転生したら王族だった

みみっく

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第三章 ‐ 戦争の影

186話 迷惑な客人

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「シオンくん、頑張ってねっ♪」と軽く声をかけると、シオンは小さく頷いて前に進み出た。その幼い姿には魔王らしい気概が垣間見えるものの、やはり可愛らしさが際立っていた。

 シオンは獲物を手に取りながら仕分けを始め、「んしょ、これダメぇ。レイニーさまがお腹を痛めちゃう! わ、これ、おいしいやつだっ! ん……しょ、これ、おっきいし、これが良いっ!」と一生懸命に作業を進めていた。その小さな声が響くたび、場の空気が和らいでいくようだった。

 その時、遠くから轟音が近づいてくるのが聞こえ、微かに地面が揺れるのを感じた。視界には木々が次々と倒されていく様子が入り、次第にその正体が姿を現した。ガルムが帰還してきたのだ。その巨大な体は迫力満点で、その口には大きなクマのような獲物をくわえていた。

「え? あ、あぁ……。」

 レイニーは一瞬その光景に驚いた後、すぐにその状況を理解した。「なるほど……小さな小動物は僅かな物音でも逃げてしまうが、大きな狩る立場の獣や魔物は多少の物音には動じずに逆に縄張りが荒らされたと逆に近寄ってくるんだなぁ。」レイニーはガルムの狩りの手腕に感心しながら、褒めるように呟いた。

「さすがガルムだなっ。」レイニーは満足そうに笑みを浮かべたが、ふと心配そうに首を傾げた。「あ、でも……味は、どうなんだろぅ……?」彼の視線はガルムが持ち帰った獲物に注がれ、その大きさに圧倒されながらも、一抹の疑念を抱いていた。

 ガルムはその言葉に反応するかのように尻尾を軽く揺らし、目を細めてレイニーを見つめた。その仕草はまるで「俺を信じろ」と言っているようで、彼の自信が感じられるものだった。

 崖の上の広いスペースでは、焚き火が心地よく燃え、暖かな炎の揺らめきが辺りを照らしていた。シオンは器用に獲物を捌きながら、人型の魔物たちに解体を手伝ってもらい、一緒に作業を進めていた。手際の良さは見事なもので、その幼い姿からは想像もつかないほどの熟練した動きに魔物たちも感心していた。

 用意されたのは、シオンが選んだ数種類の獲物とガルムが狩ってきた大きな獲物だった。ガルムが誇らしげに持ち帰ったその巨大なクマのような獲物を見た瞬間、シオンの顔が一瞬引き攣ったのを俺は見逃さなかった。彼の表情から読み取れるのは、戸惑いや驚き、さらには微かな不安のような感情だった。

「その反応って……どっちだろ?」俺は心の中で考えを巡らせた。獲物が凶暴すぎて狩るのが難しいということなのか、それとも味が不味いと察しているのか。シオンの動きは正確ながらも、その微妙な表情は何かを物語っているようだった。

 ガルムはそんなシオンの反応など気にも留めず、誇らしげに尻尾を揺らしながら焚き火のそばで静かに座っていた。その姿は堂々としており、自分の狩りの手腕に絶対の自信を持っている様子が伺えた。

 シオンは少し気まずそうに顔を横に向けながら、ガルムの獲物を調理する準備に取り掛かった。その幼い手が器用に動くたび、焚き火の温かな炎が獲物を柔らかに照らし、場にはほのぼのとした空気が漂っていた。しかし、平穏な雰囲気も束の間、森の奥から微かに感じる威圧的な気配が場の緊張をかき立てた。お客さんのお出ましだ。

「ん? 邪魔者が来ましたよ、レイニーさまぁ。」

 シオンが獲物を調理しながら冷静に知らせてきた。その声に視線を向けると、彼は作業を止めることなく手際良く調理を続けている。

「だなぁ……。忙しいのにねっ。」

 俺はまるで人ごとのように気軽な調子で答えた。森の中から迫り来る大規模な魔物の軍勢の気配を感じていても、その圧迫感を特に気に留める様子もなく、むしろシオンの動きを眺めて楽しんでいた。

「ボク、料理ちゅうですっ!」

 シオンは俺の意図を察したのか、可愛らしい頬をぷくーと膨らませて言い返してきた。その仕草があまりにも愛らしくて思わず目を細めた。

 そう、その表情が見たかったんだぁ~♪ シオンの豊かな表情は本当に可愛らしい。森の奥で迫り来る危険よりも、今この瞬間、目の前にいるシオンの様子に心を奪われている自分がいる。まるで緊張感を感じる必要なんてないかのように、俺はその可愛さに思わず心の中で笑みを浮かべた。

「レイニーさまぁ……にやにやしてないで、邪魔者を蹴散らしてくださいよぅ。」シオンが軽く言ってきた。

 えぇー。この軍勢って魔王軍でしょー? 俺が討伐しちゃうとさぁ……。魔王の交代とか転生とかに巻き込まれちゃって、面倒になりそうじゃん?

 そんな話をしているうちに、森の中から感じる魔王軍の気配が徐々に濃厚になり、着々とこちらへと近づいてきていた。その圧迫感と威圧感が次第に場を包み込み、人型の魔物たちは明らかに動揺し始めていた。彼らの表情には不安と恐れが浮かび、落ち着かない様子で周囲を伺っている。
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