41 / 174
ロカール日常シリーズ ▶️50話
【ゴブリンの討伐】#4 依頼完了。出待ちされました
しおりを挟む
「はい、お疲れ様。依頼達成おめでとう。救助依頼の方も、うん、助かったよ。彼らも一度死ぬくらいの目に会えばいいとは思うんだけどね?流石に本当に死なれたら、こちらも寝覚めが悪いから。」
受けた指名依頼は両方とも無事に完了し、ギルドでの報告を上げていた。対応してくれていたイグナーツさんがハハハと爽やかに笑う。言ってることはエグいのに。
「それで、今回の救助依頼の方、報酬は出ないけど、その分、ギルドの評価ポイントは高いから、A級昇格が一気に近づいたね?いやー、良かった良かった。」
「…」
冒険者ギルドの各支部が、自らの支部からS級冒険者を出すことを「誉れ」、もしくは「便利」だと考えているのは知っているけれど─
「えーっと?イグナーツさん、その、もしかして、今回の件、態と彼らに…」
「ハハ!シオン君、何言ってるの。偶然だよ、偶然。」
「偶然…」
「そうそう。偶然の巡り合わせ。たまたま僕が君らに依頼しようとした案件に、馬鹿で向こう見ずなぼんくらパーティがシャシャって来ただけ。それで、たまたま居合わせた君らに救助依頼を出しただけだから、ね?」
「…」
(…偶然とは。)
異世界語の難しさに囚われていたら、珍しく、ルキがイグナーツさんに話しかけた。
「…すいません、一つ報告っつーか、気になったことあるんすけど。」
「ん?何かな?」
「あー、今回の群れ、ボスゴブリンの統率力?って言うんすか?キングでもない癖に、他の奴らが必死にボスを庇うというか、そんな動きしてて。まぁ、それで黎明の星の奴らもやられてたんっすけど…」
「ああ。それね。」
頷いたイグナーツさんが、一瞬、遠い目をした気がする。
「…居るんだよねぇ。たまに、そういう個体が。」
「そういう…?」
「うん。何故か妙にカリスマ性があるというか、モテる個体が居てね。」
「モテる…?」
ちょっと、脳が混乱を起こしている。
(…モテるゴブリン…?)
「ボス以外のゴブリン、全員、雌だったでしょ?」
「ええっ!?いや、えっと、すみません、そこまで見てなかったというか、見ても気づかなかったというか…」
イグナーツさんの発言に兄も混乱している。
「多分、雌だったと思うよ。…僕もね、現役の頃に一度目にしたことがあるし、ここで働き出してからは何度か耳にしたこともあるんだけど、まぁ、要するに、そういう群れなんだよ。」
「…えっと、それは、つまり…?」
「そのボスゴブリンのハーレムだったんだろうね。」
「…」
(…ハーレム?)
思い出してみる。彼らの姿。特に、ボスゴブリンの─
(…うん、ただのゴブリン。)
他との差異なんて、特には無かったはず。
「…ちょっと、僕らの感性では理解出来ないところではあるけれど、ゴブリンにはゴブリンなりの社会があり、イケメンが居る。そういうことだよね。」
「…そういうこと、ですか…?」
「うん。そういうこと。」
断言されて、異世界の広さを思い知った。
「あ。」
「うわぁ、待ち伏せ?僕らに何か用?」
「…」
ギルドを出たところで、なんちゃらの星の三人組に出くわした。明らかに人待ち顔だったから、狙いは恐らく私達。
「…用、というか、まぁ、一応、礼に。」
「え。」
「今日は、助かった。あのままじゃ、流石にヤバかった、からな…」
「…」
己の敗北も失敗も認めないタイプだと思っていたリーダー剣士が、予想外なことに頭を下げてきた。彼の後ろに立ってる僧侶の男に何か言われたのかもしれないけれど、そんなことよりも─
(…なぜ、また、ローブを脱いでいる?)
