転生したら王族だった

みみっく

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第二章 ‐ 迫害と対立と交流と絆

100話 グリムファング王国との話し合いの続き1

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「はい。それでは、後日必ず持参してまいります!」
 ミアパパが敬語で答える姿には、さすがに違和感を覚える。いやいや、王が子供相手に敬語って……おかしいでしょ。それにしても、また厄介ごとが増えた気しかしない。

「ミア、後で話があるからぁぁぁっ!」
 俺は頬を膨らませながら、じっとミアを見つめる。あくまでも冷静に伝えたつもりだけど、ついつい感情が表情に出てしまった。

「は、はぁい……」
 ミアは俯きながら、しゅんとした様子で小さく返事をする。その態度は反省しているように見えるけれど、心の中ではどうなんだろうな。外交に詳しそうだから任せてみようかとも思ったけど……どうも頼りない気がしてきたな。

 なら、セラフィーナが候補になるかな。頼りにしすぎる気もするけど、ほかに誰か適任がいればいいんだけどなぁ……ルミエールも穏やかな性格で悪くないと思うけど、問題は知識か。知識は覚えれば何とかなるし、あとは経験を積ませれば成長するだろうな。うん、よし。ルミエールに決めようっと! 将来性も含めて期待できるしな。

「ルミエールも、後で話があるからね。」
 俺はニコッと微笑みながら言った。

「えっ? わ、わたし、何もしてませんよ!? どうしてですかぁ……?」
 ルミエールが慌てた様子で返事をしてきた。その姿は、まるでこれから怒られる子供が必死に言い訳をしているみたいで可愛らしい。見た目が子供の姿だから、その様子に特に違和感はないけれど、それにしても微笑ましいな。

 実際、ルミエールには相手の思考を読むスキルがある。だけど俺は恥ずかしさを隠すために「思考の隠蔽」スキルを使っていて、ルミエールからは俺の思考が読めなくなっている。

「さぁ……どうしてでしょうね~。」
 俺はちょっと意地悪な気分でルミエールをからかうように返答した。

「むぅ……レイニーくんのイジワル! レイニーくんだけ、思考が読めないんだからねっ! 不安になっちゃうよぅ……」
 頬をぷくっと膨らませ、少し拗ねたようにルミエールが言い返してくる。その様子がまたなんとも可愛らしい。俺が思考の隠蔽を始めてから、ルミエールはやたらと質問や確認をしてくるようになったけれど、その仕草一つ一つが微笑ましくて、ついつい目を細めて見てしまう。

 かわいいなぁ、本当にぃ~。

「注意とかじゃないから心配しないで大丈夫だよ」と笑顔で伝えたことで、ルミエールが安心した様子で微笑む姿は、なんとも可愛らしいね。こういう瞬間があると、つい和んでしまう。

 それにしても、相手の思考を読めるスキルや魔法が人間に存在しないのは、ある意味で幸運かもしれない。もしそんな能力を持つ人間がいたら、確かに周囲から気味悪がられるだろうし、精神的な負担も計り知れない。人の考えがすべて分かってしまうなんて、想像するだけで恐ろしいよね。

 軍事的には魅力的な能力かもしれないけど、扱いが難しいのは間違いない。極秘事項を扱う人間を近づけられないどころか、本人がその重圧に耐えられなくなる可能性が高い。周囲の視線や孤立感、そして自分の中での葛藤――それらが積み重なれば、精神崩壊してしまうのも無理はない。

 結局、そんな能力を持つことが幸せかどうかは疑問だよね。能力があっても、それを活かせる環境や支えがなければ、むしろ不幸を招くことになりかねない。だからこそ、ルミエールのようにその力を受け入れ、周囲と調和しながら生きている姿は、本当に素晴らしいと思うよ。彼女の存在が、少しでも周りに安心感を与えているのなら、それだけで十分価値があるんじゃないかな。
 
「それで、この村に来た目的だけどさぁ……初めは、この村の様子の調査と話し合いって言ってたよね? で、さっきミアパパには、『国交を結ぶために来た』って言ってたけど?」
 俺はダミエンをじっと見つめながら問いかけた。話し合いと国交を結ぶなんて、目的が大きく違うだろう。それがどうしても気になった。

