転生したら王族だった

みみっく

文字の大きさ
139 / 223
第三章 ‐ 戦争の影

139話 きっかけ_7

しおりを挟む
 小型の犬のような魔獣は動きが素早いが、対処できる程度の速さだし、攻撃力もそれほど高くない。だが、草むらから不意に飛び出してきた魔獣の攻撃をリオンは受け止めきれず、まともに腕に噛みつかれてしまった。

「くそっ。痛ってぇー! こいつ、強いじゃんかー! ウソつきー!! 死んだら化けて出るからなあー!!」リオンは戦闘中にもかかわらず振り向いて文句を言ってきた。

 随分と余裕がありそうじゃん。攻撃を受けて怯んで動けなくなったら助けようと思ってたけど、どうやらその必要もなさそうだ。

「えぇ……化けて出るのは……いやぁ! 他の人の方におねがーい!」俺は軽く冗談を返したが、内心では「というか、死ぬ気なのか!?」とツッコミを入れたくなった。

 リオンは深呼吸をして、小型犬の魔獣をじっと見つめた。その目には覚悟が宿り、攻撃の程度を見極めた彼の雰囲気が一変した。魔獣が再びリオンに飛びかかり、その鋭い牙が彼の腕に食い込むと、血が口元から滴り落ちた。

 しかし、リオンは怯むことなく剣を握り直し、魔獣の動きを冷静に追い始めた。その姿に、彼の成長の兆しを感じ取ることができた。

「ここで決めてやるー!」リオンはショートソードを握りしめ、冷静に敵の動きを追う。一瞬の隙をついて、巧みに剣を繰り出す彼の動きはぎこちないが迫力に満ちていた。

 隠れて木の棒で練習をしていただけの成果が出ていたと思う。今回は、戦闘慣れをしていなかっただけで、単純に動き方が分からず苦戦しただけで、戦闘力には問題なさそうだね。

 魔獣の攻撃をかわしつつ、リオンは正確な一撃を加える。「これで終わりにするんだー!」と叫びながら、敵の急所を狙ってショートソードを突き刺す。魔獣は悲鳴を上げながら地面に崩れ落ち、戦いは終わりを迎えた。

 とどめを刺しホッとしたのか、リオンはその場に力が抜けたように座り込んだ。荒い息を整えた後、立ち上がって剣を鞘に収めながら俺の元へ戻ってきた。

 リオンは笑顔を浮かべながら近寄ってきたが、次の瞬間には目をうるませて文句を言い始めた。「ふぅ……これで勝ちだよね。……って、ウソつきいー!! なにが、弱い相手だよー! 見てよ! これ、血が出てるじゃんかー!」

 リオンの訴えに、俺は肩をすくめながら返した。「……余裕そうだったけどぉ? 冒険者になりたいならさぁ……傷くらいで文句言ってちゃダメじゃない?」と軽く流してみせる。とはいえ、俺自身は血を見るのが苦手だ。正直、彼の腕から滴る血を見るたびに視線をそらしたくなる。

 それにしても、自分が大きな傷を負った経験なんて……せいぜいミーニャから受けた、事故の攻撃くらいしか思い当たらない。そう考えると、リオンが初めての戦闘でこれだけ頑張れたのは大したものだと少し感心してしまう。

「でも、初めてでここまで戦えるのは、思ったよりすごいじゃん。ちゃんと相手を倒せたんだから、自信持ちなよ。」俺は少しだけフォローを入れると、リオンの表情が少し和らいだ。しかし、その表情は徐々に変化し、痛みに耐えきれない様子が見え始めた。

「だ……だめかも……痛い~~~。マジでいたーい。」リオンはそう言いながら腕を見せてきた。服が裂け、傷口から血があふれ出し、腕の服から血がしたたり落ちている。

「わっ。見せなくていいって……! わ、分かった直ぐ治すからぁ……。」俺は慌てて傷口に手をかざし、回復魔法を掛けた。魔法の光が傷口を包み込み、徐々に血が止まり、肌が元通りになっていく。

「あったけーこれ……。わぁ……すごおーい!! 治った! すげえー!」リオンは腕を捲り、傷口をじっと見つめながら触っている。
 
「ほら、これで大丈夫だろ? でも、次はもっと気をつけて戦えよ。傷を負うたびに俺が治すわけじゃないからな。」と軽く注意を促しながら声をかけた。

「うん、ありがとう! レイニーくんって、すごいなぁ……。」リオンは笑顔を浮かべながら感謝の言葉を口にした。その純粋な反応に、俺も自然と笑顔になった。
 
 胸にも爪で引き裂かれて傷が出来ていた。喜んでいた所に腕をかざしたので、胸に触れてしまった。……ふにゅっとした感触が? き、気のせいだよな……。もう一度……触ると、ふにゅっとした柔らかい感触がそこにあった。

「ひゃぁ!? な……何してんだよ!!」リオンが変な声を出し、胸で腕で覆って隠した。

「どうしたんだよー? 胸にも傷があるから治さないとでしょ……? ちゃんと見せてくれないと治せないんだけど」ウソだけど……俺が傷を認識して治すイメージをすれば治るし、体全体を治すイメージをすれば傷を認識しなくても治せるんだけど。触った感触だけじゃ信じられなかったし……なにか柔らかい物に触れただけかもしれないからね。

 リオンが仕方なさそうに、頬を赤くさせて胸を隠していた腕を下したので、着ていた上着を脱がせようと手を伸ばした。「じ、自分で、自分でするから!」と、リオンが言い、着ていた上着を脱ぐと……布地のTシャツのような素材が膨らみ、ふっくらとした胸が見えた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

小さな貴族は色々最強!?

谷 優
ファンタジー
神様の手違いによって、別の世界の人間として生まれた清水 尊。 本来存在しない世界の異物を排除しようと見えざる者の手が働き、不運にも9歳という若さで息を引き取った。 神様はお詫びとして、記憶を持ったままの転生、そして加護を授けることを約束した。 その結果、異世界の貴族、侯爵家ウィリアム・ヴェスターとして生まれ変ることに。 転生先は優しい両親と、ちょっぴり愛の強い兄のいるとっても幸せな家庭であった。 魔法属性検査の日、ウィリアムは自分の属性に驚愕して__。 ウィリアムは、もふもふな友達と共に神様から貰った加護で皆を癒していく。

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

乙女ゲームの隠れチートモブ〜誰も知らないキャラを転生者は知っていた。〜

浅木永利 アサキエイリ
ファンタジー
異世界に転生した主人公が楽しく生きる物語 その裏は、、、自分の目で見な。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。 《作者からのお知らせ!》 ※2025/11月中旬、  辺境領主の3巻が刊行となります。 今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。 【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん! ※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

スキル買います

モモん
ファンタジー
「お前との婚約を破棄する!」 ローズ聖国の国立学園第139期卒業記念パーティーの日、第3王子シュナル=ローズレアは婚約者であるレイミ・ベルナール子爵家息女に宣言した。 見習い聖女であるレイミは、実は対価と引き換えにスキルを買い取ることのできる特殊な能力を有していた。 婚約破棄を受け入れる事を対価に、王子と聖女から特殊なスキルを受け取ったレイミは、そのまま姿を消した。 レイミと王妃の一族には、数年前から続く確執があり、いずれ王子と聖女のスキル消失が判明すれば、原因がレイミとの婚約破棄にあると疑われるのは明白だ。 そして、レイミを鑑定すれば消えたスキルをレイミがもっている事は明確になってしまうからだ。 かくして、子爵令嬢の逃走劇が幕を開ける。

処理中です...