リーダー剣士の後ろ、僧侶と並び立つ女魔導師の服装が前回よりも過激になっている。
(…確かに、街中だし、防御を固める必要はないかもだけど。)
別の意味で防御力ゼロの女を睨む。
(また、ルキのこと見てるし…)
警戒心マックスでガン見してたら、女魔導師と目が合って、ついでに微笑まれた。
(なぜ…)
前回と、あまりにも違う態度に、顔が引きつりそうになる。
「セリ君?だっけ?今日は、本当にありがとうねー?すっごく助かっちゃったぁ!」
「はぁ…」
そういう依頼だったから、としか答えようがない。
「それでね?考えたんだけどぉ、今日のお礼の代わり、私達に一杯おごらせてくれないかなぁ?私達、始まりがあんまりよくなかったじゃない?けど、これからお互いをちゃんと知っていけば、上手くやっていけるんじゃないかと思うんだぁ。」
「…」
絶句。
なんか、以前はルキにのみ向けられていたはずの媚態がこちらにも。ゾワゾワーっときた。動けずにいたら、隣からルキに背中を叩かれる。
「…話がそれだけなら、俺らもう行くから。…セリ、行こうぜ。」
「う、はい。」
硬直していた身体が動き出す。
(…なんか、気持ち悪い。)
ぎこちない歩き方になる背中をルキの掌が支えてくれて、心臓が跳ねた。背後、女魔導師とリーダー剣士の呼び止める声がした気がするけど、こっちは、ルキとの近すぎる距離に、それどころじゃない。
受けた指名依頼は両方とも無事に完了し、ギルドでの報告を上げていた。対応してくれていたイグナーツさんがハハハと爽やかに笑う。言ってることはエグいのに。
「それで、今回の救助依頼の方、報酬は出ないけど、その分、ギルドの評価ポイントは高いから、A級昇格が一気に近づいたね?いやー、良かった良かった。」
「…」
冒険者ギルドの各支部が、自らの支部からS級冒険者を出すことを「誉れ」、もしくは「便利」だと考えているのは知っているけれど─
「えーっと?イグナーツさん、その、もしかして、今回の件、態と彼らに…」
「ハハ!シオン君、何言ってるの。偶然だよ、偶然。」
「偶然…」
「そうそう。偶然の巡り合わせ。たまたま僕が君らに依頼しようとした案件に、馬鹿で向こう見ずなぼんくらパーティがシャシャって来ただけ。それで、たまたま居合わせた君らに救助依頼を出しただけだから、ね?」
「…」
(…偶然とは。)
異世界語の難しさに囚われていたら、珍しく、ルキがイグナーツさんに話しかけた。
「…すいません、一つ報告っつーか、気になったことあるんすけど。」
「ん?何かな?」
「あー、今回の群れ、ボスゴブリンの統率力?って言うんすか?キングでもない癖に、他の奴らが必死にボスを庇うというか、そんな動きしてて。まぁ、それで黎明の星の奴らもやられてたんっすけど…」
「ああ。それね。」
頷いたイグナーツさんが、一瞬、遠い目をした気がする。
「…居るんだよねぇ。たまに、そういう個体が。」
「そういう…?」
「うん。何故か妙にカリスマ性があるというか、モテる個体が居てね。」
「モテる…?」
ちょっと、脳が混乱を起こしている。
(…モテるゴブリン…?)
「ボス以外のゴブリン、全員、雌だったでしょ?」
「ええっ!?いや、えっと、すみません、そこまで見てなかったというか、見ても気づかなかったというか…」
イグナーツさんの発言に兄も混乱している。
「多分、雌だったと思うよ。…僕もね、現役の頃に一度目にしたことがあるし、ここで働き出してからは何度か耳にしたこともあるんだけど、まぁ、要するに、そういう群れなんだよ。」
「…えっと、それは、つまり…?」
「そのボスゴブリンのハーレムだったんだろうね。」
「…」
(…ハーレム?)
思い出してみる。彼らの姿。特に、ボスゴブリンの─
(…うん、ただのゴブリン。)
他との差異なんて、特には無かったはず。
「…ちょっと、僕らの感性では理解出来ないところではあるけれど、ゴブリンにはゴブリンなりの社会があり、イケメンが居る。そういうことだよね。」
「…そういうこと、ですか…?」
「うん。そういうこと。」
断言されて、異世界の広さを思い知った。
「あ。」
「うわぁ、待ち伏せ?僕らに何か用?」
「…」
ギルドを出たところで、なんちゃらの星の三人組に出くわした。明らかに人待ち顔だったから、狙いは恐らく私達。
「…用、というか、まぁ、一応、礼に。」
「え。」
「今日は、助かった。あのままじゃ、流石にヤバかった、からな…」
「…」
己の敗北も失敗も認めないタイプだと思っていたリーダー剣士が、予想外なことに頭を下げてきた。彼の後ろに立ってる僧侶の男に何か言われたのかもしれないけれど、そんなことよりも─
(…なぜ、また、ローブを脱いでいる?)
