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日常編
番外編 ~遠乗り~
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こちらはエル様とアリスが結婚して間もなくのお話しです。読み飛ばしても本編に差し支えございませんが、読んでいただけると嬉しいです。よろしかったらお付き合いください。
*~*~*~*~*
「雨、ですね」
「通り雨のようだ」
結婚をして間もない頃、初めて馬で遠乗りをした。
美しい湖があると聞いていた。アリスは美しい風景を好む。アリスを連れて行ってみようと思っていた。いつも馬車での移動だったが、とてもいい天気だったので、今回は馬にした。馬車の方が危険はない。だが、完全に二人きりで出掛けたくもあったので、アリスに聞いてみた。アリスも馬がいいと言ってくれた。
湖までの道中も、湖も、とても素晴らしい時間を過ごせたというのに。最後の最後に面白くない、と息を吐いた。
エリアストは上着を脱ぐと、アリスの頭から被せた。
「エルシィ、少し窮屈になるが我慢してくれ」
エリアストは前屈みになって、アリスを雨から守るように覆い被さる。
「少し急ぐ」
片手でしっかりアリスを支え、もう片方の手で手綱を操り、湖までの道中にあった猟師小屋に非難する。
「エルシィ、すまない。濡れてしまったな」
アリスはエリアストの上着と体のお陰で、足下が濡れただけ。対するエリアストは、全身水が滴っている。それなのに、自分のことを構うことなく、アリスのワンピースの裾を絞る。
「エル様、わたくしは何ともありません。エル様が守ってくださいましたもの。わたくしより、エル様が風邪をひいてしまいます」
アリスはおろおろと辺りを見回す。薪を見つけて暖炉にくべようとする。
「ダメだ、エルシィ。棘が刺さったりしたら大変だ」
エリアストはそっとアリスの手を押し止めた。
「少し待っていてくれ、エルシィ」
テキパキと薪をくべ、手際よく火を付けた。
「おいで、エルシィ」
差し伸べられた手に、アリスは怖ず怖ずと手を重ねる。
「あまり綺麗ではないが、直接座るよりはいいだろう」
そう言って、暖炉の前に敷いた布にアリスを座らせた。
「寒くはないか、エルシィ」
「はい、何から何までありがとうございます、エル様」
お互い、穏やかに微笑んだ。
エリアストは少し離れて服を脱いで絞ると、アリスに掛けていた上着が比較的無事だったので、それを肩に掛けた。濡れた髪を後ろに撫で付け、アリスの下に戻ると、アリスがギュッと目を瞑っていた。
「エルシィ、どうした。どこか痛いのか」
慌ててアリスの隣に膝をついておろおろとするエリアスト。アリスは目を開けてエリアストを見ると、真っ赤になって目を逸らした。
「す、すみません、エル様。その、服を脱がれたので、見ないようにしていたのです」
その言葉に、エリアストは安堵の息を吐いた。
「怪我がないなら良かった」
そう言ってアリスの足下に視線を落とす。
「エルシィ、乾かさないと、風邪をひいてしまう」
「先程エル様が絞ってくださいましたよ」
エリアストはワンピースの裾から手を忍ばせた。ビクリとアリスが揺れる。
「靴下。脱がないと、足が冷える」
間近で見つめ合いながら、エリアストの手が頬を撫でる。もう片方の手で靴を脱がせ、優しく靴下を脱がせた。両足を脱がせると、エリアストの視線が足に落ちる。素足を見つめられ、アリスは恥ずかしさに身動ぐ。エリアストは、ゆっくりアリスの足を持ち上げると、その小さな足に、唇を落とした。
「っ、エル、様っ」
あまりの羞恥に、アリスの目が潤む。エリアストは唇を離さないまま、アリスを射貫くように見つめた。アリスの心臓はこれ以上ないほど、早鐘を打っている。いつも下ろしている髪も、今は後ろに撫で付けられ、その美しい顔がすべて晒されている。そんないつもと違うエリアストの雰囲気にも、アリスは動揺していた。
ハ、とエリアストの吐息が足にかかる。
「こんなに冷えて」
エリアストの舌が、這う。
「えるさま」
滲む黎明の瞳が美しすぎて、エリアストはアリスの足から手を離すことなく、その唇を塞いでいた。
「ああ、このままだと抑えが利かなくなる。チッ、こんな場所でさえなければ」
散々アリスの唇を堪能し、エリアストはひどく名残惜しそうに離れた。くったりとしたアリスを自分の胸に寄りかからせ、背中から包むように抱き締めた。髪に、頬に、首筋に、唇を寄せる。その度に小さく身動ぐアリスに、愛しさが募った。
パチパチと薪の弾ける音が静かに響く。外の雨音も心地よい。お互い言葉を交わすことなく、静かにふたりきりを堪能していた。
通り雨だ。少しして雨が上がる。服が乾き切っていないが、エリアストは名残惜しそうにアリスに声をかける。
「エルシィ、雨が止んだ。体が冷えているだろう。早く邸で湯に浸かろう」
アリスはエリアストを振り返る。
「エル様」
そう言って少し俯くアリスに、エリアストは慌てる。
「どうした、エルシィ。具合が悪くなったか」
アリスの額に手を当てておろおろとするエリアストに、アリスは首を振る。
「エル様、あの、エル様の、服が、乾くまででいいのです」
額をエリアストの胸に寄せる。
「もう少し、このままで、いさせていただけませんか」
わがままを言って、すみません。
エリアストは夢中でアリスを抱き締めた。噛みつくようにその唇を塞ぐ。
「可愛いことを言ってくれる。邸に戻ったら覚悟してくれ」
