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第四話生き方が導く終着点
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「娘に会わして!」
この屋敷に来て、突然口にハンカチを当てられ、暗い部屋に引きずり込まれた。
さっきまでお貴族様の屋敷らしく、装飾の凝った素晴らしい造りだったのに、この部屋には、何もない。
壁も石積が剥き出しで、まるで地下牢のよう。
私をここに閉じ込めたメイドも、出ていったきり戻ってこない。
ドアを叩いても誰も来ず、泣いても喚いても放置された。
何故、私だけ?
今頃、あの子は、一人美味しいものを食べているの?
母親がいなくなっても、探しにすら来ないなんて、なんて親不孝者なの。
悔しくて、悲しくて、ポロポロ涙が溢れたけれど、憐れみを買うことは出来ないらしい。
無駄に体力を使い、ただ、お腹が空くだけだった。
水もなく、食料もなく、時間の感覚がなくなっていく。
やっと扉が開いた時、向こう側にいたのは、同じメイド服を着た、同じような顔の女達だった。
皆、整った顔をしているけど、表情に乏しく目がうつろだ。
「な、なにをするつもり?」
恐ろしくて、後退すると、背中に石の壁が当たった。
この部屋は、それほど大きくなく、何人ものメイドが入ってくると、逃げるスペースもない。
「貴女みたいな親がいるから、私達が、こんな目に合うのよ」
意味不明の、私にとっては、八つ当たりでしかない言葉。
でも、彼女達の怒りの矛先が、私に向いていることだけは分かる。
「私は、貴女達の母親じゃないわ!」
「分かってるわよ!でも、貴女だって、娘を売ったじゃない!」
「売ったのは、私じゃないわ!」
大声で反論すると、
「ほーら、売った自覚あるんじゃない!」
と返された。
その言葉に、言い返せない。
歳を取り、若かった頃の美貌が失われた今、私に残されたのは、美しい娘だけ。
それを最大限に活かし、どうすれば裕福な生活が出来るのか、そればかり考えて生きてきた。
それを『売った』と言われるのなら、私は、夫を侯爵家令嬢に売った彼の家族と、何が違うというの?
言葉に窮する私を嘲笑い、
「ちゃっかり付いてきて、自分も甘い汁を吸うつもりだったんでしょ?そうは、させないわ!」
とメイドの一人が、痛い所を突いてきた。
彼女達の手には、箒やフライパンが握られている。
何故、彼女達の母親への復讐を、私が代わりに受けなくてはならないの?
そう訴えたいけど、言葉を発するより前に、
ガン!
頭を殴られ気を失った。
ブラックアウトする直前、メイド達の顔が、娘の顔と重なった。
『ゆるさない』
そう言われているような気がした。
コツン・・・コツン・・・コツン・・・
メイドは、主人の部屋を出た後、地下室へと降りていった。
灯を点けると、壁に飾られた無数の姿絵が、色の淡い光に浮き上がって見える。
その中の、最も古い絵の前で、彼女は立ち止まり、カサつきが目立ち始めた手で、そっと絵の表面を撫でた。
絵の少女とそのメイドは、とても良く似ている。
目元に小ジワが寄ってはいるが、瞳の形や鼻筋の通り方など、うり二つだ。
「今日、また、新しい子が来たのよ。でも………貴女の方が可愛いわ」
絵に語りかける声は、とても小さい。
そのかすれ具合は、泣いているようにも聞こえる。
その声に、別の女の啜り泣きが重なった。
声の主は、昨日まで婚約者、そして、今日からメイドとなった、二十歳の女。
昨日起きた時、傅いていたメイドが、晩には、上司になっている不条理。
たった1日で、天国から地獄に落ちたと、一晩ずっと嘆き悲しんでいる。
メイドは、鳴き声の方に向かって、
「大丈夫、すぐ慣れるわ」
と声を掛けた。
誰もいないと思っていたのか、泣き声が、ピタリと止んだ。
「ふふふ、泣くにも、体力がいるものよ。泣かずに済むなら、泣かないほうがいいわ」
自虐的に笑うと、先輩風を吹かせる。
彼女にも、そんな昔があった。
だからこそ、数日もすれば、運命を受け入れてしまうことも知っている。
自分をはじめ、歴代の婚約者達が、皆、そうだった。
声高に不幸を叫んでも、何も変わらないことに気付くのだ。
