転生したら王族だった

みみっく

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第三章 ‐ 戦争の影

165話 アリシアとすれ違う

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 グリムファングの王城の前に立ち、俺はしばらくその姿を見上げた。その城は壮麗かつ威圧的で、一目見ただけで心がざわつく。うちの王城が平和で友好的な雰囲気を持つのに対して、グリムファングの王城は好戦的な印象を強く与えてくる。全体が鋭利なデザインで構成されていて、その威容には圧倒されるものがある。うん……正直、こわい。
 
 王城に背を向け、俺は再び転移の魔法を使いダミエンの屋敷近くにやってきた。しばらく歩いて屋敷の門へ向かった。何気なく屋敷を覗いていると、掃除をしているメイドさんが目に入った。そして、そのメイドさんと目が合う。彼女は俺を覚えていたらしく、慌てて駆け寄ってきてくれた。

「あ、あのーアリシアいますかー?」俺が尋ねると、メイドさんは少し戸惑った様子を見せながらも、すぐに答えてくれた。

「あ、お嬢様ですか。えっと……朝早くお出かけになりましたよ。お嬢様に久しぶりにお会いできて嬉しかったのですが、朝からご機嫌ナナメでしたよぅ……」メイドさんは、ご丁寧にアリシアの最新情報を教えてくれた。

 マジかぁ!? まだ機嫌が悪いのか。俺は内心驚きつつ、気分が重くなるのを感じた。これは……今日は、一人でフィオナに会いに行ったほうが良いな。機嫌が悪い人と一緒にいると、どうしても俺までイライラしてきちゃうし。
 そもそも、一人で会いに行く予定だったんだからな。うん、そうするのがいいよなぁ。久しぶりに父親と会っているんだし、邪魔しちゃ悪いよなぁ~。昨日は、邪魔しちゃったんだし。

「それじゃ、フィオナへ会いに行きますかぁー♪」軽い調子でつぶやきながらも、心のどこかで少し緊張を覚える。でも、別に意気込む必要もない。転移で移動するだけだし、そんなに大げさなことじゃない……はずだ。

 グリムファング王国に寄った理由は、ただの休息ではなかった。アリシアにゆっくりと過ごしてもらう時間を作るという目的があったし、俺自身も一息つける時間が欲しかったからだ。ついでに、ダミエンにも会っておきたかった。

 それに、俺の本来の目的地はもう決まっている。別行動になるアリシアの安全を確保するため、念のためにリリィを護衛につけることにした。

 俺は自分の影をじっと見つめながら、小さく呟いた。

「リリィ、アリシアの護衛を頼むねっ。」

 その言葉に応えるように、影の中から少し不満げな声が返ってきた。アリシアの護衛を任されたことに、ちょっと拗ねた様子だった。

「わたし、レイニー様のそばにいたいのにぃ……アリシア様は、すぐ怒るし……つまんないよ~」影の中から小さく不満げに漏れるその声に、俺は苦笑しながら肩をすくめた。

「ごめんね、リリィ。でも、アリシアのこと放っとけないし……ね? 俺のかわりに頼りにしてるよっ。帰ったらご褒美あげるからさっ♪」

「うーん……ほんとー? ぜったいだよぉ~?」リリィの声が少し明るくなり、影の揺れもほんのり跳ねたように見えた。単純だけど、そこがまた可愛いところだ。

「もちろんっ! なにがいい? 甘いお菓子? それとも……ぎゅーってしてほしいとかぁ?」俺が茶化すように言うと、リリィの声が慌てて返ってきた。

「なっ……ななな……っ、バカぁっ! レイニー様のエッチぃ~~っ!!」

 あははっ、と笑いながら手を振って、俺はその場から転移の魔法を発動させる。周囲が淡い光で包まれると、その眩しさが一瞬で消えた。そして次の瞬間には、フィオナがいるルナリオン王国へと俺の視界が切り替わっていた。
 
――・◇・――・◇・――・◇・――・◇・――・◇・――

 レイニーがグリムファング王国に転移でやってくる少し前。アリシアは朝早く起きると、手際よく身支度を整えていた。その表情にはどこか不機嫌さが漂っており、準備をしながらリビングでぽつりと呟いた。

「なんで……レイニーくん、わたしを置いていくかなぁ……」

 その声をたまたま通りかかったダミエンが聞きつけ、立ち止まって眉をひそめた。「それは……お前が、宿屋に帰れと言ったからだろ。機嫌が悪い人の近くで過ごそうとは思わんだろ?」

 ダミエンの言葉に、アリシアはムッとした表情で顔を上げた。「……おはようございます。分かっていますけど……まさか、本当に言ってしまわれるとは……思いませんでしたよ。もぉ……」少し拗ねた口調で言いながら、彼女はそっぽを向いてみせた。

 ダミエンはため息をつきながら、腕を組んで彼女を見つめた。「まぁ……お前も少し素直になったらどうだ? レイニー様も分かってるんだろうが、お前がそうやって怒ってると距離を置きたくなるのも無理はないことだぞ。」

「そんなこと分かってますって……でも!」とアリシアは言いかけたが、言葉を飲み込みながら視線を伏せた。

「……はぁ。また、機嫌が悪そうな顔をしているぞ、アリシア。」ダミエンはアリシアに向かって静かに注意をした。普段の彼なら穏やかに伝えるところだが、今日はどこか疲労が滲んでいる。それでも、娘の様子を気にかけずにはいられなかった。
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