【男装歴10年】異世界で冒険者パーティやってみた【好きな人がいます】

リコピン

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ロカール日常シリーズ ▶️50話

【ロックバード狩り】#4 ナデポは異世界共通だと思い知った夜

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「…兄さん、帰るよ。」

「いや、俺はあと半ガロンはいけるね。」

「もう、何その単位。」

酔い潰れて前後不覚な身内の面倒くささ。周囲の目があるから、置いて帰るわけにもいかない。

「兄さん、起きて、立って歩いて。」

「あー、俺、立派な足ついてるからなー。」

「…面倒くさい。帰りたい。」

深夜を過ぎる前に、「夜更かしはお肌に~」と言ってエルは帰ってしまった。ルキは、兄と同じく泥酔したフィートさんを送っていった。その時にはまだ辛うじて意識のあったはずの兄がこうなってしまったので、最悪、風魔法で浮かべて帰るしかないかと思案する。

(目立つから、したくないけど…)

引きずって帰るよりはマシだろうと覚悟を決めたところで、聞き慣れた声がした。

「あ、やっぱ、まだ居たか。」

「ルキ?どうして…?」

「ん?まあ、ちょっとシオンのやつ怪しかったもんな。セリ一人じゃ、連れて帰んの無理だろ?」

「…」

気にかけて、戻ってきてくれた。それだけで、私の恋愛メーターが振りきれそうになってる。

「おーい、シオン。立て、肩貸してやるから立て、んで、歩け。」

「んー?俺には立派な足が、」

「俺に担がれたくなかったら、立て。」

「…」

大人しく立ち上がった兄の身体をほぼほぼ支えるようにして歩きだしたルキ。黙って、その隣に並んだ。

「セリも苦労すんなー。兄貴がコレで。」

「…もう、慣れました。…今日みたいなのは、ちょっと困りますけど。」

「あー、そういう時は、俺呼べよ。」

「…」

笑って見下ろしてくるルキの眼差し、目尻がいつもよりグッと下がっていて優しい。

(心臓が痛い、苦しい…)

「…ルキは、兄弟…、弟とか妹がいるんですか?」

「ん?いや、兄貴だけ。下はいねぇけど、なんで?」

「…いえ。」

では、この面倒見の良さは一体どこで培われたのか。分からないけど、その恩恵は有り難く受けておく。

帰りついたアパートの二階。部屋に兄を放り込んでくれたルキが、扉の前で立ち止まった。

「鍵、ちゃんと掛けとけよ。危ねぇから。」

「…子どもではないので、そこまで心配してもらわなくても。」

「あー、そういや、そうだったわ。セリ、十六なんだっけ。」

「はい。」

「…見えねぇ。弟いたら、こんな感じか?」

最後に笑って、人の頭をフードの上からクシャッとして、ルキは帰って行った。

(ズルい。こんなの反則だ…)

顔の熱がいつまでもひかない。




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