神獣転生のはずが半神半人になれたので世界を歩き回って第二人生を楽しみます~

御峰。

文字の大きさ
36 / 48

第36話 報酬の使い道

しおりを挟む
 王城から帰る馬車の中。

「アルマくん? やっぱりこっちは返そうよ……私、何もしていないのにこんな凄い報酬を貰うなんてできないよ……」

 溜息を吐きながら、両手で大事に抱きかかえて小さな袋を眺めるシャリー。

 馬車の中で袋の中身を確認したシャリーは、ずっと溜息を吐いている。

「シャリーもちゃんと働いてくれたと思うよ。それに奴隷商ん時の報酬だって有耶無耶になっているじゃん」

「え!? あれはしっかり奴隷達の権利を貰えたじゃない」

「いやいや。あれは俺が勝ち取ったものであって、シャリーの分ではないでしょう。シャリーは貰っていないのだから、小さい袋じゃ足りないんじゃない?」

「足りなくないよ! 寧ろこっちをアルマくんが貰うべきだよ!」

 それが心から溢れて来た言葉なのは簡単に分かる。

 俺が知っている美女という人はわがままな人が多いイメージなのだが、シャリーに限っては全くその気がない。

 まぁ妹弟にモフモフしたいという欲望は丸出しにしているけどな。

 多分だけど小袋の中身一個で一分モフモフと交換してあげるよと言ったら、丸投げにしてモフモフを取るに違いない。

「まあ、俺からの謝礼だと思ってくれていいよ。いつもお世話になったし、今回も色んな出来事もシャリーがいなかったら、俺一人だったら絶対に無理だったんだから、気にせずに堂々と貰ってくれ」

「うん…………」

「ちなみに、こういうのはあれだけど、それをどう使おうがシャリーの自由なんだから、負担になるのならどこかに寄付なんかしたらいいんじゃないか?」

「寄付か~最初は私もそうしようかなと思ったんだけど…………」

「思ったんだけど?」

 意外だ。

 名案だわ! って食いつくと思っていたのに、違ったみたい。

「アルマくんを見て、寄付するよりも自分の意志で使った方がいいなと思ったの」

 どこか憧れがあるように、彼女は真っすぐ俺の目を見つめた。

 彼女の目には深い信念が感じられる。

 決して寄付を否定するつもりはない。でも俺は手元にお金があるなら、それを使って目の前の人を助けたい。ただ救うだけじゃなくて、これからの生活をも考えてね。

 レストランを開くのにも資金がかなり必要だったりする。

 元奴隷達が開く予定のレストラン『スザク』は、冒険者ギルドの全面的なバックアップの元で開く事が決定している。

 でもそれは言い換えれば、冒険者ギルドに属してしまうという事。

 ギルドマスターも受付嬢のミールさんも良い人なのは知っている。でも組織というのは時に自分達の意志を通す事が難しくて組織の波に呑まれてしまう可能性がある。

 せっかく大量の金貨を報酬として頂けたので、冒険者ギルドから借りた額を全て返済に充てようと思う。

 俺達を乗せた場所は、冒険者ギルドの前に止まってくれた。

 執事さんに感謝の挨拶を残して、俺とシャリーは冒険者ギルドの中に入った。

 入るとすぐに、何人もの冒険者達の視線が俺達に向く。

 一連の出来事は既に広まってしまったようで、冒険者達から白目で見られるのは仕方がないな。

「ミールさん」

「いらっしゃいませ。アルマくん。シャリーちゃん」

「ギルドマスターに相談があるのですけど」

「分かったわ。ちょっと待ってね」

 最近は普通の事になってきたけど、こうしてギルドマスターにいつでも会えるのは珍しい事だよな……。

 ミールさんの案内を受けてギルドマスターの執務室にやってきた。

「ギルドマスター。わざわざ時間を割いてくださりありがとうございます」

「王都を救ってくれた英雄の頼みとあらば、これくらい容易いことさ」

「英雄ではないんですけど……全部ベルハルト様と、彼を会わせてくださったギルドマスターのおかげですよ」

 それを聞いたギルドマスターが大きな声で笑う。

「がーはははっ! その全てを指示したのは他でもアルマくんだからな。それで、要件があって来たのだろう?」

「はい。こちらを」

 王様から頂いた報酬の金貨が入った大きめな袋をギルドマスターの前に置く。

 中を確認したギルドマスターの顔が少し曇った。

「これは?」

「レストラン『スザク』で借りたお金です」

「…………アルマくん」

「ギルドマスター。あのお店に冒険者ギルドが優位に立つのは避けたいんです」

「だが…………」

 渋っているギルドマスターに交渉を続ける。

「お二人のことは信頼しています。でもそれはお二人だけであり、俺は冒険者全員を認めているわけではありません。なんなら試験の時のような輩もいるくらいですから。だから、冒険者ギルドとはあくまで仕事上の相手として関わってもらいたいんです。上下関係が続いてしまってはまた禍根かこんを残し兼ねませんから」

