【完結】狡い人

ジュレヌク

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事の始まり

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まだ、十歳の頃、私は、ある新発見をしたとして一躍有名人になった。

それは、『虫の環境変化に伴う進化の分岐に対する独自の考察』だった。

題名だけは覚えているけど、内容なんてチンプンカンプン。

レイラの名前をライラに書き換えて出したら、大賞をとってしまった。

あちこちに呼ばれて、表彰されたり、インタビューを受けたり。

最初は、有頂天だったけど、最後に私がレイラの功績を横取りしていたことがバレてしまった初めての事件。

読書感想文くらいまでにしとけば良かったと反省した苦い思い出。

あれから、お父様とお兄様の態度が一変してしまった。

それまでは、レイラと私、どちらも愛してくれていたはず。

それが、突然手のひらを返したように、レイラ、レイラと煩く褒める。

確かに、レイラは、凄い。

でも、凄いんだから、ちょっとくらい分けてくれても良いと思う。

才能を独り占めするなんて、それこそ狡いわ。



「ライラ、お前、今回も、レイラが描いた絵を絵画コンクールに出品したな?」


お父様の視線が恐ろしいくらい鋭くて、私は、お母様の後ろに隠れた。


「そんな恐ろしい顔をなさらないでください。二人は、双子なんですよ。筆のタッチが似てることだってあり得ますでしょ?」

「お前は、黙っていろ。ライラが出した作品に、レイラの署名が入っていた。その筆跡は、レイラが金賞を頂いた作品と全く同じだそうだ」


流石のお母様も、それ以上言い返せなくて、押し黙った。

確かに事実だけど、それを知っているのは、レイラだけ。


「レイラお姉様が告げ口したのね!」

「審査員が気づいたんだ。本来は、お前が出品した物を金賞にする予定だった。レイラが描いた最高傑作に、お前が泥を塗ったんだ!」


私は、悔しくてポロポロ涙をこぼした。

私が出した方が、絶対綺麗だと思った。

だって、私は、審美眼だけは誰よりも持っているから。

だだ、それを表現する腕が無いだけ。


「話は、終わりだ。レイラの婚約に水をさしたら、今度こそ、修道院に入れるからな」

「あなた!それは、ライラが可哀想です」

「安心しろ。お前も、一緒だ」


お父様の一言で、お母様の体が私からスーッと離れた。

涙目で見上げると、怯えたような顔で、お母様が私を見下ろしていた。


「お母様?」

「ラ、ライラ。今後は、大人しくしていなさい。そうじゃなきゃ、『貴女だけ』修道院へ行く事になるわよ」

「お母様!」


自分だけ逃げるなんて、お母様、狡いわ!


「狡い!狡い!狡い!皆、狡い!」


どれだけ叫んでも、誰も相手をしてくれない。

都合が悪くなったら無視をするなんて、狡くなきゃ、なんだって言うのよ!

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