転生したら王族だった

みみっく

文字の大きさ
206 / 223
第三章 ‐ 戦争の影

206話 変わる世界と、変わらない心

しおりを挟む
 ミミナは、直感で安全な植物の場所が分かる才能を活かし、薬草採取や安全なルートの探索を担うことになった。

「ほら、見て見て~っ!ここ、風が甘いにおいしたから来てみたら、やっぱりあった~!この白い葉っぱ、煎じるとお腹にいいんだってー!」

 彼女がそう叫ぶと、ルフィアが笑いながらうなずいた。

「すごいねー、ミミナ。わたしでも見落とす場所に、ちゃんと気づいてたんだぁ。これ、すぐ乾かして薬庫に入れよっ。」

 子どもたちも興味津々でミミナのあとをついて回る。

「ミミナお姉ちゃん!この葉っぱは?」「うーん、これはちょっと苦いかも~!ルルナはどう思う~?」

 そんなふうに、彼女はあっという間にみんなの“お姉ちゃん”になっていった。


 ルルナは、人の心の機微を読む力を使って、主に新しく来た子や心に傷を負った人のそばに寄り添う係に。

 言葉が出ない獣人の男の子の隣に、そっと座って微笑む。

「……うん、こわかったよね。でも、もう大丈夫だよ。お姫さまがね、“こわくない場所”をくれたから……」

 その子は、ぽろりと涙をこぼしながら、ルルナに抱きついた。

 アリシアは少し離れたところでその光景を見つめ、そっと目を細めた。

「あなたは……不思議な子ね。誰かの痛みを、言葉じゃなく感じて、癒す力がある。大切な人よ、ルルナ」

 ルルナは照れくさそうに、でも嬉しそうにアリシアに微笑みかける。


 その夜、村の広場には焚き火が焚かれ、子どもたちが笑いながら踊っていた。

「レイ兄ーっ! これ、さっき拾った絵本! 明日読んでねーっ!」
「うんうん、ルルナも一緒に読む~!」

 ミミナが大事そうに絵本を抱えてはしゃぎ、ルルナは小さくうなずいてセリーナの手を握る。

「……お姫さま、また、手、つないでもいい……?」

「……ふん、仕方ないわね。ほんの少しだけよ?」

 セリーナはわざとそっけなく言いながら、ぎゅっと優しく握り返す。
 その小さな手は、いつの間にか、彼女の心の中にも温もりをくれ始めていた。

 そして――
 ミミナとルルナは、今やこの村にとってかけがえのない存在になりつつあった。
 守られるだけじゃない、“支える力”を持った小さな命たち。

 レイニーは空を見上げながら、ぽつりとつぶやく。

「……あの子たちがいるなら、この村……もっとあったかくなるよね。なぁ、フィオナ」

 ――星のまたたく夜の下で、村づくりは静かに、でも確かに前へと進んでいた。


 村の朝は、王都とはまるで違う。
 きらきらしたタイルの廊下もなければ、召使たちの気配もしない。だけど、どこか“満ちている”空気がある。

 セリーナは、小さな木製の椅子にちょこんと腰かけ、エプロン姿のまま、野菜の皮をむいていた。
 慣れない包丁に悪戦苦闘しながらも、隣のミーニャが笑顔で見守ってくれている。

「にんじんはね、こうやって、くるくるってまわすと、うまく剥けるよ~」

「そ、そんなの知ってるわよっ……! ただ……その、包丁がちょっと鈍いだけっ!」

 ぷいっとそっぽを向きながらも、セリーナの指は明らかに震えている。
 それでも逃げない。――ここでは、逃げる理由がない。

「……お姫さまって、野菜も剥けるんだぁ……!」
 近くで見ていた子どもが、ぽつりと漏らす。

 セリーナは一瞬、その言葉に肩をびくっとさせた。

(“お姫さま”……)

 昔なら誇りを持って受け止めていたその言葉が、今はどこか、くすぐったくて、少しだけ……さびしい。

 でも、隣にいたルルナが小さく、ほほえんで言った。

「セリーナは、わたしのたいせつな“おねえちゃん”だよ」

 その一言に、胸の奥で何かがやさしくほどけた。

「……ふふ。そうね、もう“お姫さま”じゃないもの。私はただのセリーナ。にんじんの皮をむくのに必死な、村の女の子よ」


 午後、セリーナは村の小さな畑に立っていた。
 軽い農具を手に持ち、土の感触に眉をひそめながら、足元を見つめる。

「……靴が泥だらけ……!」

「当たり前でしょ、畑だもん~!」
 ミミナがぴょんっと跳ねて、軽やかにスコップを動かす。

「こういうのも、だいじな“村の守り方”なんだよ? 食べものが育たないと、みんな困るでしょ?」

 言われてみればその通りだった。
 セリーナはそっとしゃがみこみ、指で土を掘る。

(泥って、こんなに……やわらかいのね)

 王城で美術や詩や舞踏ばかり習っていた彼女にとって、土のにおいは“汚れ”だった。
 でも今は、ただ……ほんの少し、温かく感じる。

 汗をぬぐうと、アリシアがタオルを差し出した。

「似合ってるわ、セリーナ。ドレスじゃなくても、あなたは美しい」

「……お世辞を言っても、畑仕事は交代しないわよ?」

「いいのよ。だってあなた、今……ほんとうに“自分の手”でここに立ってるもの」

 ふたりは、互いにくすっと笑い合った。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

小さな貴族は色々最強!?

谷 優
ファンタジー
神様の手違いによって、別の世界の人間として生まれた清水 尊。 本来存在しない世界の異物を排除しようと見えざる者の手が働き、不運にも9歳という若さで息を引き取った。 神様はお詫びとして、記憶を持ったままの転生、そして加護を授けることを約束した。 その結果、異世界の貴族、侯爵家ウィリアム・ヴェスターとして生まれ変ることに。 転生先は優しい両親と、ちょっぴり愛の強い兄のいるとっても幸せな家庭であった。 魔法属性検査の日、ウィリアムは自分の属性に驚愕して__。 ウィリアムは、もふもふな友達と共に神様から貰った加護で皆を癒していく。

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

乙女ゲームの隠れチートモブ〜誰も知らないキャラを転生者は知っていた。〜

浅木永利 アサキエイリ
ファンタジー
異世界に転生した主人公が楽しく生きる物語 その裏は、、、自分の目で見な。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。 《作者からのお知らせ!》 ※2025/11月中旬、  辺境領主の3巻が刊行となります。 今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。 【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん! ※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

スキル買います

モモん
ファンタジー
「お前との婚約を破棄する!」 ローズ聖国の国立学園第139期卒業記念パーティーの日、第3王子シュナル=ローズレアは婚約者であるレイミ・ベルナール子爵家息女に宣言した。 見習い聖女であるレイミは、実は対価と引き換えにスキルを買い取ることのできる特殊な能力を有していた。 婚約破棄を受け入れる事を対価に、王子と聖女から特殊なスキルを受け取ったレイミは、そのまま姿を消した。 レイミと王妃の一族には、数年前から続く確執があり、いずれ王子と聖女のスキル消失が判明すれば、原因がレイミとの婚約破棄にあると疑われるのは明白だ。 そして、レイミを鑑定すれば消えたスキルをレイミがもっている事は明確になってしまうからだ。 かくして、子爵令嬢の逃走劇が幕を開ける。

処理中です...