「…………分かった。あのレストランのオーナーはアルマくんだ。君がそう判断したのなら俺達がとやかく言うのは違うだろう。ただ、これからも冒険者としての依頼で手助けはしていくつもりだ」



「ええ。それでは引き続きよろしくお願いします。彼らも助かると思います――――いずれ俺がいなくなっても――――」



「分かった。ではこちらの金貨からレストランに掛かった額から残った額は直接レストランに入れる事にするぞ」

「ありがとうございます」

 やっぱりギルドマスターは話が早くて助かる。

 ふと、隣のシャリーが複雑そうな表情を浮かべているのが気にはなったが、いずれ彼女とも別れが来るだろうから、これ以上彼女との距離を縮める事は避けた方が良さそうだと思った。
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件

言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」 ──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。 だが彼は思った。 「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」 そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら…… 気づけば村が巨大都市になっていた。 農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。 「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」 一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前! 慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが…… 「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」 もはや世界最強の領主となったレオンは、 「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、 今日ものんびり温泉につかるのだった。 ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

七億円当たったので異世界買ってみた!

コンビニ
ファンタジー
 三十四歳、独身、家電量販店勤務の平凡な俺。  ある日、スポーツくじで7億円を当てた──と思ったら、突如現れた“自称・神様”に言われた。 「異世界を買ってみないか?」  そんなわけで購入した異世界は、荒れ果てて疫病まみれ、赤字経営まっしぐら。  でも天使の助けを借りて、街づくり・人材スカウト・ダンジョン建設に挑む日々が始まった。  一方、現実世界でもスローライフと東北の田舎に引っ越してみたが、近所の小学生に絡まれたり、ドタバタに巻き込まれていく。  異世界と現実を往復しながら、癒やされて、ときどき婚活。 チートはないけど、地に足つけたスローライフ(たまに労働)を始めます。

【完結】スキルを作って習得!僕の趣味になりました

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》 どんなスキル持ちかによって、人生が決まる。生まれ持ったスキルは、12歳過ぎから鑑定で見えるようになる。ロマドは、4度目の15歳の歳の鑑定で、『スキル錬金』という優秀なスキルだと鑑定され……たと思ったが、錬金とつくが熟練度が上がらない!結局、使えないスキルとして一般スキル扱いとなってしまった。  どうやったら熟練度が上がるんだと思っていたところで、熟練度の上げ方を発見!  スキルの扱いを錬金にしてもらおうとするも却下された為、仕方なくあきらめた。だが、ふと「作成条件」という文字が目の前に見えて、その条件を達してみると、新しいスキルをゲットした!  天然ロマドと、タメで先輩のユイジュの突っ込みと、チェトの可愛さ(ロマドの主観)で織りなす、スキルと笑いのアドベンチャー。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

小さな小さな花うさぎさん達に誘われて、異世界で今度こそ楽しく生きます!もふもふも来た!

ひより のどか
ファンタジー
気がついたら何かに追いかけられていた。必死に逃げる私を助けてくれたのは、お花?違う⋯小さな小さなうさぎさんたち? 突然森の中に放り出された女の子が、かわいいうさぎさん達や、妖精さんたちに助けられて成長していくお話。どんな出会いが待っているのか⋯? ☆。.:*・゜☆。.:*・゜ 『転生初日に妖精さんと双子のドラゴンと家族になりました。もふもふとも家族になります!』の、のどかです。初めて全く違うお話を書いてみることにしました。もう一作、『転生初日に~』の、おばあちゃんこと、凛さん(人間バージョン)を主役にしたお話『転生したおばあちゃん。同じ世界にいる孫のため、若返って冒険者になります!』も始めました。 よろしければ、そちらもよろしくお願いいたします。 *8/11より、なろう様、カクヨム様、ノベルアップ、ツギクルさんでも投稿始めました。アルファポリスさんが先行です。

処理中です...