そして、次の者も、いつか自分と同じ場所に落ちてくると安堵する。
帰る場所もなく、生きる為に不遇に甘んじる彼女達が、『自由』を手に入れる日は、永遠に来ないだろう。
侯爵家から逃げ出し、乗合馬車で港へ向かい、船に乗り込んだのが5日前。
出航するまで、追っ手が来るのではないかとビクビクしていた。
出港後も、大金を抱え、盗まれるのではないかと周りを警戒し、挙動不審になっていた。
3日を過ぎる頃、同じ船に乗る家族連れに声をかけられた。
「お嬢さん、これをどうぞ」
妻に渡されたのは、少し硬いけど、甘みのあるパンだった。
貴重な食料を譲ってくれるほど、裕福そうには見えなかった。
「いやー、急に会社から解雇されてね。仕事がないから、隣国へ行くんだよ」
話している内容は、決して楽観できるものではないのに、夫は、笑いながら水も勧めてくれた。
「おねーちゃんは、どこにいくの?」
小さな娘は、当て布だらけのワンピースを着て、太陽のように笑っていた。
彼らは、隣国に移住するという。
その生き生きとした顔を見て、私は、ふと、我に返った。
「あ……あの、ちょっと、失礼します」
慌てて部屋に戻って、自分の顔を鏡に映してみた。
すると、あまりにも酷い顔をしていた。
目は釣り上がり、髪は、ボサボサ。
不機嫌そうな口元に、ガリガリの身体。
どこにも幸せそうな明るさが感じられない。
自由を求め、死ぬ思いをして逃げ出したのは、なんのため?
「こんなんじゃ、幸せが逃げるわ」
私は、パンパンと両手で顔を叩いた。
痛み共に、背筋が伸びた。
胴体に巻き付けていた巾着袋を外し、かばんの中に入れる。
部屋には、ちゃんと鍵がかけられる。
これで盗まれるなら、しかたない。
それよりも、このズシリと重い金貨を何日も肌身離さず身に付けていることの肉体的、精神的苦痛の方が心を蝕む。
「先ほどは、失礼しました」
私は、家族のもとに戻ると、パンとお水のお礼を言い、一緒に味わって食べた。
噛み締めのあるパンから、ほんのりバターの香りがした。
久しぶりに、食材の味を感じた。
それほど、私には余裕がなく、この家族が思わず声を掛けてしまうほど、追い込まれていたのだろう。
「もしよろしければ、こちらを……」
私は、非常食用の干し肉を家族に分けた。
「こんな、高級な物、いいのかい?」
驚きで何度も瞬きした後、
「ありがとう。ありがたく、頂くね」
とお礼を言われた。
それからは、その家族と共に船旅を楽しんだ。
歌ったり、本を読んだり、星を見上げたり。
そして、今日、やっと小さな影が遠くに見えた。
「おねーちゃん!島だわ!」
小さなお友達が、大きな声で教えてくれる。
「きっと、すーごく、すてきなまちのよ!」
子供特有の少し高めの声が、まるで予言のように聞こえる。
「そうね!きっと。すーごく、すてきなまちよね!」
口調を真似て、私も大きな声で、言ってみた。
潮風が、海の匂いだけじゃない、甘い柑橘類の香りを運んでくる。
目を凝らすと、色鮮やかなレモンが実った低木が、高台に植えられているのが見える。
家の壁は、白。
屋根の色は、青い。
御伽噺の中に出てくる夢の街のように、可愛くて、美しくて、胸をワクワクさせてくれる。
「船を降りたら、先ずは、食事だ!その後は、職探しに行こう!」
三人家族は、到着して直ぐから、精力的に動くようだ。
「あの……途中まででいいんです。ご一緒しても、良いですか?」
勇気を振り絞ってお願いすると、
「なんだい、水臭い。てっきり、一緒に来てくれると思っていたよ。それに、俺達は、文字が読めないからな。騙されないように、守ってくれよ!」
と肩を叩かれた。
私でも、人の役に立っている。
それが、とても嬉しい。
「じゃぁ、下船だ!」
「はい!」
今日吹く人生の風向きは、きっと悪くない。
胸を張って、前を向いて、桟橋を降りていく。
私の旅は、始まったばかり。
完
この屋敷に来て、突然口にハンカチを当てられ、暗い部屋に引きずり込まれた。
さっきまでお貴族様の屋敷らしく、装飾の凝った素晴らしい造りだったのに、この部屋には、何もない。
壁も石積が剥き出しで、まるで地下牢のよう。
私をここに閉じ込めたメイドも、出ていったきり戻ってこない。
ドアを叩いても誰も来ず、泣いても喚いても放置された。
何故、私だけ?
