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4 外れて欲しい予感 スウィーディーside
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「あ」
救護室に向かう途中、あの人の姿が見えて、ついコノアの影に隠れてしまった。でも許して欲しい。あの人、本当に怖いの。
「どうした」
コノアはそう言って背中に隠れるあたしを見る。どうしよう。あの人が怖いなんて、信じてくれるかな。だって、あの人、表の評判はとってもいいんだもの。あの人があたしにしていることを言ったところで、誰も信じてくれない。それどころか、あたしが嘘を吐いてるって、あの人の凄さに嫉妬してるって言われちゃうのはわかっているの。
「う、ううん。何でもないの」
「だが、さっきより具合が悪そうだ」
気遣う言葉に嬉しくなる。それだけで、あたしは笑顔になれる。だから、大丈夫だよって言おうとしたら。
「ご機嫌よう。あなたが隣国の留学より戻られたクルード子爵令息様ですわね」
「はい」
向こうからコノアに声をかけてきた。そうだよね、コノア、カッコイイもの。ユセフィラ様だって、気になっちゃうよね。でも、どうしよう。また、ユセフィラ様に何か言われたら。
「わたくし、ワーテラー公爵が娘、ユセフィラ・サウロ・ワーテラーと申します」
「クルード子爵嫡男、コノア・クルードです。あなた様がワーテラー公爵令嬢様でしたか。隣国にもあなた様の噂は届いておりました」
あのユセフィラ様に臆することなく挨拶をするなんて、コノア、凄い。あたしが今まで見てきた人たちだって、こんなにそつなく熟せなかった。コノアは子爵家だけど、留学するくらい優秀だものね。隣国では、きっともっと洗練された人たちに揉まれていたのかな。
「まあ、怖い。良い噂であれば良いのですけれど」
「聡明にて清廉、思慮深く、慈悲深く、何より月の女神の如く美しい。なるほど、噂に違わぬようですね」
そうか。コノアみたいに素敵な人から見ても、ユセフィラ様は素敵なんだね。でも、ユセフィラ様には、リスラン様っていう、とってもとっても素敵な婚約者がいるのよ。コノアが好きになっても、ダメなんだよ。ううん、それだけじゃない。本当のユセフィラ様を知ったら、傷つくのは、コノアなんだよ。
「なんてお上手。噂の半分でも実現できるよう、精進しなくてはなりませんね」
「噂以上で驚いていますよ。お声がけいただけたこと、隣国の友人に自慢しましょう」
「お手柔らかにお願いしますわ。実際にお会いしたときにガッカリされてしまいますもの」
「まさか。お目にかかる栄誉に深く感謝するでしょう」
微笑み合う二人に、ユセフィラ様とよく一緒にいる令嬢たちが、感嘆の溜め息を零している。その内の一人があたしに気付くと、冷ややかな目になった。他の令嬢たちと何か話をしている。あたしが俯いてスカートを握ったとき、ユセフィラ様があたしに声をかけてきた。
「まあ、オプト伯爵嬢様、ご機嫌よう」
「ご、ご機嫌よう、ワーテラー公爵令嬢様」
慌ててあたしは頭を下げる。
「知り合いだったのか」
「え、あ、うん」
コノアの驚いたような声に、変な返事をしちゃった。怪しまれてないといいな。
「ああ、ワーテラー公爵令嬢様、皆さまも、お引き留めしてしまいましたね。ではこれにて失礼いたします」
少しの間の後、コノアがユセフィラ様たちにそう言って頭を下げた。
「あ、あの、失礼、します」
あたしも慌てて頭を下げると、ユセフィラ様たちの視線を、頭に感じた。でもすぐにユセフィラ様たちも「ご機嫌よう」と去って行った。その背中を見つめていると、コノアが「行くぞ」と声をかけてくれた。あたしは頷いて歩き出す。
「さっきより具合が悪そうだ。足を止めて悪かったな」