 話し合いなら個々との対話で済む話だ。でも、国交を結ぶとなればそれは王国と王国の間で話し合うレベルの問題。そんな重大なことを軍のお偉いさんが勝手に決めていいわけがない。それに、そもそも王国と村の国交なんて成立するのか? 王様が認めるわけがないんじゃないか。それどころか、周りの王国にとっては威信に関わる問題になりかねないだろう。

「そ、そうですね。まずは話し合いからですかね……。」
 ダミエンはやや動揺しながら答えを返した。「のちには国交を結びたいと思っておりました。少し急ぎすぎたかもしれませんね……。」
 彼の言葉には反省の色が見えるが、どこか逃げ道を探しているようにも感じる。

「ふぅ~ん、話し合いは、どうでもいいから国交を結んで安心したいみたい。レイニーくんを脅威だと思ってるよ。」
 隣に座っていたルミエールが、小声でそう告げた。その声は小さいとはいえ、わざと相手にも聞こえるように話しているのがわかる。わざわざそんな話し方をするなんて、ルミエールらしいやり方だ。

 俺には口に出さずとも会話できる特別な方法があるけれど、今回はパフォーマンスとしてこの方法を選んだ。それも、相手にさりげなくプレッシャーを与えるため。相手が自分たちをどう見ているのか、その本音が見え隠れするのが面白い。

「ルミエール、程々にね~。」
 俺は小声で彼女に念を押す。こういうやり取りが相手に与える影響を見極めるのも、策を巡らせる上では重要だ。彼女が放つ一言一言が、予想以上に大きな効果を発揮しているようだ。

 ルミエールの天真爛漫な態度と、計算された行動が絶妙に混ざり合う様子に、俺は思わず内心で微笑む。やっぱり、このやり方は効果的だな。

「え、あ……その……はい。その通りです。我々の王国は、無秩序の森が非常に近くあり……魔物や魔獣の被害にあっております。なので、この村に興味があり、どのような方法で暮らしているのかを知りたくて調査に参りました。」
 ダミエンが慌てた様子で弁明すると、その言葉を聞いていたルミエールがすかさず小声で言葉を紡いだ。

「それ、事実じゃないよ。」
 あっさりと断言するルミエール。その声は小声ながら、わざと相手に聞こえるようにしているのが明らかだ。パフォーマンスとしての見せ場を作りながら、続ける。
「村の存在は知らなかったみたい。なんかね、この森から強大な魔法が放たれて、最強の存在だったワイバーンが焼かれるほどだったんだって。その魔法の放たれた場所の調査だったみたい。それで~村を発見したんだって。調査はホント、でも村の調査じゃないよ。」

 ルミエールはそう語りながら、俺の腕を組んで寄りかかってきた。明らかにリラックスしている様子で、こちらを気遣うどころかどこか楽しんでいるようにも見える。目が合うと、にこっ♪と可愛らしく微笑んでくるその表情に、俺は思わず苦笑いを浮かべた。どうやら、彼女の天真爛漫な態度は相手の緊張感をさらに煽る役割も果たしているようだ。

 「どのようにって言われても……たぶん、無理じゃないかな……。」
 俺はそう言いながら少し肩をすくめた。「付与魔法に結界を使って、魔物や魔獣の侵入を防いでるよ。それに、周りより強い魔物を従者にしたり眷属にしたりかな。」
 その一言で、ダミエンの表情が一瞬驚きに変わり、次には暗く曇っていった。どうやら現実を突きつけられて落ち込んでいるようだ。

「結界もなぁ……魔力を貯めておく大きな魔石が必要だし、膨大な魔力を必要とするし……無理じゃないかなぁ。」
 俺は続けて少し淡々と語り、さらに彼の顔が沈んでいくのを見つめながら思案した。「というよりさ……近くに無秩序の森があるって言うけど、森の中に入ってきてるよね? あれ、野営なの? 開拓しようとしてる感じだけど?」