訂正。最高に素晴らしい一日だった。
*おしまい*
次話は新章になります。国外とのお話しです。引き続きお付き合いくださると嬉しいです。
*~*~*~*~*
「雨、ですね」
「通り雨のようだ」
結婚をして間もない頃、初めて馬で遠乗りをした。
美しい湖があると聞いていた。アリスは美しい風景を好む。アリスを連れて行ってみようと思っていた。いつも馬車での移動だったが、とてもいい天気だったので、今回は馬にした。馬車の方が危険はない。だが、完全に二人きりで出掛けたくもあったので、アリスに聞いてみた。アリスも馬がいいと言ってくれた。
湖までの道中も、湖も、とても素晴らしい時間を過ごせたというのに。最後の最後に面白くない、と息を吐いた。
エリアストは上着を脱ぐと、アリスの頭から被せた。
「エルシィ、少し窮屈になるが我慢してくれ」
エリアストは前屈みになって、アリスを雨から守るように覆い被さる。
「少し急ぐ」
片手でしっかりアリスを支え、もう片方の手で手綱を操り、湖までの道中にあった猟師小屋に非難する。
「エルシィ、すまない。濡れてしまったな」
アリスはエリアストの上着と体のお陰で、足下が濡れただけ。対するエリアストは、全身水が滴っている。それなのに、自分のことを構うことなく、アリスのワンピースの裾を絞る。
「エル様、わたくしは何ともありません。エル様が守ってくださいましたもの。わたくしより、エル様が風邪をひいてしまいます」
アリスはおろおろと辺りを見回す。薪を見つけて暖炉にくべようとする。
「ダメだ、エルシィ。棘が刺さったりしたら大変だ」
エリアストはそっとアリスの手を押し止めた。
「少し待っていてくれ、エルシィ」
テキパキと薪をくべ、手際よく火を付けた。
「おいで、エルシィ」
差し伸べられた手に、アリスは怖ず怖ずと手を重ねる。
「あまり綺麗ではないが、直接座るよりはいいだろう」
そう言って、暖炉の前に敷いた布にアリスを座らせた。
「寒くはないか、エルシィ」
「はい、何から何までありがとうございます、エル様」
お互い、穏やかに微笑んだ。
エリアストは少し離れて服を脱いで絞ると、アリスに掛けていた上着が比較的無事だったので、それを肩に掛けた。濡れた髪を後ろに撫で付け、アリスの下に戻ると、アリスがギュッと目を瞑っていた。
「エルシィ、どうした。どこか痛いのか」
慌ててアリスの隣に膝をついておろおろとするエリアスト。アリスは目を開けてエリアストを見ると、真っ赤になって目を逸らした。
「す、すみません、エル様。その、服を脱がれたので、見ないようにしていたのです」
その言葉に、エリアストは安堵の息を吐いた。
「怪我がないなら良かった」
そう言ってアリスの足下に視線を落とす。
「エルシィ、乾かさないと、風邪をひいてしまう」
「先程エル様が絞ってくださいましたよ」
エリアストはワンピースの裾から手を忍ばせた。ビクリとアリスが揺れる。
「靴下。脱がないと、足が冷える」
間近で見つめ合いながら、エリアストの手が頬を撫でる。もう片方の手で靴を脱がせ、優しく靴下を脱がせた。両足を脱がせると、エリアストの視線が足に落ちる。素足を見つめられ、アリスは恥ずかしさに身動ぐ。エリアストは、ゆっくりアリスの足を持ち上げると、その小さな足に、唇を落とした。
「っ、エル、様っ」
あまりの羞恥に、アリスの目が潤む。エリアストは唇を離さないまま、アリスを射貫くように見つめた。アリスの心臓はこれ以上ないほど、早鐘を打っている。いつも下ろしている髪も、今は後ろに撫で付けられ、その美しい顔がすべて晒されている。そんないつもと違うエリアストの雰囲気にも、アリスは動揺していた。
ハ、とエリアストの吐息が足にかかる。
「こんなに冷えて」
エリアストの舌が、這う。
「えるさま」
滲む黎明の瞳が美しすぎて、エリアストはアリスの足から手を離すことなく、その唇を塞いでいた。
「ああ、このままだと抑えが利かなくなる。チッ、こんな場所でさえなければ」
散々アリスの唇を堪能し、エリアストはひどく名残惜しそうに離れた。くったりとしたアリスを自分の胸に寄りかからせ、背中から包むように抱き締めた。髪に、頬に、首筋に、唇を寄せる。その度に小さく身動ぐアリスに、愛しさが募った。
パチパチと薪の弾ける音が静かに響く。外の雨音も心地よい。お互い言葉を交わすことなく、静かにふたりきりを堪能していた。
通り雨だ。少しして雨が上がる。服が乾き切っていないが、エリアストは名残惜しそうにアリスに声をかける。
「エルシィ、雨が止んだ。体が冷えているだろう。早く邸で湯に浸かろう」
アリスはエリアストを振り返る。
「エル様」
そう言って少し俯くアリスに、エリアストは慌てる。
「どうした、エルシィ。具合が悪くなったか」
アリスの額に手を当てておろおろとするエリアストに、アリスは首を振る。
「エル様、あの、エル様の、服が、乾くまででいいのです」
額をエリアストの胸に寄せる。
「もう少し、このままで、いさせていただけませんか」
わがままを言って、すみません。
エリアストは夢中でアリスを抱き締めた。噛みつくようにその唇を塞ぐ。
「可愛いことを言ってくれる。邸に戻ったら覚悟してくれ」
訂正。最高に素晴らしい一日だった。
*おしまい*
次話は新章になります。国外とのお話しです。引き続きお付き合いくださると嬉しいです。
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