唇を隠して,それでも君に恋したい。

初恋

文字の大きさ
4 / 28
ボクはオトコノコ。

ボクを包むフオンなウワサ。

しおりを挟む
ードンッ


「たっ……」



眠たいからと目を擦り,いつもより皆の後方を歩いて移動していたタイミング。

思いがけない衝撃に,僕はつい反射的に顔を歪めた。

パッと顔をあげると,短髪の男が驚いたように僕を振り返る。



「あ,わりっ……っ……」



? なに?

わざとじゃないのはもう分かっていた。

注意を逸らしていたのは僕もだし,声をあげてしまったのは大袈裟な気もして申し訳ないと思う。

でも,お互いそれで終わればいいのに。

相手は"僕の顔"を見て,更に驚いた顔をした。

知らない人,の,はず。

だけど。



「お前って,え……百合川ゆりかわの」

「カズ? 何して……って余計なこと言うなって!! 違ったらかわいそーだろ」

「でもほんとだったら」

「メーワクかけんなっって」



ユリカワ。

って,何? 人? 誰?

僕が,何なの?

用がないなら僕,もう行きたいんだけど。 
 


「ごめんなー」



ああほら,敦が僕を見てる。

スズやリューも気付いて,足を止めていた。



「伊織,どした?」



スズが空気を敏感に感じ取って,相手の顔を見ながら寄ってくる。



「んー。わかんない。でもたぶん,なんでもない」



カズ。

名前と顔だけは,一応覚えておこうと思った。



「なにそれ~,なら早く行こーぜ」



三太にも急かされて,カズとその友達を見ながらまた歩き始める。

僕は外されない視線に眉を寄せながらも,どうせ人違いだろうと思っていた。

その"勘違い"が崩されたのは,HR前の掃除場所に向かった時。

リューとも敦ともスズとも別れて,トイレと言いながらサボる気満々の三太も置いて1人で向かった時だった。

僕は扉の向こうから聞こえた声に足を止める。



「なあもしかしていつもいる女顔の方。あいつって羽村 伊織とかいう名前だったりするか?」

「羽村? そんな名字だったけ」

「そーだよぉ。私中学一緒だったから知ってる。最近噂されてるよね~」

「そうそう」



僕の


「噂?」うわさ?



僕は扉に身を隠し,もう少しだけそうしていることにした。

もしかしたら,今朝のあいつも……

何かをどこかで聞いたのか。

マスクのさりさりとした感触に,僕はハッとする。

無意識に,唇を触っていた。



百合川ゆりかわ ひめとなー。ちょっと」

「え! なに?」

「デキてるってウワサ。でも……しかも姫の方がフラれたっぽいんだよねー~」



また,出た。

余程有名な人なんだろうか。

しかもよりにもよって僕とデキてるって,なんだそれ。

僕には女子と接触する機会すら殆んど無いのに,名前も知らない女子と噂されるなんて寝耳に水過ぎる。



「え,そうなの? デキててフラれたっつーか。告ったら突き飛ばされって聞いてるけど。なんか人に触られるの嫌がるとか」

「なにそいつむかつく~!! あの姫を捨てるだの突き飛ばすだの何様だって」



あぁ,最悪だ。

完全に出ていくタイミングを無くした。

このまま出ていけば,よくて睨まれ,悪くて突っかかられるに決まってる。

否定したいけど……

噂には多分色々混ざってる。

触られるのを拒否することは往々にあるし,僕はそれについて言及されるととても困る。

でも,それで他人を,ましてや女の子を突き飛ばしたりした事はない。

僕も何がなんだかよくわからないし,掃除場所を共有している他クラスの男女も,噂を回す割りにはよく分かっていなそうだった。

本人に話を聞いてみる……?

