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ディレイガルド事変編
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昨年デビュタントを迎えたわ。
でも、本当はイヤだったの。ずっと、子どもでいたかった。
学園にだって行きたくなかった。貴族の義務なんて、酷いわ。三年も通うなんて、耐えられない。少しでも早く卒業しないと。お兄様もお姉様も、わたくしが表に出ることを嫌がるのよ。わたくしの兄姉だと知られることを、とても嫌がるの。
わかっているわ。
だって、わたくしは醜い。
こんなに醜いわたくしと血が繋がっているなんて、知られたくないわよね。わたくしだってイヤよ。わたくしだって、わたくしがイヤ。
可哀相。可哀相ね、わたくし。
誰からも愛してもらえない。わたくし自身からさえ、好きと言ってもらえない。誰からも見向きもされないわたくしは、一体何のために生まれてきたの?
せめて、わたくしだけでも愛してあげられたら良かったのに。
ずっと息を潜めて生きることに、何の意味があるのかしら。
「も、もうし、わけ、ございま、せん」
何てことをしてしまったのっ。
デビュタントを迎えて、初めての王城での夜会。必要最低限のものしか出席をしないわたくしは、その最低限のものをやり過ごすために、ささやかな食事を手に会場の隅に移動していたとき。俯くことが癖になっているわたくしは、人様とぶつかってしまい、挙げ句、手に持っていた食事で、その方の衣装を汚してしまったのよ。そして、あろうことか、その人物が、ディレイガルド筆頭公爵家のご当主様。社交の出来ないわたくしでも存じ上げている、この国で、いいえ、世界で最も美しい公爵様。
初めて見たわ。
本当に、なんてお美しいのでしょう。
これ程高貴でお美しい方に、何ということをしてしまったのかしら。会場中が静まり返っている。けれど、わたくしはそんなことさえ気付けない。あまりの美しさに声が出せない。さらに、粗相をしてしまって、もうどうしていいか。パニックを起こしかけていると。
「旦那様、着替えましょう。そちらのご令嬢様は汚れていないようですね。良かったですわ」
公爵様の奥方様が、そう言って公爵様を連れて、行ってしまった。
呆然とするわたくしの頭には、美しいその方しか目に入らなくなっておりました。
ああ、なんて美しい。
醜いわたくしが、声をかけるなんて烏滸がましい。一瞬でも接触出来たこの奇跡に感謝したい。
そのお姿を、一目でもいい。どれだけ遠くからでもいいから、一目見たくて、自分を奮い立たせ、お茶会や夜会にできる限り出席するようになったわ。けれど、会えることはほとんどなくて、ただ陰で嗤われに行っているようなもの。頑張って行っても、ほとんどが泣いて帰ってくるだけ。けれど、会えた日には、天にも昇る気持ちになるの。
ああ、キレイ。
なんてキレイ。
キレイ、キレイね。
全部全部、とってもキレイ。
あなた様を、わたくしにください。
*つづく*
でも、本当はイヤだったの。ずっと、子どもでいたかった。
学園にだって行きたくなかった。貴族の義務なんて、酷いわ。三年も通うなんて、耐えられない。少しでも早く卒業しないと。お兄様もお姉様も、わたくしが表に出ることを嫌がるのよ。わたくしの兄姉だと知られることを、とても嫌がるの。
わかっているわ。
だって、わたくしは醜い。
こんなに醜いわたくしと血が繋がっているなんて、知られたくないわよね。わたくしだってイヤよ。わたくしだって、わたくしがイヤ。
可哀相。可哀相ね、わたくし。
誰からも愛してもらえない。わたくし自身からさえ、好きと言ってもらえない。誰からも見向きもされないわたくしは、一体何のために生まれてきたの?
せめて、わたくしだけでも愛してあげられたら良かったのに。
ずっと息を潜めて生きることに、何の意味があるのかしら。
「も、もうし、わけ、ございま、せん」
何てことをしてしまったのっ。
デビュタントを迎えて、初めての王城での夜会。必要最低限のものしか出席をしないわたくしは、その最低限のものをやり過ごすために、ささやかな食事を手に会場の隅に移動していたとき。俯くことが癖になっているわたくしは、人様とぶつかってしまい、挙げ句、手に持っていた食事で、その方の衣装を汚してしまったのよ。そして、あろうことか、その人物が、ディレイガルド筆頭公爵家のご当主様。社交の出来ないわたくしでも存じ上げている、この国で、いいえ、世界で最も美しい公爵様。
初めて見たわ。
本当に、なんてお美しいのでしょう。
これ程高貴でお美しい方に、何ということをしてしまったのかしら。会場中が静まり返っている。けれど、わたくしはそんなことさえ気付けない。あまりの美しさに声が出せない。さらに、粗相をしてしまって、もうどうしていいか。パニックを起こしかけていると。
「旦那様、着替えましょう。そちらのご令嬢様は汚れていないようですね。良かったですわ」
公爵様の奥方様が、そう言って公爵様を連れて、行ってしまった。
呆然とするわたくしの頭には、美しいその方しか目に入らなくなっておりました。
ああ、なんて美しい。
醜いわたくしが、声をかけるなんて烏滸がましい。一瞬でも接触出来たこの奇跡に感謝したい。
そのお姿を、一目でもいい。どれだけ遠くからでもいいから、一目見たくて、自分を奮い立たせ、お茶会や夜会にできる限り出席するようになったわ。けれど、会えることはほとんどなくて、ただ陰で嗤われに行っているようなもの。頑張って行っても、ほとんどが泣いて帰ってくるだけ。けれど、会えた日には、天にも昇る気持ちになるの。
ああ、キレイ。
なんてキレイ。
キレイ、キレイね。
全部全部、とってもキレイ。
あなた様を、わたくしにください。
*つづく*
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