転生したら王族だった

みみっく

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第三章 ‐ 戦争の影

164話 セリーナの帰宅で疲労

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「いったい、なんだったんでしょうか?」ダミエンがリビングのソファーに深く寄りかかりながら、重いため息をついて俺に尋ねてきた。彼の表情には、疲労と戸惑いが混ざり合っているように見えた。

「さぁー? 俺に会いに来たらしいけど……疲れたなぁ……」俺は答えながら肩をすくめ、周りを見回した。案の定、全員が疲れたような表情を浮かべていた。そりゃそうだ。めったに会うことがない王女様が突然屋敷に訪ねてくるなんて、緊張しない方がおかしい。

「……モテモテですね、レイニーくん。デレデレしちゃって……」アリシアがムスッとした顔で、少し棘のある声を投げかけてきた。その視線には嫉妬とも取れる感情が垣間見えた。

「アリシア、気持ちは分かるが……発言には気をつけなさい!」ダミエンが静かにため息をつきながら、冷静な声で注意をした。その言葉には疲労が滲んでおり、普段よりも厳しい響きがあった。

「俺も巻き込まれたんだからなぁ……?」俺は軽く肩をすくめ、一応の釈明をしておいた。正直、セリーナの突然の訪問にはかなり振り回されたと思う。

 しかしアリシアはその言葉に食い下がり、ムスッとした顔で返してきた。「ふーん……巻き込まれたですか。デレデレしていたのにですか? 手を握られて嬉しそうにしていましたよねぇ……」その声には珍しく棘があり、いつもなら注意されると引き下がる彼女も、今日は何か違っていた。

「終わりにして寝ようぅ……眠い……ふわぁ~……」俺はあくびをしながら言った。体力も気力も消耗しており、この状況をこれ以上続けるのは辛いと思った。

 しかしアリシアはさらにムスッとした顔で言い返してきた。「宿に帰って寝てくださいよっ! ふんっ……」その口調はいつもより強く、明らかに機嫌が悪かった。

 ダミエンはそのやり取りを静かに見守りながら、深いため息をつき、低い声で呟いた。「まあまあ、アリシア。少し落ち着きなさい。」その言葉には、彼女をなだめようとする父親としての優しさと、今日の一連の出来事に対する疲労が込められていた。
 
「……そう。じゃあ……帰るぅ。おやすみぃ……」レイニーはソファーからゆっくり立ち上がり、転移の魔法を使ってその場を離れた。彼が向かったのは宿ではなく、無秩序の村にある自分の寝室だった。

 寝室に戻ったレイニーが目にしたのは、ベッドで穏やかにすやすやと眠るサクラの姿だった。そのサクラの寝顔は平和そのもので、レイニーは自然と微笑みを浮かべながらそっとベッドに近づいた。そしてサクラの身体を優しく抱きしめると、その温もりに安心感を覚え、幸せに包まれるようにスッと眠りに落ちた。

 その一方で、ダミエンの客間ではアリシアが慌てて立ち上がっていた。「ちょ、ちょっと……待って……あっ。はぁ……」彼女はレイニーを引き留めようとしたものの、転移の魔法が発動してしまった後で間に合わなかった。少し悔しそうな顔をしながら、アリシアはため息をついて再びソファーに腰を下ろした。

 ダミエンは静かにその様子を眺めながら、軽く肩をすくめて呟いた。「まあ、今日は色々と慌ただしかった。休む時間が必要だろう。だが、少し失言だったぞ……」その言葉には、娘とレイニーを気遣う優しさと疲労が滲んでいた。

 客間には次第に静けさが戻り、レイニーのいない空間でそれぞれが今日の出来事を思い返していた。

 翌朝、頰に柔らかな感触を覚えて目を覚ました。サクラが俺の頰に頬ずりをしているのだ。「わっ。おきちゃったぁ。えへへ♪ おはよぉーレイニーくん♡」彼女の明るい声が耳に届き、朝の眠気が幸せな気分が溢れ一気に吹き飛んだ。

 サクラは満面の笑みを浮かべながら、元気いっぱいにベッドの上で跳ねるように動いていた。その無邪気な姿に思わず笑みがこぼれる。「おはよう、サクラ。朝から元気だなぁ。」俺は軽く伸びをした。甘えてくるサクラを抱き寄せ、彼女の頭を優しく撫でた。

「だって、目が覚めたらレイニーくんが一緒にいるんだもん! うれしいんだよぉー♪」サクラはそう言いながら、さらに頰をすり寄せてきた。その仕草があまりにも愛らしく、心が温かくなるのを感じた。

 よし、サクラで癒されたし、さっさと用事を終わらせてくるかっ♪

「帰ってきたのは内緒ね。また、出掛けるけど……すぐに戻るから皆と遊んで待っててね。」俺はサクラの頭を優しく撫でながら微笑みかけた。サクラは少し不満そうな顔をしながらも、頷いて「うん、わかったぁ。でも、早く戻ってきてね!」と元気よく答えた。

 その言葉に安心しながら、俺は転移の魔法を使い、再びグリムファング王国へと戻った。転移の光が消えると、目の前には壮麗な王宮の景色が広がり、冷たい空気が肌に触れる。王国の独特な雰囲気が、再び俺を現実へと引き戻した。

 さて、どーしよー……昨日は眠すぎて、つい転移で帰宅しちゃった。アリシアも機嫌が悪かったし……。あのまま一緒に過ごしてもお互いに楽しく過ごせなかったから、仕方がないよなぁ。うーん……これから、会いに行くのも気が重いんだよなぁ。
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