 その言葉に反応したのは、グリムファング王国軍の兵士たちだ。一瞬にして青褪め、肩を震わせ始めた。その様子から、何かを隠しているのが透けて見える。

「あ、別に良いんだけどね。あまり派手に開拓しなければさ……。」
 俺は少し軽い調子で言いながら、続けて釘を刺した。「あまり派手に開拓していると、無秩序の森には知能が高い魔物も棲んでるから、大きな痛手を受けると思うよ。それで、助けを求められても……助けないからね? 無秩序の森に侵攻してるんだしさ。初めに言ったよね、『攻め込んだ場合は助けないから』って。」

 その言葉に対してダミエンは一瞬ホッとしたような表情を見せたが、俺の話の最後で再び青褪めた表情に戻った。その態度から、彼が抱えるプレッシャーの大きさが見て取れる。
 
「いや、それは……その帰還し、直ちに撤退をするつもりでいました。嘘偽りはございません!」
 ダミエンが焦りながら弁明する。その声には明らかな動揺が混じっていた。そんな彼の言葉を受けて、隣にいるルミエールが口を挟む。

「うん。偽り無いね。それ、ホントだよ。」
 彼女は軽く頷きながら、さらりとフォローを入れる。その声色からは、特に深い感情は読み取れないが、その言葉の裏には独特な洞察力が潜んでいる。

 すると、ダミエンの隣に立っていた偉そうな兵士が低く呟く。「そもそも……無秩序の森に境界線など無いではないか……持ち主もいない森だぞ。」
 その言葉には、どこか苛立ちが感じられる。だが――

「ほぉ、そういうお前らの王国には、境界線があるのか?」
 その瞬間、ミアパパが兵士の言葉に反応し、鋭い視線を向けた。イラッとした表情を隠そうともせず、冷たい声で問いかける。続けて――
「我が王国が、お前らの王国に境界線がなければ、そこを領土にしても文句は無いのだな?」
 その言葉には圧倒的な威圧感が込められていて、その場の空気を一気に張り詰めさせた。

「いや、そもそも……無秩序の森は、誰の領土でも無いはずだぞ……。」
 兵士は震える声で反論するが、その言葉に力強さは感じられない。ミアパパの威圧に完全に押され、彼の態度は明らかに消極的だった。

「は? それは違うぞ。元々は……エルクリプシア王国の領土だったはずだぞ? なぁ……シオンとやら。」
 ミアパパが突然シオンに話を振る。その行動に俺は思わず「おいおい……シオンに話を振るなよなぁ……」と心の中でツッコんだ。魔王とバレたら厄介事が増えちゃうじゃん……

「あぁ。そうだね……。ボクの記憶でも『無秩序の森』はエルクリプシア王国の領土だったなぁ……。」
 シオンが静かに答える。その穏やかな口調とは裏腹に、場の空気には緊張感が漂い始めていた。

「はぁ? そこのガキが、そんな昔の話を知っているわけ無いだろ。話を合わせて答えてるだけではないか!」
 怒りを露わにした兵士が声を荒らげる。その言葉に俺は一瞬で「あ、やっちゃったな」と感じた。

「……なに? ボクが……なに? ガキ……?」
 シオンの声が低く響く。明らかに怒りの感情が表れていて、その場の空気が一気に冷える。……間違いなくシオンくん、怒ってるよね。

 そしてミアパパ――助けてくれてるようで、むしろ状況を引っ掻き回してくる始末。「また、ミアパパが……余計なことした……なんなのさぁ~。」
 そう心の中で呟きながら、俺はミアを見つめた。

「……ごめんなさぁい。お父さん! 少し、だまっててっ! それか、用が済んだんなら帰ってよっ。もお……ふんっ」
 ミアが不機嫌そうにそっぽを向き、ため息をつく。その態度には苛立ちと諦めが混じっている。

「す、すまない。つい……な。」
 ミアパパが小さな声で謝罪する。その様子を見ると、どうやらシオンの本質――古代魔王――について何か知っているのかもしれない。だが、それにしても、シオンの気が収まらなさそうだ。うーん……どうしたらいいものか。
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