ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる

文字の大きさ
112 / 188

112 私らしくない提案

しおりを挟む
初級ダンジョン15階で倒れていた3人を地上に送り届けた。

3人は、かつての私と同じスキルなし。「劣等人」だ。


だけど、ダンジョン15階から11階転移装置に向かうときも、外に出て帰る道中も楽しそうだった。1年前まで私のすべてだったのに、私がもう戻れない世界だ。

「あのユリナ・・」

「ん?」

サーラ、カミーラ、タルモが次々と話し出した。

「治療費と、助けてもらった謝礼のことだけど・・」
「今、払えるほど金がないんだよね、ぶっちゃけ」
「必ず払うので、待ってほしいの」

「あ、それは・・」


いらないと言おうとして、私の中の悪魔がささやいた。私は彼女らと縁が切れるのか嫌なのだろう。

「お金はいいから相談に乗って」

「そんなんでいいの?」
「100万ゴールドとか言われるかと思ったよ」
「えへへ、ちょっとビビった」

「3人の今後の予定は?」

「別にないけど」
「あるよサーラ、お金を稼がないと」
「そうだ。今回のダンジョン行きが稼ぎにならなかったから、明日のパン代を何とかしないと。今から薬草採取だよ」

ここで変な提案はできないが、こういうことも想定して子供2人の分も含めてレベル高めラビットを24匹捕まえてある。

「みんなのパン代はあるよ。話したよね。ダンジョンの帰り道にラビットを捕まえたでしょ。割り当ては1人4匹だよ」
「え、ほとんどユリナがつかまえたよね」

「子供を引率するときの約束で、獲った獲物は均等割りって決めてるの。受け取ってくれないと、子供達ももらえなくなるでしょ」

「それは聞いたけどさ・・」
「ありがたくもらおうよ、カミーラ」
「だねサーラ。ありがとう、ユリナ」

「受け取ってくれて良かった。ちょっと付き合って」

◆◆
ギルドを出て、近くの食堂に3人を強引に連れて行って乾杯した。食べ物も山盛り。

「偶然に」サルバさんがいて、一緒に飲むことにした。恐らく、お願いをする流れになる。

乾杯をしながら、頭は回っている。私は寄付なんかをしまくっているが、まだ2000万ゴールドくらい持っている。必要なら、サルバさんたちの主人スマトラさんの力も借りよう。

「さて」
かつての私達4人のような、サーラ、カミーラ、タルモの3人にどう思われるか不安だけど、聞いておきたいことがある。

「私の経歴はギルドで公開している分は知ってる?」
「かなり有名人だもん」
「お酒好きで、強力な攻撃力と回復力を持つ気功術の使い手」
「レベルは高いけど、私達と同じ劣等人を証明するかのような、低いステータス」

「その通りなの。それで、あなた達と帰ってきながら考えたの。かつての私達も仲間4人で一緒に食堂なんて夢を持ってた」
「私達の屋台と似てるね」
「うん、スキルゼロでやれることを考えると、同じ方向に向くのかな」

「だけど、やる気はあっても開業資金も貯まらずに生活がきつかった。料理を勉強する暇もなかった。それを思い出して、戦闘力がない人の受け皿を作るのはどうかなって」
「受け皿ですか」

サルバさんが話に入ってくれた。

「うん。屋台を出している市場横のようなスペースを室内に作るの。イメージは観覧席がないギルドの訓練場」
「なるほど。室内で壁の周りに店を並べ、共有のテーブルと椅子を並べれば可能ですね。すでに南方の街で参考にできそうな形がありますし」

「それなら、一か所で色んなものが食べられる」
「お酒も飲めるよね」
「ユリナがやるの?」

「私は人助けを条件に「名もなき神」からスキルを借りたの。だから閃きを話してみたけど、私が経営をして儲けるのは違うんだよね」
「面白い神様だね」

「それで、場所と資金を提供するから、あなた達が主導して屋台村のようなやつをやらない?」
「え、私達はみんな農村とか狩猟の村出身だから、経営とか分からないよ」

「それでしたら、私がお手伝いしますよ」
「サルバさん、いい?」

「はい。ユリナ様に受けた恩も返していませんし、スマトラ様も喜んで協力してくれると思います」

「へへ。最初からサルバさん達を頼るつもりだったけどね。本当に変な負担にならない?」
「もちろん。前々から興味があったんです。善は急げです、では」

サルバさんが、幻影のように消えた。

「3人ともどうかな。初期メンバーとして、失敗してもいいからやって欲しいんだけど」
「私達で大丈夫かな」
「嬉しい申し出だけど、そこまでして、ユリナにメリットはあるの」
「そうだよ。お金もあるんなら、前の仲間を呼んでやればいいよ。私たちも参加させて欲しいけどね」

「私か・・。私はかつての仲間3人との目標を誰かに達成してもらいたいかな」
「なら、なおさら」

「でも、もう無理なの」
「え」
「私が今の強力スキルを得るきっかけは、仲間とともに死にかけたことなの」
「じゃあ、もしかして」
「そう、料理も下手で取り柄もない私だけが生き残り、仲間3人は目の前で死んだ。いえ、殺された」

「・・・」

「ごめん、かつての自分達のような3人がまぶしかったの。友達の身代わりみたいに思っててごめん」

涙声になった私を3人がなぐさめてくれた。彼女達もダンジョンで遭難しかけて街で仕事を探したかったときだし、結局は受けてくれることになった。

サルバさんがたちまち帰ってきて、早くも物件候補をピックアップしてくれた。
彼女らには「冒険者への指名依頼」という形を取り、経費別の月に50万ゴールドで契約した。

体力面の強化も考えて、もう少し仲良くなれたらオークダンジョンで『超回復』を利用した「人でなし肉壁アタック」をやる。最低でもレベル50のHP150になれば、中級ダンジョン22階のビッグウズラくらいなら自分で獲りに行けるはずだ。


予想以上にサルバさんが協力してくれるし、うまくいきそうな予感がある。



しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

目つきが悪いと仲間に捨てられてから、魔眼で全てを射貫くまで。

桐山じゃろ
ファンタジー
高校二年生の横伏藤太はある日突然、あまり接点のないクラスメイトと一緒に元いた世界からファンタジーな世界へ召喚された。初めのうちは同じ災難にあった者同士仲良くしていたが、横伏だけが強くならない。召喚した連中から「勇者の再来」と言われている不東に「目つきが怖い上に弱すぎる」という理由で、森で魔物にやられた後、そのまま捨てられた。……こんなところで死んでたまるか! 奮起と同時に意味不明理解不能だったスキル[魔眼]が覚醒し無双モードへ突入。その後は別の国で召喚されていた同じ学校の女の子たちに囲まれて一緒に暮らすことに。一方、捨てた連中はなんだか勝手に酷い目に遭っているようです。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを掲載しています。

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

処理中です...