今頃、あの子は、一人美味しいものを食べているの?
母親がいなくなっても、探しにすら来ないなんて、なんて親不孝者なの。
悔しくて、悲しくて、ポロポロ涙が溢れたけれど、憐れみを買うことは出来ないらしい。
無駄に体力を使い、ただ、お腹が空くだけだった。
水もなく、食料もなく、時間の感覚がなくなっていく。
やっと扉が開いた時、向こう側にいたのは、同じメイド服を着た、同じような顔の女達だった。
皆、整った顔をしているけど、表情に乏しく目がうつろだ。
「な、なにをするつもり?」
恐ろしくて、後退すると、背中に石の壁が当たった。
この部屋は、それほど大きくなく、何人ものメイドが入ってくると、逃げるスペースもない。
「貴女みたいな親がいるから、私達が、こんな目に合うのよ」
意味不明の、私にとっては、八つ当たりでしかない言葉。
でも、彼女達の怒りの矛先が、私に向いていることだけは分かる。
「私は、貴女達の母親じゃないわ!」
「分かってるわよ!でも、貴女だって、娘を売ったじゃない!」
「売ったのは、私じゃないわ!」
大声で反論すると、
「ほーら、売った自覚あるんじゃない!」
と返された。
その言葉に、言い返せない。
歳を取り、若かった頃の美貌が失われた今、私に残されたのは、美しい娘だけ。
それを最大限に活かし、どうすれば裕福な生活が出来るのか、そればかり考えて生きてきた。
それを『売った』と言われるのなら、私は、夫を侯爵家令嬢に売った彼の家族と、何が違うというの?
言葉に窮する私を嘲笑い、
「ちゃっかり付いてきて、自分も甘い汁を吸うつもりだったんでしょ?そうは、させないわ!」
とメイドの一人が、痛い所を突いてきた。
彼女達の手には、箒やフライパンが握られている。
何故、彼女達の母親への復讐を、私が代わりに受けなくてはならないの?
そう訴えたいけど、言葉を発するより前に、
ガン!
頭を殴られ気を失った。
ブラックアウトする直前、メイド達の顔が、娘の顔と重なった。
『ゆるさない』
そう言われているような気がした。
コツン・・・コツン・・・コツン・・・
メイドは、主人の部屋を出た後、地下室へと降りていった。
灯を点けると、壁に飾られた無数の姿絵が、色の淡い光に浮き上がって見える。
その中の、最も古い絵の前で、彼女は立ち止まり、カサつきが目立ち始めた手で、そっと絵の表面を撫でた。
絵の少女とそのメイドは、とても良く似ている。
目元に小ジワが寄ってはいるが、瞳の形や鼻筋の通り方など、うり二つだ。
「今日、また、新しい子が来たのよ。でも………貴女の方が可愛いわ」
絵に語りかける声は、とても小さい。
そのかすれ具合は、泣いているようにも聞こえる。
その声に、別の女の啜り泣きが重なった。
声の主は、昨日まで婚約者、そして、今日からメイドとなった、二十歳の女。
昨日起きた時、傅いていたメイドが、晩には、上司になっている不条理。
たった1日で、天国から地獄に落ちたと、一晩ずっと嘆き悲しんでいる。
メイドは、鳴き声の方に向かって、
「大丈夫、すぐ慣れるわ」
と声を掛けた。
誰もいないと思っていたのか、泣き声が、ピタリと止んだ。
「ふふふ、泣くにも、体力がいるものよ。泣かずに済むなら、泣かないほうがいいわ」
自虐的に笑うと、先輩風を吹かせる。
彼女にも、そんな昔があった。
だからこそ、数日もすれば、運命を受け入れてしまうことも知っている。
自分をはじめ、歴代の婚約者達が、皆、そうだった。
声高に不幸を叫んでも、何も変わらないことに気付くのだ。
そして、次の者も、いつか自分と同じ場所に落ちてくると安堵する。
帰る場所もなく、生きる為に不遇に甘んじる彼女達が、『自由』を手に入れる日は、永遠に来ないだろう。
侯爵家から逃げ出し、乗合馬車で港へ向かい、船に乗り込んだのが5日前。
