神獣転生のはずが半神半人になれたので世界を歩き回って第二人生を楽しみます~

御峰。

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第35話 王城

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 リアちゃんが落ち着いた頃、ソフィアちゃんが紅茶を淹れてくれた。

 レストラン『スザク』での看板商品となる紅茶なのもあり、非常に美味しい。

 これはアルキバガン森で取れる植物で作られる紅茶で非常に美味しい。

 あの森の呪いは全てなくなったのでこれから冒険者達が採取に向かうはずで、流通も増えるはずだ。

 ここだけでなく、錬金術などの素材が採取できると多くの人が喜んでいた。

 全てのは理の教団に背負ってもらい、アルキバガン森の呪いは終わりを告げた。

「アルマ様? いかがですか?」

「うん! 凄く美味しいよ! 今まで飲んだどの紅茶よりも美味しいよ!」

「嬉しいです!」

 満面の笑みを浮かべるソフィアちゃん。

 リアちゃんと同じく獣人族で、耳には可愛らしい猫耳がついている。

 洋食屋『猫ノ手』の店員であるソリューさんと同じく猫耳族の一人だ。

 ソリューさんと同じく腰の後ろから尻尾が出ている。

「アルマくん? そろそろ、王城に向かわないと時間がないわよ?」

「もうそんな時間か。じゃあ、王城に少し行ってくるからリアちゃんはここで少し待っていてね?」

 コクリと頭を下げて頷く。

 声が出ないのでこれから出会う人に失礼に当たったらいけないからな。

 呼ばれたのは俺とシャリーなので、今回は妹弟もお留守番だ。

 こういうのは人間らしいしがらみだと思う。

 重苦しい雰囲気が苦手な妹弟は行きたくないと、二人を置いて俺とシャリーは二人で王城に向かった。



 王都の一番奥に位置する王城。

 外から見てもその広さは圧倒的なモノを誇っている。

 歩くだけでも時間がかかるのだけど、俺達を迎えに来てくれた馬車がレストラン『スザク』の前にやってきた。

 綺麗な燕尾服を着た執事さんが案内してくれて、初めて高級馬車に乗り込む。

 中の雰囲気は乗った事はないけど、前世の高級車さながらの乗り心地の良さだった。

 窓の外の景色が平民のモノから貴族のモノに変わっていく。

 ついこの前にシルビア商会の制圧作戦を行っていたのに、理の教団の事があるから何だか懐かしいとさえ思える。

 馬車は貴族街をさらに通り抜けて、空高く聳え立つ王城の中に入っていった。

 王城の敷地もものすごく広くて、周囲には兵舎と思われる建物が沢山並んでいて、それらを通り抜けてどんどん中に入っていく。

 正面入り口に着いて、馬車を降りるように促される。

 目の前で見てもとんでもないサイズ感だなと首が痛くなるくらい見上げる。

「凄いね~」

「そうだな。なんだか高い山のように感じだな」

「ふふっ。王城に初めて来られるお客様の大半は同じ意見を仰います。それも初代王様は山が大好きで、山のようなお城が作りたいとこういうお城を作られたようです」

「へぇ! 山が好きすぎてお城まで山のような作りにするなんて面白いですね」

「初代王様は色々とわがままな方だと聞いております。さあ、中へどうぞ。王様がお待ちしておりますので」

 開いた大きな扉の中に誘われて中を進んで行く。

 王城の中は思っていたよりはシンプルな飾り物が多い。

 武器や盾が並んでいるけど、どれも高価な物には見えない。

 こういう部分って貴族は見えを張って高額な物を並べるはずなのに、王城ではそうでないのが不思議だ。

 玉座の間に向かうと思ったのだが、意外にも途中で道を変えてとある部屋の中に入っていった。

「お待たせしました。アルマ様。シャリー様をお連れしました」

「ご苦労」

 開いた扉の奥から威厳ある声が聞こえて来る。

 執事さんに「どうぞ」と中に案内されて入ると、中にはベルハルト様が立っており、その横に座っている威厳ある男が一人いた。

「よくぞ来てくれた。我がアルハマラン王国の王、ガルデバランという」

「初めまして。アルマと申します」

「シャリーと申します」

 少し練習した貴族礼儀作法による挨拶を披露する。

 といってもまだまだぎこちないと思う。

「楽にしてくれたまえ」

「「ありがとうございます」」

 王様の許可が出たのでソファに座り込む。

「今日来てもらったのは他でもない。アルマくんの活躍により王国に多大な成果をあげたので、その報酬を与えようと思う」

「ありがとうございます! 頂きます!」

「アルマくん!?」

 こういうのは一切断らず、気持ちよくもらうものだ。

「がーはははっ! そう来なくてはな! 報酬をしっかり貰ってくれないと、アルマくんのように頑張ってくれる若者も減っていくだろうからな」

「本当にアルマくんって凄いよ……王様の前だというのに全然緊張してないよね」

「まあ、悪い事をした訳ではないから、堂々とするべきだと思うよ? あまりに畏まりすぎると王様が迷惑すると思うよ?」

「そうだとも! シャリーくんも気楽にしてくれると嬉しいぞ」

「は、はいっ!」

 前世では天皇様がいらしたけど、会った事もなければ、どちらかというとテレビや教科書の中の人物の印象だった。

 異世界に来たらきっと王様もいるだろうと思ったけど、俺の母さんだって神獣なのを思えば、王様一人くらいどうってことないと思う。

 王国民でもないから王様と対峙しても驚く程の感動はないかな。

「ベルハルト」

「はっ」

 イケメン騎士様のベルハルト様は大きな袋を一つと、小さな袋を一つ持って来た。

「どちらの袋が欲しいかい?」

「はい! では、大きいのは俺が、小さいのをシャリーにください」

「ん!? がーはははっ! まさか両方欲しがるとはな!」

 ベルハルト様すら苦虫を噛んだように苦笑いを浮かべる。

 隣のシャリーはあわあわしていたが、王様は豪快な笑い声をあげて、承諾してくれた。

 大きい袋の方が重そうだから、重い方を男である俺が貰った方がいいと思う。

 恐らく高価なは小さな袋の方のはずだから。
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