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ロカール日常シリーズ ▶️50話
【ロックバード狩り】#3 新人剣士さんとの打ち上げで、年齢バレ
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「はーい、お疲れさまー!」
「お疲れー☆」
「っしたー!」
「…お疲れ様でした。」
ギルドに依頼の完了報告をしたその足でなだれ込んだいつもの店、『大熊亭』。昼間、フィートさんとの打ち合わせにも利用したお店は、夜は美味しいお酒を出す飲み屋さんになる。
「…あのー、良かったんですか?俺も混じっちゃって…?」
「あー?いんだよ!んなの気にしないで、飲もうぜー!」
「エルちゃん、お代わり!大ジョッキでお願いします!」
開始三秒で出来上がった赤とピンク。フィートさんをお疲れ会に誘ったルキが率先してフィートさんに絡んでいる。
(…相変わらず、面倒見、いい。)
初対面の人間を相手にあっという間に距離を縮めてしまえるルキと、困惑しながらも、次第に笑い声をあげるようになったフィートさんを羨望の眼差しで見てしまう。
フィートさんと視線が合った。
「あの、セリくんは、お酒飲まないの?」
「はい、飲めないので。」
「え、そうなんだ?…そう言えば、セリくんっていくつなの?」
世間話の延長のようにして聞かれてしまった。
(…困った。)
自分が未成年のように見えるのは知っている。男にしては高い声や薄い身体を、子どもの振りでごまかしているから、本当の年齢を言うと大抵、驚かれてしまう。だから、
「…ナイショ、です。」
「えー!そう言われると気になるなー!」
「逆に、いくつに見えますか?」
秘技、相手の主観に委ねる。
「あー、うん?その魔導師のローブ?っていうのかな?それ着てると、あんまよく、わかんないんだよねー。」
「…ですか。」
認識阻害がいい仕事をしている。このまま話が流れるといい。そう思ったのに。
「セリはこれでも成人してんだよー。今年、十六、…ん?いや、あれ?十七だっけ、セリ?」
「えっ!?えっ!?そうなの!ごめん!俺、てっきり、十三とか、その辺かと思ってた!?」
(…バカ兄。)
あっさりバラした兄に毒づいて、「子ども扱いしてごめんね」と謝るフィートさんには無言で頷いた。
じとーっとした視線を感じて顔を向ければ、目の座ったルキの顔。
「…なんですか?」
ドキドキするから止めて欲しい。
「…セリの歳とか、俺、初めて聞いたわ。」
「?…あまり自分からは言いませんので。」
「あー、だな。俺も自分の歳とか言ったことないもんな。」
「ルキの歳は知ってます。二十一、ですよね?」
「え?なに、なんで、セリ、知ってんの?俺の個人情報。」
「…パーティーを組む時、兄さんに聞かれて答えてましたよ。」
「え?そっか?そうだった?」
「はい。」
乙女心がそれをしっかり覚えている。
「はいはい!じゃあ、次は僕!フィートさん、僕、いくつに見える?」
「え、あ、えー?」
「答えて答えて☆エルちゃんはいくつでしょーかっ?」
困ってそうなフィートさんの代わりに答えた。
「…エルは、今年、にじゅう、」
「おい、やめろ。」
「…」
急にひっくーい声になったエルの目が笑っていない。
「…自分で聞いたくせに、」
「エルちゃんは永遠の十代なの!セリちゃんと同じ十六歳!」
「…まあ、見た目は…」
否定出来ない、美少年ではある。
「お疲れー☆」
「っしたー!」
「…お疲れ様でした。」
ギルドに依頼の完了報告をしたその足でなだれ込んだいつもの店、『大熊亭』。昼間、フィートさんとの打ち合わせにも利用したお店は、夜は美味しいお酒を出す飲み屋さんになる。
「…あのー、良かったんですか?俺も混じっちゃって…?」
「あー?いんだよ!んなの気にしないで、飲もうぜー!」
「エルちゃん、お代わり!大ジョッキでお願いします!」
開始三秒で出来上がった赤とピンク。フィートさんをお疲れ会に誘ったルキが率先してフィートさんに絡んでいる。
(…相変わらず、面倒見、いい。)
初対面の人間を相手にあっという間に距離を縮めてしまえるルキと、困惑しながらも、次第に笑い声をあげるようになったフィートさんを羨望の眼差しで見てしまう。
フィートさんと視線が合った。
「あの、セリくんは、お酒飲まないの?」
「はい、飲めないので。」
「え、そうなんだ?…そう言えば、セリくんっていくつなの?」
世間話の延長のようにして聞かれてしまった。
(…困った。)
自分が未成年のように見えるのは知っている。男にしては高い声や薄い身体を、子どもの振りでごまかしているから、本当の年齢を言うと大抵、驚かれてしまう。だから、
「…ナイショ、です。」
「えー!そう言われると気になるなー!」
「逆に、いくつに見えますか?」
秘技、相手の主観に委ねる。
「あー、うん?その魔導師のローブ?っていうのかな?それ着てると、あんまよく、わかんないんだよねー。」
「…ですか。」
認識阻害がいい仕事をしている。このまま話が流れるといい。そう思ったのに。
「セリはこれでも成人してんだよー。今年、十六、…ん?いや、あれ?十七だっけ、セリ?」
「えっ!?えっ!?そうなの!ごめん!俺、てっきり、十三とか、その辺かと思ってた!?」
(…バカ兄。)
あっさりバラした兄に毒づいて、「子ども扱いしてごめんね」と謝るフィートさんには無言で頷いた。
じとーっとした視線を感じて顔を向ければ、目の座ったルキの顔。
「…なんですか?」
ドキドキするから止めて欲しい。
「…セリの歳とか、俺、初めて聞いたわ。」
「?…あまり自分からは言いませんので。」
「あー、だな。俺も自分の歳とか言ったことないもんな。」
「ルキの歳は知ってます。二十一、ですよね?」
「え?なに、なんで、セリ、知ってんの?俺の個人情報。」
「…パーティーを組む時、兄さんに聞かれて答えてましたよ。」
「え?そっか?そうだった?」
「はい。」
乙女心がそれをしっかり覚えている。
「はいはい!じゃあ、次は僕!フィートさん、僕、いくつに見える?」
「え、あ、えー?」
「答えて答えて☆エルちゃんはいくつでしょーかっ?」
困ってそうなフィートさんの代わりに答えた。
「…エルは、今年、にじゅう、」
「おい、やめろ。」
「…」
急にひっくーい声になったエルの目が笑っていない。
「…自分で聞いたくせに、」
「エルちゃんは永遠の十代なの!セリちゃんと同じ十六歳!」
「…まあ、見た目は…」
否定出来ない、美少年ではある。
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