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15話:お迎え
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南の森に行った翌日は、もろもろの準備のために一日中家にいた。今後のためにも、昨日森に放って置いて行ってしまった【紅穿】の分の血染布を補充する必要があったからだ。
とはいえ血染布自体は家にストックがあるから、それを持ち運びやすいように裁断するくらいだ。
今回はどんなことが起こるか予測できないから、あらゆることに対応できるように備える。
「とりあえず、細長く切って……端を縫い合わせてっと」
バカ長くなってしまうが命綱にも拘束用の鎖にもなる。全身に重ねて巻けば鎧にもなるし、作って損はないだろう
興が乗って約二十メートルもの長さになってしまったが、魔術で圧縮すれば驚くほど小さくなるので問題ない。
それから剣の整備もしておく。といっても刃の方ではなく鞘の整備だ。戦闘では使っていなかったが、昨日の逃走中にどこかぶつけて表面が剥げているかもしれないし、魔術紋様が機能しているのかも確認しておきたい。
そんなことをしながら一日を過ごしていたが、同時に俺はずっと家に人が来るのを待っていた。
別に約束をしていたわけではないし、招いたわけでもない。さらに言えば特定の個人を指してはいなかった。
「昨日のことは既に領主様の耳に届いているだろう。当然、俺がフィリアが一緒に行動していたことも……」
待っている人物とは、領主様から遣わされる兵士のことだ。
何らかの犯罪をしたわけではないが、さすがにお咎めなしというわけにはいかないだろう……少なくとも聴取は受けることになるだろうな。
ロスウェル子爵は権力を笠に着て威張るような人物ではなく、平民に対しても一定以上の理解を示してくれている方だ。そうでなければフィリアがあのような性格にはならないだろう。
その性格に甘えるわけではないが、かなり恩赦を期待している。これが俺の知っているクソ貴族どもだったら、俺の言い分も聞かずに反逆罪で死刑。俺を産んだ家族も、容赦なく処断されることとなっただろう。
「反逆罪以外で考えられるのは……誘拐罪? それか、恐喝罪? 強姦未遂にもなるか?」
……そう考えると、今からでも逃げたほうがいいんじゃないか? いや家族に責任が行くから駄目だ。
軽い気持ちで可能性を考えただけだったが結構マズイ状況になってしまっていたので、俺はいつの間にか作業する手を止めて罪に問われないことを祈っていた。
そのようにして待ち続けていたが、俺の家の扉がノックされたのは日が沈み始めた頃だった。ずいぶん遅かったなと思いつつ扉を開ける。そこにいるであろう兵士の姿を想像して緊張したが、扉の外にいたのは意外な人物だった。
「あ? なんであんたらが居るんだ?」
「ホントにアンタは失礼なヤツね」
扉の外にいたのは、不満げな様子で腰に手を当てている冒険者のリアナと、そんな彼女に困ったような苦笑を向けたコーネルだった。
「いやすまん。予想していなかったもので……何の用だ?」
「実は君に頼みたいことがありまして……こんな時間から申し訳ありませんが、我々と共にロスウェル子爵様の館へ来てはもらえませんか」
どうやら領主様からの遣いであることは間違っていないようだった。なぜ兵士ではなく彼らが来たのかはわからないが、行かないわけにはいかない。
「ああわかった。すぐに出られるから、少し準備する時間をくれ」
二人から許可をもらってから、俺は手早く部屋を片付けて家を出る。それにしても迎えがこの二人とはな……それに今言った「頼みたいこと」っていったい何だろうか?
とはいえ血染布自体は家にストックがあるから、それを持ち運びやすいように裁断するくらいだ。
今回はどんなことが起こるか予測できないから、あらゆることに対応できるように備える。
「とりあえず、細長く切って……端を縫い合わせてっと」
バカ長くなってしまうが命綱にも拘束用の鎖にもなる。全身に重ねて巻けば鎧にもなるし、作って損はないだろう
興が乗って約二十メートルもの長さになってしまったが、魔術で圧縮すれば驚くほど小さくなるので問題ない。
それから剣の整備もしておく。といっても刃の方ではなく鞘の整備だ。戦闘では使っていなかったが、昨日の逃走中にどこかぶつけて表面が剥げているかもしれないし、魔術紋様が機能しているのかも確認しておきたい。
そんなことをしながら一日を過ごしていたが、同時に俺はずっと家に人が来るのを待っていた。
別に約束をしていたわけではないし、招いたわけでもない。さらに言えば特定の個人を指してはいなかった。
「昨日のことは既に領主様の耳に届いているだろう。当然、俺がフィリアが一緒に行動していたことも……」
待っている人物とは、領主様から遣わされる兵士のことだ。
何らかの犯罪をしたわけではないが、さすがにお咎めなしというわけにはいかないだろう……少なくとも聴取は受けることになるだろうな。
ロスウェル子爵は権力を笠に着て威張るような人物ではなく、平民に対しても一定以上の理解を示してくれている方だ。そうでなければフィリアがあのような性格にはならないだろう。
その性格に甘えるわけではないが、かなり恩赦を期待している。これが俺の知っているクソ貴族どもだったら、俺の言い分も聞かずに反逆罪で死刑。俺を産んだ家族も、容赦なく処断されることとなっただろう。
「反逆罪以外で考えられるのは……誘拐罪? それか、恐喝罪? 強姦未遂にもなるか?」
……そう考えると、今からでも逃げたほうがいいんじゃないか? いや家族に責任が行くから駄目だ。
軽い気持ちで可能性を考えただけだったが結構マズイ状況になってしまっていたので、俺はいつの間にか作業する手を止めて罪に問われないことを祈っていた。
そのようにして待ち続けていたが、俺の家の扉がノックされたのは日が沈み始めた頃だった。ずいぶん遅かったなと思いつつ扉を開ける。そこにいるであろう兵士の姿を想像して緊張したが、扉の外にいたのは意外な人物だった。
「あ? なんであんたらが居るんだ?」
「ホントにアンタは失礼なヤツね」
扉の外にいたのは、不満げな様子で腰に手を当てている冒険者のリアナと、そんな彼女に困ったような苦笑を向けたコーネルだった。
「いやすまん。予想していなかったもので……何の用だ?」
「実は君に頼みたいことがありまして……こんな時間から申し訳ありませんが、我々と共にロスウェル子爵様の館へ来てはもらえませんか」
どうやら領主様からの遣いであることは間違っていないようだった。なぜ兵士ではなく彼らが来たのかはわからないが、行かないわけにはいかない。
「ああわかった。すぐに出られるから、少し準備する時間をくれ」
二人から許可をもらってから、俺は手早く部屋を片付けて家を出る。それにしても迎えがこの二人とはな……それに今言った「頼みたいこと」っていったい何だろうか?
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