美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛

らがまふぃん

文字の大きさ
69 / 82
ばんがいへん

護衛という名の影たちの苦悩

しおりを挟む
 我があるじは、非常に奥方様を愛しておられる。
 奥方様の護衛として選出されたのは五人。内四人は男だ。何が言いたいかおわかりだろうか。
 主の視線が痛い。
 奥方様に、四六時中男が張り付いていることが赦せないようだ。
 我々影になる者たちは、ディレイガルド家の系譜の者たち。代々の当主に共通して言えることは、奥方様への執着が凄い。中でも現当主エリアスト様は、歴代一位を飾れるのではないかと言うほど。
 いや、わかっている。わかっているんだ、主とて。
 選出された五人は、影の中での上位五人。奥方様の身の安全が一番。血を吐く思いで、断腸の思いで、我々を奥方様の護衛にしたのだ。本当だったら、護衛をすべて女性で固めたい。いや、本当の本当は、主自らが奥方様の側にいたいのだ。自分が側にいられない代わりを任せることすら、主には耐え難いようだ。それでも奥方様に笑っていて欲しいから、邸に閉じ込めたりせず、自由を与えている。それを奥方様もわかっているようで、不要な外出はしない。主の心に常に配慮している、素晴らしい方なのだ。
 そして時々我々護衛に差し入れもしてくださる。もちろん主の許可を得た上でのものだ。さらに当然のことながら、奥方様チョイスの差し入れではない。なんと驚くべきことに、主自ら選んだものをくださる。何と言うか、例えそれが道端の花一つだとしても、もの凄く凄い物をいただいているような気になる。いや、それはそれで何か本当に凄いな。主が道端で花を摘むって。
 話が逸れた。
 そう、主の無茶振りが酷いことも、我々の悩みの種だ。
 護衛対象である奥方様の声を聞くことも許し難いと言うので、声の届かないギリギリに位置取る。けれど、何かあったらその身を盾にしろと言う。一瞬で奥方様の壁となれるよう、脚力を上げねば。奥方様は穏やかに話をされる方なので、然程離れずに済んでいることはありがたい。きっと奥方様は、そうして我々に配慮してくださっているのだ。ただ、茶会においてのみ、唯一の女護衛が側にいることを許可している。ただし、口論程度では我々が動くことを奥方様が許可をしない。危害へと発展しそうな場合のみ、我々が介入することを許されている。その裁量は我々に任せてくださっているので、僅かでもその気配を感じると、すかさず介入する。奥方様が、我々の判断の早さに苦笑している気配を感じるが、何かあってからでは遅すぎるのだ。我々の首が(物理的に)飛ぶのは構わない。奥方様は本当に素晴らしい方なので、ただただ穏やかに過ごして欲しい、それだけだ。
 声を聞くことすらダメだと言うのだから、当然触れるなんて以ての外。そのため、小石につまずいて転倒してしまうことさえ防ぐために、我々はフル稼働だ。
 それから、我々ディレイガルドの護衛は、護衛対象より大切なものがあってはならない。万が一にも迷うことがあってはならないからだ。そのことから、当然奥方様が一番となるわけなのだが。
 「貴様らに等しく価値はない。エルシィのためだけに生き、エルシィのためだけに死ね」
 主のその言葉に我々が命を捧げる礼をとると、主の顔が不機嫌になった。
 「貴様ら如きがエルシィのことを考えることすら烏滸おこがましいと思わないか」
 もうどうしたいの、主。どうしたらいいの。
 一番困ることは、奥方様を見るなと言う命令だ。護衛対象を見るなって、主。もう我々の視界は、奥方様にエフェクトをかけるしかない。
 まさに、万難ばんなんを排して警護にあたっているわけである。
 でも主。見るな、という命令だけは、何とかなりませんか。


*おしまい*

次でばんがいへん最後になります。
全五話、婚約初期の頃のようなエル様が出てくる、架空のお話しです。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

地味な私では退屈だったのでしょう? 最強聖騎士団長の溺愛妃になったので、元婚約者はどうぞお好きに

有賀冬馬
恋愛
「君と一緒にいると退屈だ」――そう言って、婚約者の伯爵令息カイル様は、私を捨てた。 選んだのは、華やかで社交的な公爵令嬢。 地味で無口な私には、誰も見向きもしない……そう思っていたのに。 失意のまま辺境へ向かった私が出会ったのは、偶然にも国中の騎士の頂点に立つ、最強の聖騎士団長でした。 「君は、僕にとってかけがえのない存在だ」 彼の優しさに触れ、私の世界は色づき始める。 そして、私は彼の正妃として王都へ……

《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。

ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」 その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。

【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!

りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。 食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。 だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。 食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。 パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。 そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。 王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。 そんなの自分でしろ!!!!!

【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。 その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。 しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。 絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。 記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。 夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。 ◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆ *旧題:転生したら悪妻でした

悪役令嬢と誤解され冷遇されていたのに、目覚めたら夫が豹変して求愛してくるのですが?

いりん
恋愛
初恋の人と結婚できたーー これから幸せに2人で暮らしていける…そう思ったのに。 「私は夫としての務めを果たすつもりはない。」 「君を好きになることはない。必要以上に話し掛けないでくれ」 冷たく拒絶され、離婚届けを取り寄せた。 あと2週間で届くーーそうしたら、解放してあげよう。 ショックで熱をだし寝込むこと1週間。 目覚めると夫がなぜか豹変していて…!? 「君から話し掛けてくれないのか?」 「もう君が隣にいないのは考えられない」 無口不器用夫×優しい鈍感妻 すれ違いから始まる両片思いストーリー

「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い

腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。 お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。 当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。 彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。

仕事で疲れて会えないと、恋人に距離を置かれましたが、彼の上司に溺愛されているので幸せです!

ぽんちゃん
恋愛
 ――仕事で疲れて会えない。  十年付き合ってきた恋人を支えてきたけど、いつも後回しにされる日々。  記念日すら仕事を優先する彼に、十分だけでいいから会いたいとお願いすると、『距離を置こう』と言われてしまう。  そして、思い出の高級レストランで、予約した席に座る恋人が、他の女性と食事をしているところを目撃してしまい――!?

処理中です...