あなたは一体誰ですか?

らがまふぃん

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6.メリオラーザの受難

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 メリオラーザ・ティシモ。ティシモ伯爵家の長女として生まれ、十四歳で第四皇子カダージュ・アス・ヒオニアの婚約者となる。

 カダージュ・アス・ヒオニア。ヒオニアリア帝国の第四皇子として生を受けるも、すべてにおいてやる気がない。そんな彼が、唯一興味を示したものが、三つ年上の婚約者であるメリオラーザ。

 「彼女が妻になってくれたら嬉しいなあ」

 三つ上の兄、第三皇子ラウェージュの婚約者候補を選ぶための交流会の中で、メリオラーザを見つけた。
 その夜の晩餐の席で、無気力皇子がそんなことを言うものだから、家族全員がフォークとナイフを取り落とした。

 「ねえ、ラウ兄様。ティシモ嬢、兄様も気に入った?でも、僕の方が気に入っていると思うんだあ」

 誰もが口を開けたままカダージュを見ている。

 「ねえ、ラウ兄様には、噴水の側にいた人とか、テーブルの側にいた人とか、ベンチの側にいた人とかが似合うと思うんだよねぇ」

 誰のことだ。ほぼすべての人にあてはまる。

 「僕、ティシモ嬢がいいなあ。ねえ、兄様は、他の人がいいよねぇ?」
 「め、ずらしい、ことも、あるものだね。驚きすぎて思考が停止してしまったけれど、そう。カダージュは、ティシモ嬢が気に入ったの」

 ラウェージュが嬉しそうに笑った。

 「私は違う三人を候補に挙げているから。カダージュと被らなくて良かった」

 なでなでとカダージュの頭を撫でるラウェージュ。みんなが微笑ましいものを見る目で見つめた。


*~*~*~*~*


 ティシモ伯爵家は悩んでいた。

 昨日行われた第三皇子ラウェージュの婚約者候補選抜の交流会。十二から十六歳の高位貴族が集められた。メリオラーザも対象年齢のため参加させてはいたが、それは義務に過ぎない。

 皇妃の懐妊が発表されると、ベビーラッシュが起こる。皇族に嫁がせたい高位貴族の欲にまみれたものだが、めでたいことに変わりはない。しかし、ティシモ家は複雑だった。権力欲はあまりない。夫人がメリオラーザを懐妊して少しすると、皇妃の懐妊が告げられたのだ。

 皇族は、皇子や皇女の年齢前後二歳を婚約者候補とするため、避けたい者は、時期をずらす。前二歳という部分がネックだったが、そこはどうすることも出来ない。皇子二人に皇女二人の計四人。そろそろ大丈夫かと、権力欲のない者たちは、候補から外すために子どもを授かり始めていた。
 そんな矢先の皇妃懐妊。まだ性別は不明だが、同性であることを願っていた者たちもいる中、ティシモ家は期待が外れた結果となった。

 皇族が十四になると、婚約者候補選抜の交流会が開かれる。メリオラーザは正装を纏うが、目立たないものを仕立てていた。メリオラーザ自身に、皇子に嫁ぎたいという望みがあればそれはそれでもまあいいのだが、本人も両親の性格を継いで、興味がなさそうだった。

 「お返事は、一週間後に受け取りに参ります」

 城の使者が持って来たものに、伯爵の頬が引き攣ったのは言うまでもない。

 「開けたくない」

 サロンで家族のお茶を楽しんでいた伯爵たち。午前中に使者からの手紙が来ないようなら選ばれなかったということ。だから油断していた。可愛い娘を魔窟皇家に差し出さなくて済む。ほくほくとお茶を楽しんでいたのだ。
 それなのに、何でお茶のこんな時間になって届くのだ。話が違う。

 テーブルの隅で、禍々まがまがしいオーラを放っている怪文書(伯爵家視点)。

 「ジェス、開けて」

 側にいた執事のジェスに伯爵が言うと、ジェスは満面の圧のある笑顔になった。

 「出来るわけないでしょう」

 皇家の封蝋のされた手紙。当主以外が開けるなど、以ての外。しばらくして、ようやく伯爵は諦めて開封するも、その内容に、より頭痛がした。




*つづく*
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