それはそれで,人に見られたら厄介だな。

こう言うときに限って三太もいないんだから,勘弁して欲しい。

三太なら能天気に突っ込んでいって否定してアリバイも証明してくれただろうに。

不本意だけど……

僕も掃除はあの人たちに任せてサボろう。

僕は程よく時間を潰して,教室へと戻った。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

君が僕を好きなことを知ってる

大天使ミコエル
BL
【完結】 ある日、亮太が友人から聞かされたのは、話したこともないクラスメイトの礼央が亮太を嫌っているという話だった。 けど、話してみると違和感がある。 これは、嫌っているっていうより……。 どうやら、れおくんは、俺のことが好きらしい。 ほのぼの青春BLです。 ◇◇◇◇◇ 全100話+あとがき ◇◇◇◇◇

坂木兄弟が家にやってきました。

風見鶏ーKazamidoriー
BL
父子家庭のマイホームに暮らす|鷹野《たかの》|楓《かえで》は家事をこなす高校生。ある日、父の再婚話が持ちあがり相手の家族とひとつ屋根のしたで生活することに、再婚相手には年の近い息子たちがいた。 ふてぶてしい兄弟に楓は手を焼きながら、しだいに惹かれていく。

兄貴同士でキスしたら、何か問題でも?

perari
BL
挑戦として、イヤホンをつけたまま、相手の口の動きだけで会話を理解し、電話に答える――そんな遊びをしていた時のことだ。 その最中、俺の親友である理光が、なぜか俺の彼女に電話をかけた。 彼は俺のすぐそばに身を寄せ、薄い唇をわずかに結び、ひと言つぶやいた。 ……その瞬間、俺の頭は真っ白になった。 口の動きで読み取った言葉は、間違いなくこうだった。 ――「光希、俺はお前が好きだ。」 次の瞬間、電話の向こう側で彼女の怒りが炸裂したのだ。

血のつながらない弟に誘惑されてしまいました。【完結】

まつも☆きらら
BL
突然できたかわいい弟。素直でおとなしくてすぐに仲良くなったけれど、むじゃきなその弟には実は人には言えない秘密があった。ある夜、俺のベッドに潜り込んできた弟は信じられない告白をする。

ジャスミン茶は、君のかおり

霧瀬 渓
BL
アルファとオメガにランクのあるオメガバース世界。 大学2年の高位アルファ高遠裕二は、新入生の三ツ橋鷹也を助けた。 裕二の部活後輩となった鷹也は、新歓の数日後、放火でアパートを焼け出されてしまう。 困った鷹也に、裕二が条件付きで同居を申し出てくれた。 その条件は、恋人のフリをして虫除けになることだった。

【完結】君の手を取り、紡ぐ言葉は

綾瀬
BL
図書委員の佐倉遥希は、クラスの人気者である葉山綾に密かに想いを寄せていた。しかし、イケメンでスポーツ万能な彼と、地味で取り柄のない自分は住む世界が違うと感じ、遠くから眺める日々を過ごしていた。 ある放課後、遥希は葉山が数学の課題に苦戦しているのを見かける。戸惑いながらも思い切って声をかけると、葉山は「気になる人にバカだと思われるのが恥ずかしい」と打ち明ける。「気になる人」その一言に胸を高鳴らせながら、二人の勉強会が始まることになった。 成績優秀な遥希と、勉強が苦手な葉山。正反対の二人だが、共に過ごす時間の中で少しずつ距離を縮めていく。 不器用な二人の淡くも甘酸っぱい恋の行方を描く、学園青春ラブストーリー。 【爽やか人気者溺愛攻め×勉強だけが取り柄の天然鈍感平凡受け】

【完結】俺とあの人の青い春

月城雪華
BL
 高校一年の夏、龍冴(りょうが)は二つ上の先輩である椰一(やいち)と付き合った。  けれど、告白してくれたにしては制限があまりに多過ぎると思っていた。  ぼんやりとした不信感を抱いていたある日、見知らぬ相手と椰一がキスをしている場面を目撃してしまう。  けれど友人らと話しているうちに、心のどこかで『椰一はずっと前から裏切っていた』と理解していた。  それでも悲しさで熱い雫が溢れてきて、ひと気のない物陰に座り込んで泣いていると、ふと目の前に影が差す。 「大丈夫か?」  涙に濡れた瞳で見上げると、月曜日の朝──その数日前にも件の二人を見掛け、書籍を落としたのだがわざわざ教室まで届けてくれたのだ──にも会った、一学年上の大和(やまと)という男だった。

【完結】君を上手に振る方法

社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」 「………はいっ?」 ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。 スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。 お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが―― 「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」 偽物の恋人から始まった不思議な関係。 デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。 この関係って、一体なに? 「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」 年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。 ✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧ ✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧

処理中です...