コノアは優しい。優しいコノアに、傷ついて欲しくないな。だから、ユセフィラ様に、惹かれないで、コノア。
*つづく*
救護室に向かう途中、あの人の姿が見えて、ついコノアの影に隠れてしまった。でも許して欲しい。あの人、本当に怖いの。
「どうした」
コノアはそう言って背中に隠れるあたしを見る。どうしよう。あの人が怖いなんて、信じてくれるかな。だって、あの人、表の評判はとってもいいんだもの。あの人があたしにしていることを言ったところで、誰も信じてくれない。それどころか、あたしが嘘を吐いてるって、あの人の凄さに嫉妬してるって言われちゃうのはわかっているの。
「う、ううん。何でもないの」
「だが、さっきより具合が悪そうだ」
気遣う言葉に嬉しくなる。それだけで、あたしは笑顔になれる。だから、大丈夫だよって言おうとしたら。
「ご機嫌よう。あなたが隣国の留学より戻られたクルード子爵令息様ですわね」
「はい」
向こうからコノアに声をかけてきた。そうだよね、コノア、カッコイイもの。ユセフィラ様だって、気になっちゃうよね。でも、どうしよう。また、ユセフィラ様に何か言われたら。
「わたくし、ワーテラー公爵が娘、ユセフィラ・サウロ・ワーテラーと申します」
「クルード子爵嫡男、コノア・クルードです。あなた様がワーテラー公爵令嬢様でしたか。隣国にもあなた様の噂は届いておりました」
あのユセフィラ様に臆することなく挨拶をするなんて、コノア、凄い。あたしが今まで見てきた人たちだって、こんなにそつなく熟せなかった。コノアは子爵家だけど、留学するくらい優秀だものね。隣国では、きっともっと洗練された人たちに揉まれていたのかな。
「まあ、怖い。良い噂であれば良いのですけれど」
「聡明にて清廉、思慮深く、慈悲深く、何より月の女神の如く美しい。なるほど、噂に違わぬようですね」
そうか。コノアみたいに素敵な人から見ても、ユセフィラ様は素敵なんだね。でも、ユセフィラ様には、リスラン様っていう、とってもとっても素敵な婚約者がいるのよ。コノアが好きになっても、ダメなんだよ。ううん、それだけじゃない。本当のユセフィラ様を知ったら、傷つくのは、コノアなんだよ。
「なんてお上手。噂の半分でも実現できるよう、精進しなくてはなりませんね」
「噂以上で驚いていますよ。お声がけいただけたこと、隣国の友人に自慢しましょう」
「お手柔らかにお願いしますわ。実際にお会いしたときにガッカリされてしまいますもの」
「まさか。お目にかかる栄誉に深く感謝するでしょう」
微笑み合う二人に、ユセフィラ様とよく一緒にいる令嬢たちが、感嘆の溜め息を零している。その内の一人があたしに気付くと、冷ややかな目になった。他の令嬢たちと何か話をしている。あたしが俯いてスカートを握ったとき、ユセフィラ様があたしに声をかけてきた。
「まあ、オプト伯爵嬢様、ご機嫌よう」
「ご、ご機嫌よう、ワーテラー公爵令嬢様」
慌ててあたしは頭を下げる。
「知り合いだったのか」
「え、あ、うん」
コノアの驚いたような声に、変な返事をしちゃった。怪しまれてないといいな。
「ああ、ワーテラー公爵令嬢様、皆さまも、お引き留めしてしまいましたね。ではこれにて失礼いたします」
少しの間の後、コノアがユセフィラ様たちにそう言って頭を下げた。
「あ、あの、失礼、します」
あたしも慌てて頭を下げると、ユセフィラ様たちの視線を、頭に感じた。でもすぐにユセフィラ様たちも「ご機嫌よう」と去って行った。その背中を見つめていると、コノアが「行くぞ」と声をかけてくれた。あたしは頷いて歩き出す。
「さっきより具合が悪そうだ。足を止めて悪かったな」
コノアは優しい。優しいコノアに、傷ついて欲しくないな。だから、ユセフィラ様に、惹かれないで、コノア。
*つづく*
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