睡眠時間……とってるのか……? ここに来るのに、無理してるんじゃ……」
レイはぼそりと呟いた。
自業自得とは思うが、気になって仕方がない。
レイは封印扉前に座りこみ、ひたすら考え事をしながらぶつぶつと独り言を漏らしている。その様子を、シルファが少し離れたところから、心配げに見つめていた。
その後、明け方近くになって、やっと魔王が現れた。
思いがけずレイの出迎えを受けた魔王は、驚きと共に、大きく相好を崩した。
「レイ、待っていてくれたのか! 体は大丈夫なのか!?」
息も出来ないほどに強く抱きしめられ、レイは目眩を感じた。
――その心地よいともいえる目眩が、心因性であることを自覚しながら、レイは魔王の抱擁に身を任せた。
もう、自分に嘘はつけなかった。
魔王の匂いに包まれ、その腕に抱かれながら、レイはまたもや、込み上げてくる想いに涙腺が緩むのを感じ、慌てて魔王の抱擁を振り解いた。
「俺のことより、あんた、大丈夫なのか。……忙しいんだろ。無理してまで会いに来なくても……いいんだぜ……」
「おお……」
魔王は感極まったという表情で、震える手でレイの頬を撫でた。
「私の身を案じてくれるのか……。嬉しいぞ、レイ」
そう言うなり、いきなり唇を重ねてくる。
「やめろ!」
――シルファが見てる、と小声で付け加え、真っ赤になってうろたえているレイを、魔王は無造作に抱え上げた。
「では、二人きりになろう」
甘い囁きと共に、魔王の熱い息が耳元にかかり、抵抗しようとしたレイの体から、次第に力が抜けてゆく。
13
あなたにおすすめの小説
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
2026/02/14 累計30万P突破御礼バレンタインSS追加しました
2026/02/15 累計いいね♡7777突破御礼SS 19時に公開します。
様々な形での応援ありがとうございます!
心からの愛してる
マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。
全寮制男子校
嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります
※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
すべてを奪われた英雄は、
さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。
隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。
それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。
すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる