美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛

らがまふぃん

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アーリオーリ王国編

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 数日後、アーリオーリ国より第二王女が来訪した。
 「お初にお目にかかりますわ。アーリオーリ国第二王女アフロディーテ・ロロニス・アーリオーリにございます」
 デカい。
 全員の第一印象がそれだった。
 セドニアなんて、簡単にひねり潰されてしまうレベルではないか。クロバレイス国の鬼神と恐れられるアイザックの二倍はある。よく動けるな、というくらいの重量感。
 名前にも驚きだ。美の女神の名を付けられたのか。心根が美しいならば納得も出来よう。だが、聞いた限り、それも望みは薄そうだ。
 「遠路疲れたであろう。本日はゆるりと休まれよ」
 「いいえ、あたくし、早くセドニア様にお会いしとうございます。セドニア様はどちら?」
 お付きの者たちは頭を抱える。早速爆弾を投下しやがった。勘弁してくれ。
 「で、殿下、お言葉に甘えて休ませていただきましょう。王弟令息様には、明日、お目にかかれましょう」
 王女付きの女官が囁く。しかし、そんな気遣い虚しく、アフロディーテは眉をつり上げて声を荒らげる。
 「あたくし、セドニア様に会いにわざわざこんなところまで来たのよ!明日って何よ!あたくしを待たせるって言うの?!」
 お付きの者たちは全員が床に平伏し、ディアンに謝罪をする。他国をこんなところ呼ばわりの上、押しかけたのはこちらだ。
 「随分元気なようだ。では疲れていないのならば、早速例の件を済ませるとしよう」
 ディアンの対応に、お付きの者たちはますます恐縮した。一国の王への態度ではないというのに、過ぎた温情を与えられていることが恐ろしい。アーリオーリ国は、このレイガード国を見誤ってはいないだろうか。不安しかなかった。

*~*~*~*~*

 「馬車がよく壊れなかったね」
 「馬に同情したの初めてよ」
 双子のヒソヒソ話に思わず吹き出してしまったセドニアを、双子がチラリと見る。セドニアは失礼、と笑いを堪えながら顔を逸らした。
 「セドニア様あ!お会いしたかったですわあ!」
 ドスドスと巨体が近付いてくる。セドニアの一歩後ろに控えて頭を下げる少女に気付くと、アフロディーテは鼻を鳴らした。
 「ふん!あたくし、アーリオーリ国第二王女アフロディーテ・ロロニス・アーリオーリよ。あーたがあたくしのセドニア様を横取りしようとする小娘かしら」
 いくら王女とは言え、他国の筆頭公爵家への対応ではない。護衛や女官たちが慌てている。
 「大変申し訳ございません。殿下は慣れぬ地での緊張から、うまく言葉が出てこない様子。どうか寛大なご対応を、何卒、何卒お願い申し上げます」
 王女付き筆頭女官であろう女性が、丁寧に頭を下げる。周りもそれに続き、平伏す勢いで頭を下げている。
 「何をしているの、おまえたち!王家に仕える者が簡単に頭を下げるなんて!」
 もういっそ気を失いたい。周囲の者たちは涙目だ。
 「どうぞ、お気になさらず。顔を上げてくださいませ」
 あまり抑揚のない声がした。みんなが顔を上げてその声のぬしを見る。
 息が止まった。
 アフロディーテは、驚きに目を見開いている。
 輝く銀の髪に、アメシストのような紫の瞳。雪のように白い肌はどこまでも滑らかで、淡く色付く唇は微かな笑みを湛えていた。
 まさに、美の女神。アフロディーテの名が相応しいのはどちらか。
 「あ、あーた。あーた、名を、名を名乗りなさい」
 しかし、ダリアは目を細めた。アフロディーテの視線の先は。
 「ノアリアスト・カーサ・ディレイガルドにございます」
 アフロディーテの目には、セドニアは映っていない。こっそり安堵の息をいてしまったセドニアは、たぶん悪くない。
 「あーた、あたくしの婚約者、いえ、伴侶にして差し上げてよ!」
 ノアリアストの元々乏しい表情が抜け落ちた。
 「セドニア様と婚約を望まれていると。ゆえに、その婚約者と話し合いに来たと伺っておりますが」
 「あたくし、あーたと出会うために遙々はるばるやって来たのですわ!」


*つづく*
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