ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる

文字の大きさ
121 / 188

121 ミシェル君

しおりを挟む
初対面のミシェル君を助ける。

なんだか、目を見て吸い込まれそうになった。

同じ男でも、お別れしたリュウとは違う。考えている暇はない。

そうだ、戦闘中だったのに。

「そこの聖騎士、彼を離して。でないと200人のギャラリーの前で恥をかく」
「ははは。ここの領主の長男ライナー殿から聞いているぞ。回復スキルと接近戦持ちか。いい気になっているようだな」

視界の端に武装した人間が沸いてきた。

200人のギャラリーの間を縫って100人が追加された感じ。ライナーが手配した男爵家関連の戦闘員だろう。

「ほほほ、ユリナとやら。お前のスキルには桁違いの回復力があるらしいな。私が有用に使ってやる。抵抗せずに付いて来い」

「ミシェル君をつかまえている聖騎士3人が邪魔。ミールやマルコ君にも手助けしてもらうべきだったかな・・」

つぶやいた瞬間にナイフが飛んで来て、3人の聖騎士の装備の隙間に刺さった。

そしてみんな倒れた。

「なんだ、ナイフがかすっただけなのに、目眩が・・」

「すげ。ちょっと呟いただけで、ミール達が最高の仕事をやってくれたわね」

状況は一見すると悪い。

幅20メートル、奥行き10メートルの壇上に私、ミシェル君。

グレイ司祭と倒れた聖騎士が3人。男爵家長男のライナーも来ていて、ステージを囲むように100人の戦闘員。そしてステージの正面に200人のギャラリーがいる。

「なあ、あんた」

束縛から解放されたミシェル君が口を開いた。

「ミシェル君。自己紹介が遅れたけど、私はユリナ19歳」

「俺と同じ年か。俺のために来てくれたみたいだけど、逃げてくれ。どっかにサポートしてくれる仲間もいるんだろ」

「あなたはどうするの」
「盾になれるか分からないが、「ダーク」の魔法で時間を稼ぐ。ステージの左側から飛び降りてくれ」

安心させる気なのか、笑った。

「ねえミシェル君」
「なに?左に行って逃げてくれ」

「その案は却下よ」
「え?」

私は右手で彼の左手をしっかりつかんだ。

身長差は10センチ程度でつかみやすい位置に手がある。

彼は私の顔を不思議そうに見ている。

そのとき、グレイ司祭が通る声で群衆に訴えだした。

「嘆かわしい。その闇属性の男の毒に侵され、我が同胞の聖騎士3人が倒れました。さらにオルシマの聖女と名高い女性まで現れてくれたのに、毒牙にかけようとしています」

ざわざわざわざわ。

「よって、聖なる魔法の極み「ジャッジメント」で、その穢れた男を浄化して見せます。さあ離れなさいユリナさん」

40歳を幾つか過ぎた風貌。醜く太ったグレイ司祭が、右手を空にかかげた。

単なる光魔法、ジャッジメントを準備している。

「ユリナさん逃げろ!俺が何とかする」

目が合った。またドキッとした。

これはアリサの目。

そしてナリスの目、そしてモナの目だ。

自分も苦しいのに、カナワの街に出て不安だった私を安心させてくれた。

そんな親友たちと同じ強い目だ。

ミシェル君は目隠しの魔法が少し使える程度の「闇魔法適正E」。

今の状況を打破する力はない。

だけど勇気を振り絞って、私を守ろうとしている。

私の目に涙がにじんできた。

死なせてしまった親友3人、そして添い遂げられなかったリュウ。

両方がくれた暖かいものが、ミシェル君に存在する。

この短い間に、私の心に何かが起こってる。

何千の死から蘇り、何人もの人間を殺してしまった。

10メートルのランドドラゴンに立ち向かっても動じないほど、心が鈍くなっている。

そんな私。

なんで、ミシェル君に気持ちがかき乱されているんだろ。


「ミシェル君。今から私と一緒に戦うわよ。すごく痛いけど、強制参加だからね」
「え、あんたは」

「ふふっ」

私は叫んだ。

「グレイ、私の中の「名もなき神」が叫ぶ。助ける者を見間違うなと!」

「しかし、その男は穢れた闇属性ですぞ」

「属性に優劣などない。聖属性や光属性が優れているなどと、私の中の神は言わない」

ミシェルの手を握る手に力を込めた。

「私が回復スキルを使わせてもらう基準は別にある」

「何ですか、基準とは」

「グレイ司祭。嘘で固めた罪状を練り上げるあんたを、名もなき神は大嫌い。心が腐った人間に加担したら、回復スキルを取り上げるそうよ」

「うるさい小娘が。マリルート様に仕える司祭たる私に説教でもする気か!」

来る。

「闇の者を滅せよ、ジャッジメント!」

「強き心をもつミシェルに力を貸して。名もなき神」

ごおっ。

司祭の魔力や魔法適正がどのくらい高いのか知らない。

だけど、司祭の周りに集まった熱量が尋常ではない。

範囲を絞ってもミシェル君だけでなく、私にも光の長槍が向かおうとしている。

カウンターではね返すのみ。

と、思ったが・・・。

ミシェル君が私に抱きついた。

デジャブだ。

リュウと別れた日。リュウも命がけでかばってくれた。

「君も素敵だね、ミシェル君」

『超回復』

ミシェル君の背中、グレイ司祭が放った熱線で服が弾けた。


「破壊的絶対領域」

ばちっ!

ミシェル君の上半身から光魔法が押し飛ばされた。

グレイ、周囲の人間に向かって飛び散った。足元に倒れた聖騎士にもだ。

「ぐあああああ!」

グレイは跳ね返った自分の熱線で左手が弾け飛び、脚も焦げている。

お腹や顔に当たって致命傷を負っていないのが不思議なくらいだ。

いやああああああああああああああ。

惨事が起こっている。

ミシェル君に当たってはね飛ばされた熱線は、熱量は下がっても、広い範囲に拡散した。

イーサイド家の戦闘員、一般市民のギャラリーにも被害が及んでいる。

厳密に言えば犯人は私。てへっ。

だけど、この際、すべての罪をグレイ司祭になすりつけることにした。

「グレイ」
「ぎああああ。腕が、脚が」
「あなたがお望みの回復スキルを見せてあげる」

『超回復』ばちっ。

「え、何が起こった。傷がすべて治っている。そしてお前達までなぜ無事なのだ」

ギャラリーは殺気立っている。

欲深いグレイは、私の能力に気を取られ、肝心なこと忘れてる。

「おおユリナよ、これほどの力があるのか。やはりお前は私と一緒に来るのだ」

「はっ、あなたが無事ならね」

「なんだと」

腹の底から大きな声を出した。

「なぜ、こんなことをしたのよ。見ている人達に魔法を打ち込むなんて、気が狂ったの?グレイ司祭!」

「な、うそだ。おい、とんでもないこと言うな」

殺気だち、手に武器を持った人々が、ステージに上がって来る。

彼らに向かって、グレイ司祭を押した。

しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

目つきが悪いと仲間に捨てられてから、魔眼で全てを射貫くまで。

桐山じゃろ
ファンタジー
高校二年生の横伏藤太はある日突然、あまり接点のないクラスメイトと一緒に元いた世界からファンタジーな世界へ召喚された。初めのうちは同じ災難にあった者同士仲良くしていたが、横伏だけが強くならない。召喚した連中から「勇者の再来」と言われている不東に「目つきが怖い上に弱すぎる」という理由で、森で魔物にやられた後、そのまま捨てられた。……こんなところで死んでたまるか! 奮起と同時に意味不明理解不能だったスキル[魔眼]が覚醒し無双モードへ突入。その後は別の国で召喚されていた同じ学校の女の子たちに囲まれて一緒に暮らすことに。一方、捨てた連中はなんだか勝手に酷い目に遭っているようです。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを掲載しています。

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

追放王子の気ままなクラフト旅

九頭七尾
ファンタジー
前世の記憶を持って生まれたロデス王国の第五王子、セリウス。赤子時代から魔法にのめり込んだ彼は、前世の知識を活かしながら便利な魔道具を次々と作り出していた。しかしそんな彼の存在を脅威に感じた兄の謀略で、僅か十歳のときに王宮から追放されてしまう。「むしろありがたい。世界中をのんびり旅しよう」お陰で自由の身になったセリウスは、様々な魔道具をクラフトしながら気ままな旅を満喫するのだった。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。 「天職なし。最高じゃないか」 しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。 天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

処理中です...