ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる

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144 ジジイまで優しい

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カナミール子爵家の第一夫人、フランソワさんになぐさめられた。

手を引かれ豪華な馬車に乗った。お茶を頂いている。

酒がいいとは、言わない。

私と夫人では境遇がかけ離れすぎているけど、何だか死んだお母さんを思い出した。

優しい。

娘の恩人の片割れということもあるだろうけど、ゆっくりと話を聞いてくれた。

おっとりしているけど、謀反を計画していた三男の話になると、鋭い視線になった。

剥き出しのナイフみたく。

彼女も気楽なばかりでないと分かった。

血のつながりがないとはいえ、「家族」である第三婦人とその息子に命を狙われていた。

貴族家の夫人なんてのは、意外に神経をすり減らすもんだと分かった。

「ありがとうございます、フランソワ夫人。お陰様で少し楽になりました」

「良かったわ。マヤ様だけでなくユリナ様にもお礼がしたいの」

「いえ、そこは、名もなき神との契約なんで・・」

「1000ゴールド以上は渡せないきまりだとかで、困っていましたの。これから繋がりを持たせてもらい、何でもいいから恩を返したいわ」

「マヤに、なにかあげたんですか」

「マヤ様も何も受け取ろうとしないから、困りました。「暁の光」のためという名目で、主人がパーティーハウスを用意する予定です」

「ああ、マヤもみんなのためなら受け取りますね」

「ユリナ様にも・・」

「子爵様には言ったけど、私は「劣等人」でも住める街を作ってくれた、領主様に借りを返しただけです」

父親を褒められ、ちょっとフロマージュが誇らしげだ。

「ところでフロマージュちゃん、なんで親子でこんな場所を通りかかったのかな」

「お爺さまの家に行って、マヤお姉様の腕をお見せするためにです」

「あれ、持ってたんだ」

フロマージュの病気を治すとき、マヤの腕を材料に使って切断した。

あれを大切にくるんで箱に入れている。

前にも聞いたが、フランソワ夫人はカナワの北にある武闘派貴族イツミ伯爵家の出身。

当主のドラグには、孫娘が奇跡的に死病から回復した、それを知らせてある。

ドラグは普通なら飛んで来るような人物らしい。

けど、タイミングが悪い。200キロ西の領に出没したワイバーン討伐の手伝いに行くという。

それが2日後。ドラグが動けず、フロマージュの方から顔を見せにいく。

「マヤお姉様にも来ていただきたかったのですが、義手がなじむまで無理はしたくないと断られました」

そういや、そういう設定だった。実は全快とも言えない。

「けれどユリナお姉様が来て下さって良かったです」

見通しがいい草原地帯の道に入り、イツミ伯爵領の領都イツタンブールが見えてきた。

もちろん、領主と会う気はない。

ここで馬車を降ろしてもらおうとしたら、騎馬20騎が猛スピードで走ってきた。

「馬賊だ!」私は叫んだ。
その距離150メートル。

私は思わず馬車から飛び降りた。

着地失敗で顔面から落ちた。

『超回復』で体を治し、馬車の前に出て臨戦態勢を取った。


だけど、周りを見ると、カナミール側は全員が通常モードだった。

「ユリナお姉様、あれば馬賊に見えて馬賊ではありません。お爺さまです」

「うわ・・。紛らわしいよ」

フランソワ夫人のお陰で何日かぶりに気持ちは落ち着いた、

だけど、まだ自分が刺々しい。

過剰反応している。

だから、強い人達と会って、変な刺激を受けたくない。

逃げそこねた。

下がって木陰。1人だけ貧乏スタイルで黙って座った。

貴族家2家の乗り物が向かい会って整列。

伯爵家の先頭にいたムキムキのダンディーがフロマージュを抱き締めた。

フロマージュのお爺さんで伯爵家当主だろう。

励ましてもらったフランソワ夫人に礼を言う。そして去る。

去るタイミングを考えてると、知らない間に目の前にムキムキが立っていた。

そしてムキムキに、両手をつかまれた。

「あんたがユリナ殿だな。孫を助けてくれてありがとう。俺がドラグだ」

ちょっと驚いたけど、なされるがままになった。すごくストレートだ。

けれど、言っておかなくては。

「私、感謝されるべき人間ではありません。一度はフロマージュを見捨てましたから」

「そうか」。離してくれない。

「馬鹿だから、今も伯爵様を馬賊だと思い、攻撃するところでした」

「ぷっ。わははは。よく言われるよ」

笑い出してしまった。

なんとなく毒気を抜かれてしまった。

そのまま山賊もとい、伯爵様の馬の後ろに乗せられて街に連行された。

普段なら断るけど、ただオルシマに帰れなくて逃避している旅だ。

行く先はどこだっていい。



ドラグ様の家に到着したら、鍛え上げた体を持つ男女が寄ってきた。

フランソワとフロマージュを歓迎するのは当たり前として、私まで囲まれた。

伝令が「恩人」として伝えたそうだ。

ちょっと気分が高揚したけど、自分を戒めた。

ミールを成長させたような美女がいた。種族は、久々に見たハーフエルフで名前はノエルだ。

彼女を見て、いい気になりかけていた自分を諫めた。

調子に乗ると、私は失敗する。少なくとも自分を頼ってきた子をカミユの二の舞にはさせない。

「ごめん、みなさん。歓迎してくれるけど、私、中身は大したことがないよ」

そしたら笑われた。

「私たちも同じだって。お頭・・いや、伯爵様に拾われたけど、ここにくるまで失敗ばっかり」
「そうそう。反省と後悔の日々もあったよ」

「明るいね・・」。そう言うと、ノエルが想定外の言葉を発した。

「そうだよ。生き残った私達が、死んだ仲間達の分まで強く楽しく生きるんだよ」


私はカミユを亡くして自責の念にとらわれていたが、目の前のノエル達も色々とあったんだろう。

彼女らは、その段階を乗り越えた人間なんだよな。

そう思った。


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