出航するまで、追っ手が来るのではないかとビクビクしていた。
出港後も、大金を抱え、盗まれるのではないかと周りを警戒し、挙動不審になっていた。
3日を過ぎる頃、同じ船に乗る家族連れに声をかけられた。
「お嬢さん、これをどうぞ」
妻に渡されたのは、少し硬いけど、甘みのあるパンだった。
貴重な食料を譲ってくれるほど、裕福そうには見えなかった。
「いやー、急に会社から解雇されてね。仕事がないから、隣国へ行くんだよ」
話している内容は、決して楽観できるものではないのに、夫は、笑いながら水も勧めてくれた。
「おねーちゃんは、どこにいくの?」
小さな娘は、当て布だらけのワンピースを着て、太陽のように笑っていた。
彼らは、隣国に移住するという。
その生き生きとした顔を見て、私は、ふと、我に返った。
「あ……あの、ちょっと、失礼します」
慌てて部屋に戻って、自分の顔を鏡に映してみた。
すると、あまりにも酷い顔をしていた。
目は釣り上がり、髪は、ボサボサ。
不機嫌そうな口元に、ガリガリの身体。
どこにも幸せそうな明るさが感じられない。
自由を求め、死ぬ思いをして逃げ出したのは、なんのため?
「こんなんじゃ、幸せが逃げるわ」
私は、パンパンと両手で顔を叩いた。
痛み共に、背筋が伸びた。
胴体に巻き付けていた巾着袋を外し、かばんの中に入れる。
部屋には、ちゃんと鍵がかけられる。
これで盗まれるなら、しかたない。
それよりも、このズシリと重い金貨を何日も肌身離さず身に付けていることの肉体的、精神的苦痛の方が心を蝕む。
「先ほどは、失礼しました」
私は、家族のもとに戻ると、パンとお水のお礼を言い、一緒に味わって食べた。
噛み締めのあるパンから、ほんのりバターの香りがした。
久しぶりに、食材の味を感じた。
それほど、私には余裕がなく、この家族が思わず声を掛けてしまうほど、追い込まれていたのだろう。
「もしよろしければ、こちらを……」
私は、非常食用の干し肉を家族に分けた。
「こんな、高級な物、いいのかい?」
驚きで何度も瞬きした後、
「ありがとう。ありがたく、頂くね」
とお礼を言われた。
それからは、その家族と共に船旅を楽しんだ。
歌ったり、本を読んだり、星を見上げたり。
そして、今日、やっと小さな影が遠くに見えた。
「おねーちゃん!島だわ!」
小さなお友達が、大きな声で教えてくれる。
「きっと、すーごく、すてきなまちのよ!」
子供特有の少し高めの声が、まるで予言のように聞こえる。
「そうね!きっと。すーごく、すてきなまちよね!」
口調を真似て、私も大きな声で、言ってみた。
潮風が、海の匂いだけじゃない、甘い柑橘類の香りを運んでくる。
目を凝らすと、色鮮やかなレモンが実った低木が、高台に植えられているのが見える。
家の壁は、白。
屋根の色は、青い。
御伽噺の中に出てくる夢の街のように、可愛くて、美しくて、胸をワクワクさせてくれる。
「船を降りたら、先ずは、食事だ!その後は、職探しに行こう!」
三人家族は、到着して直ぐから、精力的に動くようだ。
「あの……途中まででいいんです。ご一緒しても、良いですか?」
勇気を振り絞ってお願いすると、
「なんだい、水臭い。てっきり、一緒に来てくれると思っていたよ。それに、俺達は、文字が読めないからな。騙されないように、守ってくれよ!」
と肩を叩かれた。
私でも、人の役に立っている。
それが、とても嬉しい。
「じゃぁ、下船だ!」
「はい!」
今日吹く人生の風向きは、きっと悪くない。
胸を張って、前を向いて、桟橋を降りていく。
私の旅は、始まったばかり。
完
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