リーダー剣士の後ろ、僧侶と並び立つ女魔導師の服装が前回よりも過激になっている。
(…確かに、街中だし、防御を固める必要はないかもだけど。)
別の意味で防御力ゼロの女を睨む。
(また、ルキのこと見てるし…)
警戒心マックスでガン見してたら、女魔導師と目が合って、ついでに微笑まれた。
(なぜ…)
前回と、あまりにも違う態度に、顔が引きつりそうになる。
「セリ君?だっけ?今日は、本当にありがとうねー?すっごく助かっちゃったぁ!」
「はぁ…」
そういう依頼だったから、としか答えようがない。
「それでね?考えたんだけどぉ、今日のお礼の代わり、私達に一杯おごらせてくれないかなぁ?私達、始まりがあんまりよくなかったじゃない?けど、これからお互いをちゃんと知っていけば、上手くやっていけるんじゃないかと思うんだぁ。」
「…」
絶句。
なんか、以前はルキにのみ向けられていたはずの媚態がこちらにも。ゾワゾワーっときた。動けずにいたら、隣からルキに背中を叩かれる。
「…話がそれだけなら、俺らもう行くから。…セリ、行こうぜ。」
「う、はい。」
硬直していた身体が動き出す。
(…なんか、気持ち悪い。)
ぎこちない歩き方になる背中をルキの掌が支えてくれて、心臓が跳ねた。背後、女魔導師とリーダー剣士の呼び止める声がした気がするけど、こっちは、ルキとの近すぎる距離に、それどころじゃない。
29
あなたにおすすめの小説
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅
散歩道 猫ノ子
ファンタジー
捨てられてしまった2匹の神獣と育む異世界育成ファンタジー
2匹のねこのこを育む、ほのぼの育成異世界生活です。
人間の汚さを知る主人公が、動物のように純粋で無垢な女の子2人に振り回されつつ、振り回すそんな物語です。
主人公は最強ですが、基本的に最強しませんのでご了承くださいm(*_ _)m
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~
志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。
けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。
そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。
‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。
「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。
修学旅行に行くはずが異世界に着いた。〜三種のお買い物スキルで仲間と共に〜
長船凪
ファンタジー
修学旅行へ行く為に荷物を持って、バスの来る学校のグラウンドへ向かう途中、三人の高校生はコンビニに寄った。
コンビニから出た先は、見知らぬ場所、森の中だった。
ここから生き残る為、サバイバルと旅が始まる。
実際の所、そこは異世界だった。
勇者召喚の余波を受けて、異世界へ転移してしまった彼等は、お買い物スキルを得た。
奏が食品。コウタが金物。紗耶香が化粧品。という、三人種類の違うショップスキルを得た。
特殊なお買い物スキルを使い商品を仕入れ、料理を作り、現地の人達と交流し、商人や狩りなどをしながら、少しずつ、異世界に順応しつつ生きていく、三人の物語。
実は時間差クラス転移で、他のクラスメイトも勇者召喚により、異世界に転移していた。
主人公 高校2年 高遠 奏 呼び名 カナデっち。奏。
クラスメイトのギャル 水木 紗耶香 呼び名 サヤ。 紗耶香ちゃん。水木さん。
主人公の幼馴染 片桐 浩太 呼び名 コウタ コータ君
(なろうでも別名義で公開)
タイトル微妙に変更しました。
転生幼女は幸せを得る。
泡沫 呉羽
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!?
今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−
老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜
二階堂吉乃
ファンタジー
瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。
白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。
後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。
人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。
モブっと異世界転生
月夜の庭
ファンタジー
会社の経理課に所属する地味系OL鳳来寺 桜姫(ほうらいじ さくらこ)は、ゲーム片手に宅飲みしながら、家猫のカメリア(黒猫)と戯れることが生き甲斐だった。
ところが台風の夜に強風に飛ばされたプレハブが窓に直撃してカメリアを庇いながら息を引き取った………筈だった。
目が覚めると小さな籠の中で、おそらく兄弟らしき子猫達と一緒に丸くなって寝ていました。
サクラと名付けられた私は、黒猫の獣人だと知って驚愕する。
死ぬ寸前に遊んでた乙女ゲームじゃね?!
しかもヒロイン(茶虎猫)の義理の妹…………ってモブかよ!
*誤字脱字は発見次第、修正しますので長い目でお願い致します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる